代表的な症状

間質性肺炎

 

 
我々が呼吸をする時、口や気管を通った空気は肺胞と呼ばれる肺の中にある小さな袋に取り込まれます。この肺胞はブドウの房の様にお互いがとても薄い境界を持ってくっついていますが、この境界のことを「間質」と言います。この「間質」には酸素の交換を行う毛細血管がたくさんあり、酸素と二酸化炭素を交換することで体内の酸素濃度を維持しています。この「間質」を中心として炎症を起こしてしまう病気を間質性肺炎と呼びます。近年猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症は、この間質性肺炎を引き起こす病気の一つです。
 
様々な原因によりこの間質に炎症が起こってしまうと、これらも間質が傷つき、徐々に硬くなっていきます。間質に存在する毛細血管も影響を受け、酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかなくなります。
 
2019年時点で約19000人の患者さんがいます。間質性肺炎と一言にいっても、その原因や肺炎の性質などで数多くの間質性肺炎に分類されています。そのため、治療法がいまだ確立できていない病気も多く、診断や治療が難しいです。そのため一部の間質性肺炎は国の難病指定を受けており、現在も治療方法の研究が継続されています。

 
間質性肺炎の進行は緩やかで、初期のころには症状が全くない場合があります。よくある初発症状は乾いたような咳や、運動時の軽度の呼吸困難感を感じることが多いです。病気は数年単位で徐々に進行し、疲れやすさや体重減少を認めることもあります。
 
また、風邪をひいてしまった後に急に呼吸状態が悪くなる「急性増悪」も注意しなければならない症状の一つです。

  1. さまざまな薬剤の副作用
    抗生物質など日常的に使用する薬剤や、抗がん剤のような治療に必要不可欠な薬剤でも発症することがあります。
  2. 放射線治療の影響
    がんの治療などで放射線が肺に当たってしまうと、間質に炎症を起こすことがあります。
  3. 関節リウマチなどの膠原病
    膠原病と呼ばれるアレルギー疾患とともに発症することがあります。
  4. 血管に炎症を引き起こしてしまう自己免疫性疾患
    血管炎と呼ばれる病気に付随して発症することがあります。
  5. アレルゲンを吸入してしまったことによる肺炎
    さまざまなアレルギー物質を肺に取り込んでしまうことで、炎症を起こすことがあります。
  6. 粉塵を吸入したことによる塵肺
    アスベストを含む粉塵が肺に入り込んでしまうと、長い年月をかけて炎症を引き起こし間質性肺炎を発症することがあります。
  7. その他の病気

上記のような原因が明らかなもの以外を、特発性間質性肺炎と呼びます。特発性間質性肺炎の中でも、以下の3つが診断される頻度の高い病気です。

  1. 特発性肺線維症
    中年男性に比較的多く発症し、発症してしまうと平均生存期間は3~5年と言われています。
  2. 特発性器質化肺炎
    50~60歳代に多く、男女差はありません。非喫煙者に多く発症すると言われています。
  3. 特発性非特異性間質性肺炎
    50歳前後の女性に多く発症するといわれています。適切な治療を受けることで治癒する場合もあります。

これらの3疾患は、先ほどお話ししたように難病指定されている治療が難しい病気です。

 
初期の頃は乾いた咳を繰り返したり、運動時の息切れを自覚しますが、病気が徐々に進行し始めると、チアノーゼ、心不全、呼吸困難などの重篤な症状を呈するようになります。自分の呼吸だけでは酸素が取り込めず、絶えず酸素吸入が必要な状態になることもあります。
 
また、間質性肺炎の急性増悪にも気を付けなければなりません。間質性肺炎として治療を受ける方は、炎症を抑える薬を使用していることが多いです。そのような場合、軽い風邪にかかったとしても簡単に重症化することがあり、呼吸不全から死に至ってしまうこともあります。

 
どのタイプの間質性肺炎であったとしても、喫煙者には禁煙が強く勧められます。間質性肺炎を引き起こした原因がはっきりしている場合には、その原因を取り除くような治療を行います。アレルギー物質の吸入による間質性肺炎であればアレルゲンの除去を、薬剤による間質性肺炎であれば、その薬剤を使用しないことも大切です。
 
しかし、一度発症してしまうと治癒する方法はないため、症状の進行を少しでも遅らせる薬物療法や、症状を緩和する対象療法が中心となります。
 
使用される代表的な薬物は以下のようなものがあります。

  • 副腎皮質ステロイド薬
  • 免疫抑制剤

 
これらの薬剤を使用しても症状が改善せず呼吸困難感が強い場合には、自宅で酸素を吸いながら生活する在宅酸素療法という治療法があります。
 
また、考えられる対策を可能な限り実践しても症状が改善せず生命の危機に瀕している場合には、かなり厳しい条件が付けられてはいますが、肺移植を受けるという選択肢もあります。

 
間質性肺炎は国の難病指定を受けるほど、診断や治療が難しい病気の一つです。初期の頃は自覚症状に乏しく気が付きにくいですが、乾いた咳が続くなど普段と違う症状がある場合には、詳しい検査をする必要があるかなど、かかりつけ医とよく相談することが重要です。