代表的な症状

肝臓がん

 

 
肝臓は、私たちの体では右わき腹下に位置する重さ1kg前後の臓器です。

 

  • 栄養の貯蔵
  • たんぱく質の合成
  • 有害物質の解毒や分解

など、生きていく上で不可欠な機能を持っています。
また肝臓は別名「沈黙の臓器」と呼ばれ、多少の障害では私たちの体に影響を及ぼすことはなく、かなり重症な状態になって初めて症状が出ます。

そのような肝臓に発生する腫瘍には、肝細胞ががん化して発生する「原発性肝腫瘍」と、他の臓器で発生したがん細胞が肝臓に転移した「転移性肝腫瘍」の2種類があります。
原発性肝腫瘍は肝細胞がんと胆管細胞がんに区別されますが、肝細胞がんは発生する原因が明らかで、予防できる可能性のある数少ないがんです。

 
肝細胞がんは、通常進行がんになるまではほとんど症状を示すことはありません。
そのため、健康診断や人間ドックで行う以下のような検査で発見されることがあります。

通常はAST、ALT、γ―GTPといった項目で肝機能の異常を調べますが、肝細胞がんの腫瘍マーカーであるAFP(α-フェトプロテイン)を追加で調べることもあります。

超音波を用いて、肝臓の形や異常を検査します。
体の表面に近い位置にある臓器に有効です。超音波検査は放射線被ばくがなく簡便に行えますが、精度が検査者の技量に大きく左右されることが欠点です。

レントゲンを用いて体の内部を画像化します。

 
日本における肝細胞がんのほとんどは、B型あるいはC型肝炎ウイルスに感染し、最終的に肝硬変となった肝臓から発生します。
そのため、肝硬変と診断されている方は肝細胞がんを将来的に発症するリスクが高いと考えられているため、健康診断や人間ドックを含めた定期的な画像検査を受けることで、肝細胞がんを早期に発見できます。

B型やC型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬が開発され、治療成績が良くなっています。
そのため、ウイルス性肝炎から肝硬変へと至る方が減っており、これまでのような原因で肝細胞がんを発症する方も減少すると見込まれています。

その一方で、最近では糖尿病や肥満といった生活習慣病に伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から肝細胞がんが発生することが注目されています。
このNASHは健康診断受診者の2~8%が有しており、若年者に多く発症します。
B型およびC型肝炎ウイルスに感染していないにも関わらず発症した肝細胞がんを非B非C肝がんと呼び、若年者の肝細胞がんが増えていることに注意が必要です。

 
肝細胞がんが進行するということは、その原因となっている肝硬変も同時に進行していきます。
肝硬変が進行してしまった場合、通常は肝臓を通って全身に戻っていくはずの血液が流れなくなるため、通常は存在しない「う回路」を新しく作ってしまいます。
その結果として食道静脈瘤という血管の瘤が食道に出来てしまい、それが破裂して血を吐いてしまうことがあります。

また、肝臓の機能自体も落ちてしまいますので、低血糖、栄養失調、黄疸などが発症し、生活の質も極度に低下してします。

 
現在、肝臓がんに対して受けられる治療には、以下のようなものがあります。
 

  • 外科手術
  • ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)
  • マイクロ波凝固(percutaneous microwave coagulation therapy:PMCT)
  • 経カテーテル肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)
  • 動注化学療法
  • 全身化学療法
  • 肝移植
  • 肝がん治療後の抗ウイルス療法

これらの治療法は肝細胞がんが出来た場所や個数、肝硬変の有無によって限定されます。
病気が進行する前の適切な予防が重要です。

 
現在の日本で見られる肝細胞がんは、ウイルス性肝炎やNASHなど予防できる原因で発生することがほとんどです。
肝細胞がんが発生する前に適切な予防をし早期に発見するため、定期的な健康診断や人間ドックでの検査が薦められます。