代表的な症状

睡眠時無呼吸症候群とは

 

 
現代社会において日本人の5人に1人が睡眠障害に悩んでいると言われており、その原因として最も頻度が高いのが睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)です。SASは、様々な理由で夜間睡眠中に呼吸が複数回停止し、その結果、肺で効果的な換気ができなくなることで色々な病気が発症します。SASは大きく分けて、以下の3つの原因に分類されます。
 
①閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome:OSAS)
②中枢型睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome:CSAS)
③閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome:OSAS)
 
この中でもOSASは気道が睡眠中に狭くなるタイプであり、肥満を原因として発症しやすいとされています。日本におけるSASの原因として最も多いものになっています。SASは心筋梗塞や脳卒中など”夜間突然死”を起こす病気の発症に関与するメタボリックシンドロームの一つとして見られています。肥満、高血圧、高血糖、高脂血症、SASをまとめて“死の五重奏”と呼ばれるようになりました。
 
また、SASは上記のように突然死を引き起こすだけではなく、日中の眠気により仕事や学業の能率低下をもたらし、交通事故や労働災害に発展するなど社会的にも極めて重大な問題となっています。

 
SASで必ず見られる症状は、夜間就寝中のいびきです。いびきは睡眠時の気道閉塞を意味しますが、肥満者は普段から気道に脂肪や皮下組織が発達してしまうため、OSASがおこりやすくなります。
 
日中の異常な眠気はSASに特徴的な症状でとても重要ですが、患者自身がその異常さに気づいておらず、家族や同僚の話で発覚することも多いです。その他、以下のような症状もSASで出やすい症状になります。

 

  • 日中の過眠
  • 知性の低下
  • 性格の変化
  • 起床時の頭痛
  • 幻覚
  • 不眠症

 
これらのほとんどは、睡眠中に呼吸が停止してしまうことによる低酸素血症と中途覚醒に起因しています。

 
前述したように、SASの主な原因は肥満です。ですので、肥満した中高年の男性が強いいびきと日中過眠を訴えるようであれば、SASの原因として考えてよいでしょう。SASの原因が肥満だとしても、本当にSASであるか診断するためには睡眠検査が必要です。
 
この睡眠検査はポリソムノグラフィー(PSG)と言い、睡眠中の脳波や血中酸素濃度など多くの生理学的数値を調べることのできる検査です。睡眠の質や睡眠中の呼吸状態を調べ、SASでないかどうかを調べます。一晩(7時間)の睡眠中に30回以上の無呼吸(10秒以上の呼吸気流の停止)があるものをSASと定義します。1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、この回数で重症度を判定します。*1
 
その他SASに似た病気を発症させるものとして、甲状腺機能低下症やホルモンの異常、日中過眠を症状とするナルコレプシーという精神疾患などもありますが、PSG検査を行うことでその区別は簡単にできます。

 
SASはメタボリックシンドロームの一部分とみなされていますので、高血圧、不整脈、心疾患などを合併症として発症することがあります。また、日中の集中力低下や突然の眠気などで仕事に影響がでたり、運転中の突然の意識消失などで重大な交通事故へと発展してしまう可能性もあります。

 
SASが悪化することによる最大の合併症は、心臓突然死(Sudden Cardiac Death: SCD)です。心臓突然死のもっとも多い原因は心筋梗塞で、日本では年間5~7万人の方が心筋梗塞で亡くなっていると言われています。
 
心臓突然死になりやすい条件としては古来より、高齢・男性・喫煙習慣・激しい運動・高血圧・糖尿病虚血性心疾患・心不全・心筋症などが挙げられますが、近年、SASと心臓突然死の関係が注目されています。
 
睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病の1つであるため、心筋梗塞などに代表される虚血性心疾患や脳卒中など全身の血管に悪影響を与える病気にも関連します。加えて、心臓突然死しやすい条件としても重要です。特に治療を必要とするSASの方で、高血圧や高脂血症など心臓突然死しやすい条件を複数個お持ちの方は特に注意する必要があります。

 
中等症から重症のSASと診断された場合は、SCDを回避するためSASの治療をお薦めします。SASの主な治療法は主に以下のようなものがあります。
 

  • 減量
  • 経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continous Positive Airway Pressure:CPAP)
  • 手術
  • 歯科装具

 
などがありますが、なにより減量が重要です。
 
肥満はSASの最も重要な危険因子であり、減量を必ず行わなければなりません。減量を行うためには、生活習慣の改善に加え運動も重要となってきます。また、アルコールは気道を弛緩させより気道が閉塞しやすくなるため、就寝前の飲酒(いわゆる寝酒)は辞めることをお薦めします。また、喫煙は気管や肺に絶えず炎症を起こし気道を狭くするため、禁煙も強く推奨されています。
 
減量には食事療法と運動療法が必要不可欠ですが、病的肥満と呼ばれる状態(BMI>35、もしくは標準体重より45kg以上重い場合)であれば、減量手術という外科的な治療が選択肢となります。しかし、この減量手術を国内で行える医療機関はまだまだ限られているため、慎重な検討が必要です。

 
SASは生活習慣病の1つでしかないため、SASだけを治療すれば全て解決するわけではありません。肥満、高血圧、高脂血症、高血糖など、ほかの生活習慣病を治療するために、普段の生活から見直す必要があります。SCDを防ぐためにも、今から普段の生活を見直し、健康な体を取り戻しましょう。
 

*1 出典:睡眠時無呼吸なおそう.com「SASの定義・重症度分類」