PEMの保険適応に関して
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宇都宮セントラルクリニック 理事・放射線科医 佐藤俊彦
PEM(乳房専用PET)が7月1日より、厚生労働省から保険収載されることになりました。
予定通りの早期承認で驚いていますが、それだけ臨床的に有用であると評価されているためと考えます。具体的には、乳がんが疑われる患者さんおよび乳がん術後の患者さんに対して、全身PET/CT+PEMを合わせて撮影することで、従来のPET/CTの保険点数(8625点)+PEMの保険点数(4000点)の報酬が算定できることになりました。
自己負担3割の患者さんで、約38000円程度の負担になります。
今後、乳がん術後の患者さんの検査が増えると予想しています。
また、当院では、PET健診を受診される女性受診者の皆様向けに無料でPEMの検査を実施しております(※無料での検査は終了致しました)
FDGの投与量は同じですので、できる限り増え続けている乳がんを早期に見つけたいと考えているためです。
乳がんは、T1(2cm以下で見つける)の状態で見つけることが重要ですが、国立がんセンターの論文によりますと、T1症例の中でも、1cm以下のT1a、T1bの例は、T1c(1cm以上2cm未満)と比較して、有意に生存率が改善されることから、当院ではT1a,T1bつまり、1m以下での乳がんの発見に全力で取り組んでいこうと考えております。
そのためには、まず、触診で分からないがんを見つける必要があります。1cm以下の乳がんは、全く自覚症状がないばかりか、専門医が触知しても、発見できないことがあります。
厚生労働省では、平成24年度、“がん検診率50%達成に向けた集中キャンペーン”を実施しています。http://www.gankenshin50.go.jp/campaign_24/outline/low.html
乳がんの検診受診率は、20%足らずです。諸外国においても米国の89%に比較して、極端に低い状況が報告されています。
そこで当院は、いくつかの仮説を立ててみました。
1. 痛みがある検査だからではないか?
マンモグラフィ検査を受診した女性に聞くと、これが最も多い原因であることがわかりましたので、従来のマンモグラフィよりも精度が高く、痛くないマンモグラフィはないものか?ということで、ドイツシーメンス社製の3D-Tomosynthesisを導入しました。
従来のマンモグラフィと異なり、1mmスライス厚の断層写真で評価しますので、診断率が20%向上しています。
また、受診した患者さんの90%以上の方が痛くないと言っています。
2. 費用が高いのではないか?
従来のマンモグラフィ検診は、5000-10000円前後の設定が多いのですが、半額以下の2100円(消費税込)で実施しました。女性健診棟が完成するまでは、フリール社のバスをレンタルして、検査を開始しました。これまでに、毎月200名程度の受診者を受け入れています。
当然、機械は栃木県で初めての導入であり、採算を考えるとまったく赤字ですが、この仮説を証明するために実験しています。
3. 女性専用の施設がないからではないか?
男性と一緒に健診を受診することに、少なからず抵抗感を示している女性の意見を尊重して、思い切って女性健診センター+ブレストイメージングセンターの新築工事を開始しました。
今年の11月OPENを目指して、種々のシステムを準備しています。
私どもの3D-tomosynthesisおよび3D―超音波装置(ABVS-2000)そして、PEMの最新鋭機器を装備したブレストイメージングセンターは、日本で唯一、宇都宮セントラルクリニックだけだと自負しております。
90年代のアメリカは、乳がんの急増に対して、ブレストイメージングセンターが急増しました。日本でも20年のタイムギャップがあり、今後、この動きになってくると思われます。
私たちのブレストイメージングセンターは、乳腺専門医との連携も確立しています。
自治医大の穂積准教授、竹原先生(女医)、埼玉県立がんセンターの久保先生、埼玉医大の遠山先生に専門外来をお願いしていますので、迅速な診断と治療ができる体制を構築しています。
県内だけでなく、近隣県外からの患者さんの受け入れも万全な体制を構築してまいります。
スタッフも、女性の認定放射線技師や臨床検査技師で、快適な検査を目指します。
一度、ぜひ、トモシンセシスによる健診をご体験ください。
連休の中、日経CNBC主催の“アベノミクスの行方"の講演会に行ってきました。
早稲田大学の野口先生の話の中で、日本は80年代、新興国の工業化により、海外の安い賃金で生産が可能となり、国内の工場労働者が失業し、生産性の低い医療や介護に人材が流れたが、米英は労働生産性の高い金融やIT産業にシフトしたために、輝かしい90年代を謳歌することができた。日本は、金融立国していく必要があるという主旨の発言をされていました。
まさしく、医療は労働生産性が悪い職種です。
私も、ドクターネットを起業した時に、医療機関を経営していたのでは、いつまでも借金をし続けなければ良い医療は提供できないし、出口戦略が描けない職種だと実感しました。であれば、生産性の高いベンチャー企業と生産性の低い医療機関の経営を両建てで実施しようと計画したわけです。当初の計画通り、遠隔画像診断のドクターネットは、ノーリツ鋼機に売却することができました。これにより、今回のブレストイメージングセンターの原資を確保することができたわけですが、日本は、今後、高齢社会となり病気は確実に増えていきます。産業的に考えれば、成長分野なわけで、大きなチャンスと言わざるを得ません。
日本経済は、アベノミクスの3本の矢の“金融緩和”“財政支出”でとりあえず株高を演出しています。しかし、“成長戦略”で十分な効果を挙げられるのか?疑問視されているわけで、第3の矢を発表した5.23に、株価の大暴落=“5.23ショック”に見舞われたのでした。
私は、5-10年先の団塊の世代の人たちが、後期高齢者(75歳以上)になり、医療費が急増する頃までに社会保障費の削減を実施できなければ、日本経済の大きな危機になると予想しています。
それまでに、予防医療で外貨を稼げる産業に転換する仕組みを構築するつもりで準備しています。
私の友人の白井敬さんの招待で、工藤公康さんの講演会に行ってきました。
http://www.shiraitakashi.com/Pages/Home.aspx
工藤さんといえば、50歳の元プロ野球選手です。
彼のターニングポイントは、
1.西武の二軍落ちして、米国リーグに左遷されて、米国の厳しさを知ったこと
2.オフに、今の奥さんのおかげで、筑波大学の体育学の教授にOFFのトレーニング指導を受け、故障の時は、自分の球団のトレーナーではなく、スポーツメディスンの専門家(筑波大学)に指導を受けたこと。
3.引退したあとは、少年野球を指導して、故障者が出ないように検診活動を実践している。
つまり、投手がダメになる、離断性骨軟骨炎(症状が出ると、終わり)を早期に超音波検査で発見して、息の長い野球選手を育てることで、毎年、すごいルーキーを世の中に送り出す活動をしているのです。
すごく、良いヒントをいただきました。
いまは、宇都宮セントラルクリニックを日本一のブレストセンターに作り上げることに集中していこうと思っています。
今後とも、ご指導のほど、よろしくお願いします。