肺炎球菌感染症
肺炎とは、主に細菌やウイルスに感染することで炎症を引き起こした状態を指します。
実は、日本人の死因として肺炎は4番目に多い病気。
その肺炎を引き起こすもののひとつが、肺炎球菌です。
また、肺炎球菌は他の病気の原因にもなります。
そこで、肺炎球菌が引き起こす様々な病気の種類と治療法、そして肺炎球菌によって引き起こされる様々な病気を予防する効果が見込める「ワクチン」について説明します。
肺炎球菌とは?
肺炎球菌は鼻やのどにもともと生息する常在菌で、普段は私たちの体に悪影響を及ぼすことはありません。
小児では約20~40%、成人では10%程度の方が、もともと肺炎球菌を持っているといわれています。
普段は悪影響を及ぼさない肺炎球菌も、何かの拍子に肺炎、中耳炎や髄膜炎などを引き起こすことがあります。
これらをまとめて「肺炎球菌感染症」といいます。
肺炎球菌感染症の症状
風邪や過労などでひとたび体調を崩すと、普段は何も問題のない肺炎球菌が色々な症状を呈し始めます。代表的なものとしては、
- 肺炎
- 中耳炎
- 髄膜炎
があります。その中でも、特に肺炎と髄膜炎には気を付けなければなりません。
肺炎球菌による肺炎は肺炎の死亡原因菌で一番多く、かつかなり重篤な症状を呈します。代表的な症状としては、
- 高熱
- 寒気
- 震え
- 呼吸困難
などがあり、重症になると意識障害も見られます。
高齢者の方や糖尿病、高血圧などの基礎疾患を持っている場合は、治療を行っても病気の勢いが強く、治療できずに死に至ってしまうこともあります。
肺炎球菌による髄膜炎は、かかってしまう頻度は少ないものの、一度なってしまうと治療に非常に難渋します。代表的な症状は、
- 意識障害
- 頭痛
- 発熱
などです。こちらの病気も死亡率が高く、注意が必要です。
肺炎球菌感染症の原因
肺炎球菌は、お子さんの鼻やのどに普段から生息している病原体で、お子さんからその他の家族へ知らないうちにうつってしまうこともあります。
もともと肺炎球菌を保有していなかったお子さんでも、保育園や小学校での集団生活を始めると、知らないうちに肺炎球菌を持つようになっています。
とはいえ、普段は何も悪影響を与えません。
そのため、私たちが肺炎球菌を保有しているかどうか気づくこともありませんし、特別に調べる必要もありません。
肺炎は日本人の死亡原因の第4位に位置する重大な病気で、肺炎の死亡者の約98%は65歳以上の高齢者です。
日本では肺炎の原因の23%を肺炎球菌が占めているといわれ、なおかつ死亡率の高い病気とされています。
一度肺炎を発症してしまうと重篤な状態へと陥ってしまうため、適切な予防が重要視されています。
また、髄膜炎も肺炎球菌によって引き起こされる病気です。
肺炎球菌が何らかの理由によって脳の周りにある髄液の中に侵入してしまい、感染を起こしてしまいます。
脳の奥は薬が届きにくいため、治療がとても難しくなります。
発症して数日内で命を落とすこともあり、助かったとしても発育障害や難聴など、重い後遺症が残ってしまうこともあります。
発症してしまってから治療するのでは手遅れになる可能性があるため、肺炎や髄膜炎にかからないような対策が必要不可欠です。
肺炎球菌肺炎の治療方法
肺炎球菌性肺炎の治療法は、かかってしまった肺炎球菌に効く抗生物質を投与するしかありません。
また、最近は薬剤耐性菌の問題も出てきており、病院で適切な検査をしなければなりません。
その他、高熱が出た場合には解熱剤、呼吸困難が出てしまった場合は酸素吸入などが必要になります。
肺炎球菌性肺炎で最も大事なのは、肺炎にならないよう予防接種を受けることです。
小児では2011年から肺炎球菌ワクチンの公費助成が始まり、その結果、小児の肺炎球菌感染症の罹患率は約4分の1まで低下しています。
また、65歳以上の高齢者に対しても2014年から肺炎球菌ワクチンが定期接種されるようになり、今後の罹患率の低下が期待されています。
現在日本で使用できるワクチンには、
- ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)
- プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)
の2種類があります(両方とも商品名)。
そもそも肺炎球菌は99も種類があり、ニューモバックスは23種類、プレベナーは13種類に対応しています。
一見、対応している種類は少なく見えますが、私たちの体に悪影響を与える可能性がある種類を重点的に対応しているので、高い予防効果が期待できます。
特にプレベナーは小児に投与している肺炎球菌ワクチンであり、高齢者にも安心して接種することができます。
肺炎球菌ワクチン接種の注意点
ニューモバックスは、次の方がが定期接種の対象となります。
- 2023年度までは該当する年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方
- 60歳から65歳未満の方で、様々な基礎疾患により免疫力の低下されている方
そのほか特殊な例としては、お腹の手術を受けて脾臓を切除しなければならなかった方、もともと脾臓の機能が低下している方は、年齢にかかわらずワクチンの接種が勧められます。
注意しなければならないのは、
ニューモバックスは1度しか接種できない
という点です。
過去にプレベナーを接種された方であれば、追加でニューモバックスの接種は受けられますし、ニューモバックスを接種された方もプレベナーを追加で受けられます。
しかし、どちらかを1度受けると、ある程度の期間を明けなければなりません。
間違って接種しないよう、普段から通院している、かかりつけ医で接種するようにしてください。
まとめ
肺炎球菌性肺炎は、一度かかってしまうと重い症状が出るだけではなく、最悪の場合、命にかかわる重大な病気です。
一方、適切なワクチン接種で予防できる病気ですので、65歳以上になられた方はぜひワクチンを接種するよう、かかりつけ医にご相談ください。