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当院代表佐藤俊彦のコラム ~「転移があるから、抗がん剤しかありません!」「抗がん剤がもうないので、ホスピスへ行ってください」と言われたら・・・~

「転移があるから、抗がん剤しかありません!」

「抗がん剤がもうないので、ホスピスへ行ってください」と言われたら・・・

 

宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦

 

来週から梅雨に入るという時期になってきました。みなさん、コロナ騒動でお疲れかもしれませんが、一番重要なのは「免疫」です。緊急事態宣言も解除されましたので、羽を伸ばして温泉に行ったり、おいしいものを食べたり、未知なる体験をしに国内旅行へ行ったりしてみてください。きっと、これまで以上にいろいろなことを新鮮に受け止められるはずです。

前回もご説明しましたが、コロナウイルスで亡くなる方には、免疫系に異常のある方が多いようです。コロナウイルスがのどや肺に感染すると、細胞の中でウイルスが増殖します。増殖を止めるのがアビガンやレムデシビルです。やがて、免疫系がこれを排除しに来るのですが、免疫細胞を暴走させ、サイトカインストームという急性炎症反応を引き起こしますと、これが全身の炎症を引き起こして死に至ります。この急激な炎症を止めるのが、IL-6阻害剤(リュウマチの薬)のアクテムラになります。米国では、この二剤を重症の患者さんに使っているわけです。

お相撲さんや肥満の方は、実は要注意かもしれません。脂肪細胞が多いと、炎症性サイトカインを脂肪細胞が産生しますから、いつも炎症を体の中に抱えることになります。そこにコロナのサイトカインストームが加わるので、相乗効果で炎症が急激に悪化します。したがって、免疫系を強化するためにも、ダイエットしてみてはいかがでしょうか。

また、BCGとの関係が論文に出ていますが、BCG接種国は非接種国と比較して、死亡率が1/100という結果になっています。これも、実はこのウイルスの性質として、MHCという免疫に関与する抗原を隠す性質によって、特異免疫が効きにくくなるという性質があります。したがって、ワクチンが効きにくいわけです。現に、英国の治験ではワクチンが効かないばかりか、ウイルスを増殖させ、排出することで、まわりの健常人に感染を引き起こすという可能性も指摘されています。

したがって、集団免疫はできない可能性があるわけです。スペイン風邪もそうですが、第2波、第3波ときますので、終息は2022年春ということになりそうですね。

当院では、放射線治療センター開院以来、放射線免疫療法に力をいれてきましたが、本当によく効く例を経験していますので、表題のようにがん難民になってもあきらめないで、ご相談ください。

相談を受けていて驚くことがあるのですが、「ステージ4で、もうすでに局所療法は適応がないため、放射線治療や手術はできません」と説明されて、抗がん剤を延々と死ぬまでやっているということが少なくありません。

分子標的薬も抗がん剤も、最初は効いたとしても、効かずに生き残っている細胞が増殖を始めますので、免疫系を動かさなければ、治ることはまずありません。しかし、標準治療の先生は、やり続けるわけです。(他に手がないので・・・)

しかし、イミフィンジという薬が肺癌のステージ3で保険適応になりました。使用方法は、まず分子標的薬を使います。どの薬が効くかはGuardant 360というCt-DNA(血液に流れている腫瘍由来のDNA)を解析することで分かり、薬剤の選択が可能です。

効く薬がわかったら、これを使うと劇的に腫瘍サイズが縮小しますから、そこにサイバーナイフで定位照射をします。決して、通常のリニアックによる照射はしないことです。健常部分への副作用が大きくなるのと、肺であれば、放射線肺臓炎を起こしやすいばかりか、イミフィンジの副作用で肺線維症がありますから、できるだけピンポイントで照射するためには、追尾照射機能がついているサイバーナイフで実施します。これにより、免疫反応が局所で引き起こされますので、免疫細胞が全身に回っていき、放射線照射を実施していない転移病変を免疫反応で消滅させることが可能です。

この患者さんは、膀胱と尿管移行部の尿管癌の患者さんで、多発肺転移があるため「手術も放射線もできません。抗がん剤を実施しましょう」と言われ、GC療法を実施していましたが、さらに肺転移が増悪してきました。「もう効く薬がないので、ホスピスに行ってください」と言われた患者さんです。

そこで、肺は数十個の転移があるので、膀胱と尿管の境の腫瘍に放射線照射をIMRTで実施して、キートルーダの併用を試みました。最新の2020年6月のCTでは、肺転移は完全に消失し、ひどい血尿があった膀胱の病変も完全寛解CRしています。

このように、“放射線+免疫療法”は劇的に効果があります。これをアブスコパル効果と言います。次はその原理をご説明します。

定位照射SBRTを実施すると、腫瘍のDNAが破壊されるために新しいネオアンチゲンを多数放出します。それらは異物ですので、免疫反応が局所で発生します。

リンパ節には樹状細胞がいて、抗原情報を入手して、Tリンパ球にプライミング(腫瘍抗原を記憶させること)を実施します。記憶したリンパ球が体中に循環していくことによって、そこで出会った癌細胞を叩くというわけです。また、少量のX線照射は、抑制性T-reg細胞を消失させることがわかっていますので、あらかじめ、少量の放射線を遠隔転移部位に照射することで、さらに免疫反応を活性化することも可能です。

決してあきらめずに、ご相談ください。

 

4月の診療報酬改正で、オリゴメタスタシス(少数転移)に対する放射線治療が採用されることになりました。つまり、多くの先生方が言っている、“遠隔転移が起こっているので、放射線治療は適応無い”というのが、間違っていたということがわかると思います。

以外にそんなものなのです。自分の専門分野はかろうじて理解していても、別の領域のことは全くわかっていない先生も中にはおられます。

これは、前立腺癌の患者さんですが、手術してホルモン治療を実施していましたが、骨転移が出てきたということで、去勢抵抗性前立腺癌なので、抗がん剤を勧められていました。私の遠隔セカンドオピニオンを受診され、3カ所しか骨転移はないので、サイバーナイフでSBRTを実施して、PSAが検出限界以下に劇的に改善しました。今後は、再発予防のために、免疫細胞療法を追加する予定です。

前立腺癌は放射線を照射することにより、免疫学的にコールドだったものがホットになって、免疫反応をよく引き起こします。前立腺癌に関しては、放射線治療と手術に差が無いので、ファーストチョイスに放射線治療でいいと思います。このように転移のあるケースでは、免疫細胞療法の併用をお勧めしています。

サイバーナイフでの照射は極めてピンポイントなので、健常部分に副反応が出ません。安心して治療を受けていただけます。

 

米国では、約10万ドル(1070万円)の治療なのですが、日本の健康保険では63万円の自己負担分です。日本の放射線治療は世界一低く評価されていますので、受けやすくなっています。

何かご不明な点があればいつでもご相談ください。

遠隔地の方には、遠隔セカンドオピニオンも実施しております。

https://ucc.or.jp/telemedicine/

ぜひ、ご活用ください。