代表的な症状

全身性エリテマトーデス

 

 
全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosusの頭文字をとってSLEと呼びます)は、体全体の皮疹から始まり、全身の臓器に様々な病気を引き起こしてしまう自己免疫性疾患です。自己免疫性疾患という病気は、外敵から身を守る免疫機能が何らかの理由で自分自身の体を攻撃してしまう病気で、現代の医学をもってしても、なぜ発症するのか明らかになっていないことが多いのが現状です。
 
SLEでは、皮疹、関節痛、血液検査での異常、血管に影響を与える病気など多種多様な病態があり、ただ1つの症状さえよくなれば改善するものではありません。また、一度症状が良くなっても再発を繰り返し、完治することが難しいことでも有名です。
 
日本での患者数は約6万人といわれており、国の難病に指定されています。妊娠適齢年齢(20代後半~30代前半)の女性に多く(男女比1:9)発症しますが、小児から高齢者まで幅広い年齢層において発症する可能性があります。

 
SLEは、遺伝子変異、民族差、性ホルモンの違いなどの遺伝的な背景に加え、生活習慣、紫外線への暴露、ウイルス感染症など生活する中で受ける様々な影響が複雑に絡み合うことで発症します。そのため、現在まで特定の原因というものは発見されていません。また、双生児(双子)では、一卵性双生児で24~69%、二卵性双生児で2~9%に発症するともいわれています。
 
人種差では、白人よりも黒人、アジア人、ヒスパニック系に多く、重症化する例も黒人やヒスパニック系に多いです。

 
一般的には皮疹や関節痛などの症状がほとんどの方に見られ、それに加え内臓や血管など全身の臓器に発症した病気の症状が加わります。これらの症状が出る病気は他にもたくさんあるため、SLEの診断や治療をとても難しくしています。以下に、SLEでみられる代表的な症状をお伝えします。
 
①全身症状
発熱、全身倦怠感や食欲不振など、最初は風邪をひいたかなと思う程度の症状しかでません。それが何週間、何か月も続くことでようやく別の病気ではないかと疑うことになります。
 
②皮膚症状
有名な皮膚症状は「蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)」といって、鼻を中心として両側の頬に蝶が羽を広げたような形に見える発疹が現れることが多いです。
 
③関節症状
手や指の関節に炎症を起こします。これは関節リウマチとも似ていますが、炎症を起こす関節が移動していくことが特徴的です。
 
④日光過敏症
紫外線に当たると日焼けよりもひどい炎症を起こし、水膨れを作ることがあります。
 
⑤脱毛
円形脱毛症の様に一部分だけごそっと髪が抜けたり、全体からまんべんなく抜けることもあります。
 
⑥口内炎
一度口内炎ができるとなかなか治りにくかったり、強い痛みを伴う口腔内潰瘍となってしまうこともあります。
 
⑦様々な臓器の障害
その他、全身の血管、肺、腎臓、中枢神経など、全身の複数の臓器に障害を引き起こすことがあります。

 
発症初期でSLEが見つかり治療を受けられた場合には、病気の管理もしやすくなりますが、治療が遅れたり、一度良くなった後に症状が再燃した場合には、全身の臓器に影響を及ぼし治療が難しくなります。
 
重症化すると、神経障害、心不全、腎不全、視力障害などが発症し、それを抑えるために多種類の免疫を抑える薬剤を長期にわたって使用しなければなりません。その結果、SLEによる症状と免疫が抑えられていることによる弊害も徐々に出てきます。

 
SLEの治療は、免疫機能を抑える様々な薬を用います。
 
①副腎皮質ステロイド
副腎皮質ステロイドという薬剤は昔から使用されている、免疫を抑える薬剤です。SLEだけでなく、気管支喘息やアトピーの治療にもよく使われています。
 
②ステロイドパルス療法
通常量のステロイドでは管理できない場合や症状が急に悪くなってしまった時には、一時的に大量のステロイドを投与することがあります。このことを「ステロイドパルス療法」と呼びます。
 
③免疫抑制剤
ステロイドでは効果が十分に出なかったときや、ステロイドの副作用が強く出てしまった場合に免疫抑制剤を使用することがあります。SLEの原因となる免疫反応だけでなく細菌やウイルスに対する正常な免疫機能も抑制してしまうため、感染症に注意が必要です。

 
SLEはその診断や治療方法がいまだ確立しておらず、治療がとても難しい病気です。また、妊娠・出産適齢期の女性に多く発症することもますます治療を難しくしています。妊娠や出産はSLEの発症や症状の悪化を引き起こすこともありますが、適切な薬物治療を受け、症状が安定するようなら出産もできることがあります。いずれにしても、自己免疫疾患の治療経験が豊富な医療機関での治療をお薦めします。