4th International Symposium Focused Ultrasound 2014に来ています
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宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦
巨大台風が2個も通り過ぎて行き、すっかり、秋を思わせる日が続いておりますが、皆様にはお元気でお過ごしのことと思います。
私は、ワシントンDCに4th International Symposium Focused Ultrasound (FUS) 2014で来ております。この学会は、FUSを使ってがんを切らずに治したり、てんかんの焦点となっている部位を焼き切ったり、いろいろな目的でFUSを臨床応用するための研究会です。
日本では、これに類似する学会は無いと思います。
画像ガイドで、ものすごくピンポイントで60-80度くらいに組織温度をあげて焼き切ったり、もっと低い温度で、HSP(ヒートショックたんぱく)を生成させ、免疫反応を更新させたり、脳脊髄関門を拡げることにより、薬剤や遺伝子治療ベクターが導入しやすくなるような検討がされています。
特に、臨床応用はほとんど、脳を中心とする中枢神経系疾患・子宮筋腫・前立腺がんに有効とされていましたが、呼吸同期法を使って、MRガイド下での肝臓がんやすい臓がん治療も開始されています。
米国で、保険収載になったことでこの研究に弾みがついており、参加者もすごい数でした。
Insightec(http://www.insightec.com/)という会社は、放射線科医が設立した会社ですが、GEの資本が入り、GEが全世界に自社のMRI装置と一緒に供給を開始しています。
https://www.youtube.com/watch?v=KfKFSyT2XN0
http://www.insightec.com/brain-disorders-JP.html
日本では、南東北病院の系列である新百合ヶ丘総合病院で本態性振戦に対して治験を実施しています。http://www.insightec.com/brain-disorders-JP.html
また、乳がんに対しては、北海道の北斗病院・宮崎のブレストピア病院が実施しています。
ブレストピア病院の古澤先生には、11月24日に宇都宮に来ていただき、ピンクリボンうつのみや主催の講演会で、皆様にきらずに治す乳がん治療のお話をしていただく予定です。(http://goo.gl/QU4BwG)
フランスでは、TheraclionというInsightecからスピンアウトしたグループが上場し、ECHOPULUSという商品を開発しています。http://www.theraclion.com/echopulse/
これは超音波ガイドで、FUSを照射するもので、手軽な半面、超音波で病変が見えないと照射することができませんので、現在は乳房腫瘍と甲状腺腫瘍に対する治療がメインとなっています。
前立腺領域では、edaptechnomedというフランスの会社が有名ですが、薬事未承認ですが、MR画像と超音波画像を融合した新しい装置を発売していました。
http://www.edaptechnomed.co.jp/hifu.html
http://www.hifu.or.jp/library/index.html
早期の悪性度が低から中悪性度の腫瘍が適応です。
http://www.hifu.or.jp/
これらの治療センターで治療が受けられます。
とくに、私が興味を持ったのは、遺伝子治療にFUSを使うという発表です。私ども、遺伝子治療研究所は、今後ALSやアルツハイマー病に対して遺伝子治療を開始する予定ですが、経静脈投与や経髄腔内投与を検討していますので、直接脳の基底核に注射するパーキンソン病の遺伝子治療と異なり、x100の遺伝子ベクターを必要としています。大量生産の仕組みを使ってもいいのですが、たくさんの人を低価格で実施するためには、どうしてもベクター量を減量する必要があります。これの有力な解決方法となるはずです。
また、がんの患者さんに対して、肝転移があると免疫療法などが効きにくかったのですが、FUSを照射することでHSP70を発生させ、さらにオンコサーミアで細胞膜代謝を変化させることにより、細胞内に発生したHSP70を外部に出し、免疫反応を強化することができるという発表もありました。
私どもの免疫治療の最前線でも、効果が期待されます。
Philips medical systemsでは、sonalleve MR-HIFUというシステムを発表しており、今後MRgFUSが主流になっていくように感じました。
http://www.healthcare.philips.com/main/products/mri/systems/sonalleve
放射線との組み合わせや免疫療法との組み合わせ、遺伝子治療法との組み合わせとの可能性など、今後、重粒子線治療などの重厚長大モデルから、コンパクトで安全な治療スタイルへのパラダイムシフトをこの学会で感じることができました。
当院でも、オンコサーミア導入後に、FUSの導入を検討していくつもりです。
また、会場で、難波清先生に御挨拶することができました。
先生の御発表は、1.5cm以下の乳がんを切らずにMRガイド下HIFUで治すという発表でしたが、素晴らしい成績で、私も早期がんを診つけるモチベーションとなりました。また、うれしかったのは、先生は宮崎のブレストピア難波病院の創業者であったのですが、病院の破綻とともに、経営を退かれ日高の北斗病院に移られたと聞いておりました。
しかし、その後も、ブレストピア病院で実践していたこの研究を継続され、北斗病院で実践されていることでした。今回の発表は、HIFU治療後に前例手術して確認することを前提としての発表でしたが、宮崎で30例、北斗病院で10例実施して、限局する病変であることが確認できた症例はすべてHIFUで死滅しているので、この治療方法で治療可能であると結論付けています。
今後は、自由診療で1.5cm以下の乳がんで限局しているもの(PEMで限局している)に対して実施していく予定とのことです。治療費は、自費で約150万円程度とのことで、重粒子線治療や陽子線治療と比較しても半額程度です。
http://www.hokuto7.or.jp/patient/kamoku/nyusen-center/nanba-dr-msg.php
達人の先生から、私の診療方針に関して強く賛同いただき、この上なく光栄でした。
また、先生は、私よりも一回り先輩ですが、すごく学究的で、経営の失敗にもめげず、医者を続けられていることに勇気づけられました。
ますます、お元気でご活躍いただければと思います。
先日、原田武夫先生のレクチャーを受けておりましたら、“合成洗剤と糖尿病が関係あるらしい“という情報でしたので、柳沢正文医師のことを調べてみました。
http://ilikeeveryone.jugem.jp/?eid=328
1985年当時、合成洗剤をめぐる公害問題を世間に周知させるために活動された先生のようですが、これこそ団塊世代の方々に直結する問題ですね。すべての病気を合成洗剤に結び付けることはできませんが、化学薬品と公害問題は尾を引きますよね。つまり、団塊世代ジュニアにまで影響しているということです。
先生の主張が正しければ、やはり病気は減らないんでしょうね。
https://www.youtube.com/watch?v=XQVFDZDXgb4
エボラウィルスも、どんどん感染が広がっているようですが、米国では看護師が感染したが、快方に向かっているとのこと、富士フィルムの子会社の富山化学が開発した新薬で快方に向かっていると報道していました。
でも、パンデミックになったら、薬の入手はできない、そこにロシアがワクチン開発に成功したという報道、これもひとつの経済戦争なんですね。
驚くことに、ルーマニアは親米政権なんですが、EUに加盟しない同国に対して、遺伝子組み換え植物と遺伝子組み換えブタを供給するらしいです。
なんと、この豚、enviropigといい屎尿からリンを出さない環境に優しい豚なんだそうです。
http://singularityhub.com/2010/04/07/genetically-engineered-enviropig-waiting-for-approval-in-us-and-canada/
これ柳沢先生にも、つながる話ですね。。。奥が深い。
でも、なにか?別の遺伝子も仕込んであって、絶対に?なにか起こってくるんでしょうね。
オンコサーミアの導入スケジュールが確定しました。
今月末に導入されますので、サース先生が11日に来日され、私どものスタッフへの指導を実施してくださいます。
実際の臨床応用は、その結果を踏まえて、次の週より開始する予定です。
いま、ワシントンDCは紅葉が始まったばかりです。
実りの秋を実感するべく、日本の本当においしいものを守っていきたいですね。
今後とも、よろしくお願いします。
遺伝子組換えブタ、米FDAの承認待ち
<抄訳> より美味しくて安価な遺伝子組換え食品の開発が競われる中、カナダのゲルフ大学は、遺伝子組換え食品よりも環境に優しい肉の製造方法を開発した。同大学は、10年以上かけて、“enviropig”-遺伝子組換えされたブタで、リンの消化・処理機能を持つ- の開発に取り組んできた。Enviropigは、リンの消化に必要な酵素サプリメントを与える必要がないため、飼育コストが安く、また、排泄されるリンの量も通常の家畜ブタと比べて70%少ないため環境に優しい。Enviropigはすでに8代目が飼育されているが、いまだFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可は下りていない。最近では、カナダ政府当局にも認可申請を出している。もし認可されれば、enviropigは、環境対策に大きな影響を与える初めての遺伝子組換え肉になるだろう。
遺伝子組換え食品は、一般化している。特にアメリカでは、とうもろこし、大豆、米はだいぶ前か
ら遺伝子組換えされており、遺伝子組換えは世界中で広まっている。一般的には、殺虫剤・除草剤に対する抵抗力をつけるために遺伝子操作をする。さらには、より美味しく、大きく、ジューシーに、といった目的もある。ほとんどの国は、遺伝子組換え肉の受入れを躊躇している。遺伝子組換え動物は植物よりも大きなリスクとなりそうだ。世間が遺伝子組換え動物を受け入れるようになるまでには時間がかかりそうだが、遺伝子操作がもたらす影響は決して我々の食卓だけには留まらない。我々人間の健康、知能および長寿に関係する遺伝子操作への手掛かりにもなるのだ。
しかし、enviropigは確実にメリットをもたらしており、それはすべてリンに関係するものである。リンは、ブタの成長に欠かせない重要な要素のひとつで、農作物の生産量を増やすために使用される3大要素を含んだ“NPO肥料”のまさに“P”である。しかし、農業的メリットは、時にはデメリットにもなる。一般的な農家のブタは、大量のリンを排泄物として環境へ放出し、それが川などの水源に流れ込み、藻類の増殖を誘発する。藻類の増殖は、自然界の酸素レベルを破壊し、魚などの水生生物を殺してしまう。端的に言えば、ブタの排泄物が環境ハザードになり得るということなのだ。e方、Enviropigが排泄するリンの量は、70%少ない。したがって、環境への影響も少なく、環境システムのバランスを維持できる可能性が高いのだ。
Enviropigは、消化機能が通常のブタより優れている。ネズミと大腸菌のDNAを遺伝子に挿入し、穀物のリンの消化を助ける唾液がつくられるようにしている。通常のブタは、餌から摂取したほとんどのリン(50-75%)を消化することができない。そのため、フィターゼという酵素を含むサプリメントを与えて健康状態を維持しなければならないが、enviropigは、サプリメントを要することなくリンを消化できるため、飼育費が安い。
では、リンを含まない他の穀物を与えればいいのではないかという疑問が生じるが、何百万匹のブタを飼育するには、安く大量に入手できるこの穀物がベストなのだ。遺伝子操作に必要性において、有機栽培農家は、農業システム全体を見直さなければならない時なのではないかと指摘する。
遺伝子組換え動物のもうひとつの問題は、遺伝子プールを狭めるおそれがあるということだ。我々が食べているブタは、すでに厳しく限定されたオスだけを用いて、成長が速くジューシーな肉質を持つ子ブタを生産している。しかし、この狭い遺伝子プールが、伝染病に弱い体質にしてしまうのだ。
政治と経済は、いつも科学の発展を困難にする。遺伝子組換え動物がいくつかの素晴らしいメリットを生むのは確かだ。それらのメリットを、もっと大きな枠組みで現在の農業システムに反映する必要がある。最高のものを追求する-従来の農業と遺伝子組換えというpolyculture的アプローチを統合。政治と経済の動向に関係なく、遺伝子が農業にとって重要な役割を果たすことはまず間違いない。いま、乳牛の繁殖のための遺伝子テストや、異なる香りを持たせるための花の遺伝子組換えなど、可能性はもう誰にも止めることができない。遺伝子組換え食品は、我々の食生活の大きな部分を占めていくことになるだろう。近い未来、我々は“科学の美味しさ”を知ることになりそうだ。
原文http://singularityhub.com/2010/04/07/genetically-engineered-enviropig-waiting-for-approval-in-us-and-canada/