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ピンクリボンセミナーのお知らせ

ピンクリボンセミナーのお知らせ

宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦

来る10月1日は、第4回になりましたNPO法人ピンクリボンうつのみや主催の講演会を実施することになりました。

今回のテーマは、非常に面白く、私とクリニカE.T EAST・院長の奥野先生、自治医科大学・放射線科の若月教授の3人の講師陣で開催します。

このセミナーは、宇都宮にNPOピンクリボンがないということに気づいた私が乳がんの啓発活動を実施するために理事長で活動をしているものです。

そもそも、私が、宇都宮セントラルクリニックで乳腺センターを始めようと考えたきっかけは、奥野先生との出会いからでした。今回はその経緯をお話したいと思います。

私は、友人の料理屋の女将さんから、乳腺のしこりを相談され、PETを実施しました。その結果、左乳房に3箇所の乳がんを確認しました。この場合、治療は左乳房全摘でかつ腋下リンパ節郭清となりますが、術後の合併症や何よりも、彼女は乳房を喪失することに対する抵抗から、奥野先生を見つけ受診し、治療すると決めて私のところへ再受診に来たのでした。

わたしは、医師として友人として、この件に関してあくまでも、標準治療を進めましたが、どうしても奥野先生の治療=乳房を切除しない塞栓術を選択するのであれば、効かなければ、すぐに標準治療に切り替えることを前提に実施してはどうか?また、効果判定にはPETが使えるので、まずは僕が確実にそして客観的に判断していくとのことで奥野先生の治療に同意をしました。

実のところは、奥野先生は、足利日赤にいたときから、大学病院では治療不可能な頭蓋底の悪性腫瘍などの塞栓療法を実施していて、その実力を知っていましたので、内心コントロールできるのではないか?という期待で結果を拝見させていただきました。

結果は、3箇所の腫瘤に対して、治療は見事に成功し、乳房腫瘤が完全に消失し、かつ腋窩のリンパ節転移や全身転移もないという状況でした。

その効果は数年続きました。その後、右側の乳房にもがんが発生するのですが、それも同様の方法で見事に治療され、現在も毎日、女将を続けられています。

この治療法は、外来通院で済むところがQOLを高く維持できる治療法でもあると思います。

乳がんは、これまで乳房の全摘が当たり前という時代から、部分切除+放射線治療になり、今後は部分切除から、クライオやRF治療、塞栓術、インタクトによる経皮切除術へとシフトしていこうとしています。

ここで低侵襲手術と切っても切り離せないのが、放射線治療です。

宇都宮セントラルクリニックでは、本年11月に放射線治療センターをオープンします。

サイバーナイフやトモセラピーと言って、がんだけをピンポイントで照射して、放射線をかけたくない健常臓器を守る治療が可能となるために、これまでのリニアックによる治療とは雲泥の差がある安全な照射が可能となります。

乳がんの特に左乳房へのリニアック照射では、一部の肺や心臓の血管への放射線照射が問題となります。

これにより肺がんのリスクや肺線維症のリスクが向上するばかりでなく、冠動脈の放射線による炎症のために、閉塞をおこし心筋梗塞の発症リスクが向上します。

したがって、乳がん術後の放射線照射は、胸壁の湾曲に沿って照射できるトモセラピーによる照射と部分切除した局所のブースト照射をサイバーナイフで実施するのが良いと思います。

この辺のお話は若月先生が当日されるかと思います。

若月先生は、群馬大学や放射線医学研究所で、重粒子線による婦人科系のがんの治療も多数経験されており、この領域のスペシャリストで今回は乳がん治療における放射線治療の有効性をお話頂けると思います。

また、最近のトピックスとして、免疫治療と放射線治療の親和性を証明するアブスコパル効果が提唱されています。

つまり、放射線を照射すると、そこに免疫反応が惹起されます。

その免疫細胞は、全身に遊走していき、遠隔転移病巣にたどり着き、そこを攻撃することがわかってきました。

放射線治療と免疫の研究もされている先生ですので、きっと面白いお話が聞けると思います。

最後に私からも講演内容を少しお伝えいたします。乳がんは、極めて予後のいいがんの一つです。転移しなければ、確実に治癒できるがんでもありますので、早期診断は重要なテーマです。

遺伝性乳がんは、アンジェリーナ・ジョリーの乳房の予防切除で俄然有名になりましたが、日本人の間ではさほど普及しているとは言い難いと思います。BRCAという遺伝子の異常をチェックすることで、リスクを知ることができますが、いつ?発病するのかを予測することはできません。そこで重要なのが、放射線を使わない超音波検査やMRIが有効ということになります。

http://www.jprime.jp/articles/-/7835?page=2

被ばくによる発がんリスクも遺伝性乳がんでは高いことがわかっていますので、なるべく、MRI検査を中心に検査を組む必要があるわけです。

遺伝性乳がんが疑われる患者さんには、ぜひ、トモシンセシス+乳房造影MRI検査をお勧めします。当日は、きっと皆様に来ていただいてご満足いく会にする予定です。

今回は、治療に関するテーマのせいか、医療機関の技師さんや看護師さんの参加が非常に多い印象です。

ぜひ、一般の皆様の参加をお待ちしております。

乳がん検診受診率50%をめざして、今後も活動を続けて参りたいと思います。