代表的な症状

私たちの体の中にある腸は、蠕動とよばれる尺取り虫のような動きをして食事や胃液などを送り出しています。
この動きによって、私たちが食べた食事は胃、小腸や大腸を通過することができ、それぞれの場所で消化、吸収され、最終的には便として排出されています。
ところが、蠕動による食事の送り出しや消化吸収が何らかの理由で妨げられてしまうことがあります。この状態を腸閉塞(イレウス)と言います。

腸閉塞では、腸の働きが妨げられてしまった結果、多岐にわたる症状が出ることがあります。
1週間くらい便やおならが出ない、便が細くなった、お腹が張る、食欲がないなどです。
軽傷で済むものから緊急の処置を要する状態まであります。

 

腸閉塞の症状

 

 

腸閉塞では、通過障害が生じた腸より上流の腸にある内容物が流れ出ていかないために、腹部膨満、腹痛や嘔吐を生じます。
例えば小腸で腸閉塞が生じた場合には、胃の内容物が滞ってしまい、大腸で腸閉塞が生じた場合には小腸と胃の内容物が滞ります。
また、通過障害の起こり方によっては血便が認められる場合があります。

 

腸閉塞になった初期は胃液のような薄い液体を吐くことが多いですが、腸閉塞が長引くと胆汁(緑色の吐物)や茶色い便臭のする吐物を吐くことがあります。
また、嘔吐が長引くと脱水になり、尿が出ない、ふらつくなどといった症状が現れることもあります。

 

腸閉塞の中には、後にも説明しますが、複雑性腸閉塞と言って急に腸の血流が途絶してしまうものもあります。
そのような場合では、突然の悶絶するような腹痛を自覚することがあります。

 

 

腸閉塞の原因は主に以下の2通りに分けられますが、その中でもいくつかの種類に分類されています。

 

腸が何らかの原因で狭窄や閉塞を起こし、腸の通過障害が生じてしまった状態を言います。
血流障害の有無によって、さらに単純性腸閉塞と複雑性腸閉塞に分類されます。

 

 

腸管の通過が悪くなっていますが、血流障害を起こしていない状態です。多くは腹部手術の既往がある方に起こる癒着が原因であることが多いです。

 

 

腸管の通過が悪いことに加え、高度の血流障害を起こしてしまっている状態です。
機械的イレウスの10~15%を占め、死亡率も20%~40%と高いと言われています。
腹部手術の既往がある方に起こる癒着が原因としては多いですが、その他にも様々な原因で起こり得ます。
近年では大腸癌による腸閉塞が原因として多くなってきています。

 

機械的腸閉塞のように狭窄・閉塞した部位がないにも関わらず腸内容の送り出しが障害された状態です。

 

 

様々な理由により腸の機能が麻痺してしまい、腸の蠕動が止まってしまった状態を言います。

 

 

腸が強く収縮して強い腹痛と通過障害がでますが、ほとんど経験することはありません。

 

腸閉塞を未治療のままにしておくと、腸内容物の嘔吐による重症の脱水、腸粘膜から腸内細菌が体内に侵入して重症の感染症を引き起こすことがあります。
特に複雑性腸閉塞の場合は、腹痛などの症状が出現してから時間が経過するにつれて腸の壊死や、それに続く腸の穿孔を起こしやすくなるので、早期の治療が必要になります。

 

腸閉塞の治療には、まずどの種類の腸閉塞であるかを正確に診断する必要があります。
そのため、腹部レントゲン検査や腹部CT検査を受けることになります。

単純性腸閉塞や麻痺性腸閉塞の場合、治療の原則は腸閉塞により滞っている腸内容物を体の外に排出する点です。
そのため、鼻から腸の中まで長い管を入れることがあります。

 

体外に排出された腸内容物には多くの電解質が含まれていますいるので、それを補充する様な点滴治療や脱水に対する治療が行われます。加えて、必要に応じて抗生物質を投与することもあります。

 

単純性腸閉塞に対して点滴治療などを行っても改善しない場合は、1週間を目途に手術が必要かどうか再度検討することが多いです。
これは、癒着が原因となって腸が狭くなっている可能性があるため、解除する必要が出て来るからです。

 

複雑性腸閉塞の場合には壊死を引き起こす前に血流障害を解除しなければなりませんので、手術が必要になる場合が多いです。多くの場合は緊急手術となります。

 

症状を発症してからの時間経過が短ければ血流障害の解除だけで済むことが多いですが、時間が経ってしまっていた場合には血流が戻らないため、腸閉塞を起こしていた腸を切除する必要がでてきます。
複雑性腸閉塞の場合は時間との勝負になります。

 

腸閉塞は、その起こり方で今後の治療方針が大きく分かれます。
複雑性腸閉塞の場合、外科医がいなければ治療できないことが多いです。

 

特に突然発症した腹痛では複雑性腸閉塞の可能性があるため、外科医が在籍する病院での診断および治療が望まれます。