代表的な症状

子供のころに、水痘(みずぼうそう)にかかったことはありませんか?
多くの方は、もう覚えてはいないかもしれません。
水痘はある特定のウイルスに感染すると発症し、その後も一生体の中に住み続けます。

 

普段は何も悪影響を及ぼしませんが、大人になってその隠れていた水痘のウイルスが何らかの理由で再活性化すると、帯状疱疹という病気を発症してしまいます。

 

なぜ帯状疱疹になってしまうのか、効果的な予防法はないのか、など詳しく説明します。

 

宇都宮市で帯状疱疹のワクチン接種

 

 

子供のころに水痘を発症させた「水痘・帯状疱疹ウイルス」は、一度治癒した後も体の神経に潜み、体内から消えることはありません。
それだけではなく、加齢、過労、ストレスなど様々な原因で大人になってからもそのウイルスが再活性を繰り返し、赤いぶつぶつ(発赤)や痛みなど様々な症状を呈するようになってしまいます。
この発赤の出る範囲が帯状に見えることから、「帯状疱疹」といわれるようになりました。

 

少し古いデータにはなりますが、2015年の医療費データを用いた調査がなされています(*1)。
帯状疱疹として治療を受けた方は全国で30万人以上おり、その医療費は年間160億円もかかっています。
多くは50歳以上の方に発症しており、様々な後遺症も残ってしまっているようです。

 

帯状疱疹を発症してしまう原因は、免疫機能の乱れといわれています。
普段、私たちの体は、自律神経の働きで免疫機能を含めた様々な体の調子を整えています。その免疫機能が帯状疱疹ウイルスを抑え込んでいるため、帯状疱疹にならずに生活しています。

 

ところが、疲労やストレスにより自律神経が乱れ免疫機能が低下してしまうことにより、抑え込まれていた帯状疱疹ウイルスが再活性してしまいます。
ウイルスは体のいろいろな神経に潜んでいますので、帯状疱疹は腕、お腹、背中など様々な場所に発症します。

 

帯状疱疹では、ウイルスが感染している神経が支配する領域に沿って赤い“ぶつぶつ”が出ます。だいたいが、体の中心から外側に向かって赤いぶつぶつが帯状に広がります。
そのぶつぶつは、ピリピリする鋭い痛みが出ることがほとんどです。

 

赤いぶつぶつは時間が経つにつれ膿を出し、最終的にはかさぶたになって治癒します。同時に、ビリビリする神経痛も多くの場合、症状として出ます。
この神経痛は高齢者になるほど、帯状疱疹後神経痛として、帯状疱疹が治った後も数年以上にわたり続くこともあります。

 

また、顔の神経にウイルスが感染していた場合、顔面に帯状疱疹を発症することもあります。
ひどい状態になると、顔面神経麻痺を起こすこともあり、日常生活に大きな影響を与えることにもなってしまいます。 

 

どの程度の症状が残ってしまうかは、もともとの抵抗力によって左右されます。
癌の治療で抗がん剤を投与されている、免疫を抑える薬を飲んでいるなど、免疫力が落ちているときには特に注意が必要です。

 

帯状疱疹に対しては、主に発症してしまった後に治療することがほとんどです。
その場合、

 

  • 帯状疱疹ウイルスに効果のある抗ウイルス薬
  • 炎症を抑える抗炎症薬
  • 神経痛に対する鎮痛薬

 

などを使用しますが、先に述べた顔面神経麻痺を起こしてしまうと、治療にはとても難渋します。

 

帯状疱疹に対しては、発症してから治療するのではなく、発症しないように予防することがとても重要になってきます。
現在では1歳から3歳までの間に2回の水痘ワクチンの接種が勧められており、その結果、水痘の患者数自体が減少しています。

 

実は帯状疱疹に対しても、ワクチン接種が有効になります。

 

「あれ? 子供のころに水痘ワクチンを受けたはずだけど・・・」
と思う方もいるかと思いますが、残念ながらワクチンの効果は20~30年で消失してしまいます。
そのため、最近ではワクチンの再接種(ブーストといいます)が推奨されるようになってきました。

 

小児に使用している水痘ワクチンを、帯状疱疹に対するワクチンとして摂取することが、帯状疱疹を予防する(発症率を低下させる、重症化を予防する)ことのできる有効な方法と考えられています(*2)。

 

現在は50歳以上の方を対象として水痘ワクチンの再接種が推奨され、1度受ければ生涯効果が持続するといわれています。
費用は原則自費ですが、各地方自治体によってはワクチン接種の公的助成が受けられることもあります。
お住まいの自治体やかかりつけ医とよく相談してみてください。

 

帯状疱疹はありふれた病気ですが、一度発症してしまうと痛みや麻痺などが残り、生活の質をかなり低下させてしまうことがあります。
しかし予防接種により、高確率で防げる病気ですので、発症する前の適切な予防を心がけましょう。

 

■参考
*1(参考)厚生労働省ホームページ 診療情報データベースを用いた帯状疱疹の疫学等に関わる研究
*2(参考)厚生労働省ホームページ 帯状疱疹ワクチン ファクトシート