代表的な症状

痛風

 

 
痛風という病気は古くから知られており、かつては贅沢な日常生活を送ることのできた高貴な身分の人に良く発症していたため「帝王病」とも呼ばれていました。日本では1960年以降、食文化の西洋化に伴い痛風と診断される患者数は徐々に増加し、ここ30年ではその患者数は約4倍にも増加したと言われています。
 
痛風は、尿酸値が高い状態が続くことで関節の中に尿酸の結晶ができ、それが原因で関節に強い痛みを生じさせる病気です。痛風は中年以降の男性に多いとされていましたが、最近ではライフスタイルの変化に伴う発症年齢の若年化と、早期治療による軽症の痛風患者が増加しています。
現在では日本での痛風の有病率は欧米諸国に比肩するようになり、成人男性の20~30%が高尿酸血症と診断されており、よく見かける病気になってきました。

 
痛風では、尿酸が関節の中で結晶化することで関節炎を引き起こします。これを痛風関節炎(別名:痛風発作)と言い、突然関節が痛み始めることが特徴です。特に、足の親指の関節に炎症を起こすことが多く、痛みだけでなく熱感も伴います。炎症を起こしますので、熱が出たり、風邪をひいた時のような全身のだるさを自覚することもあります。
 
通常この痛風発作が起きた場合には1~2週間程度で自然に良くなりますが、年に複数回再発することがあります。発作が起きたときに適切に対処しないと、関節炎が慢性化し、関節リウマチの様に関節の変形も伴うようになります。

 
痛風は、長期間にわたり血液中の尿酸値が高い状態が続いてしまうことで高尿酸血症となり、その結果尿酸が関節の中で結晶化します。その結晶が関節の中で炎症を起こすことで、関節痛や発熱などの症状を呈するようになります。
 
そもそも尿酸は「プリン体」と呼ばれる生命活動に必要な成分が分解されることで、副次的に生成されます。高プリン体の食事を摂取しすぎると痛風になると言われていますが、1日に必要なプリン体の多くは体の中で作られていますので、食事が与える影響はごくわずかです。体内で産生されるプリン体と排泄されるプリン体のバランスが崩れ、血中の尿酸値が高くなると高尿酸血症となります。
 
痛風発作を起こす頻度の高い方は、尿酸値が7.0mg/dl以上と高尿酸血症になっており、また高尿酸血症となっている期間が長いという特徴があります。
 
尿酸値が高くなる原因は様々ですが、以下のような理由が言われています。

  • 人種差、遺伝
  • 年齢
  • 性別

また、腎臓の機能低下がないか、高血圧ではないか、飲酒の量も影響するとされています。
 
高尿酸血症が痛風発作の原因となることは間違いないのですが、高尿酸血症の方が全員痛風発作を起こすわけではありません。なぜ関節の中の尿酸結晶が炎症を引き起こすのかも、いまだよくわかっていません。

 
痛風と同じような症状を呈する病気に、偽痛風があります。痛風は尿酸が関節の中で結晶化することで急激な痛みを起こすのですが、この偽痛風ではピロリン酸カルシウムという物質が関節の中で結晶化することで痛みを起こします。
 
偽痛風では膝関節、手関節、足関節など全身の関節に炎症を起こすことがあり、かつ尿酸値が正常であるため、関節リウマチと誤解されて診断されてしまうこともあります。
 
ピロリン酸カルシウムが関節の中で増え、結晶化してしまう理由はよくわかっておらず、痛風と異なりピロリン酸カルシウムを減らす治療薬などはありません。関節の炎症に対して消炎鎮痛剤を用いて症状を改善させるしかありません。

 
痛風の症状は抗炎症鎮痛薬を服用することで抑えることができ、痛風そのもので重篤な状態となることはありません。しかし、痛風を発症する方はそれ以外に高血圧、腎機能障害、動脈硬化症などいわゆる生活習慣病と呼ばれる病気を併せ持つことが多いです。
 
そのため、生活習慣病が悪化し、高血圧から脳出血を起こしたり、動脈硬化症から心筋梗塞や脳梗塞を発症することもあります。

 
痛風発作の既往があれば、原則として尿酸値を下げる内服薬の服用が勧められます。痛風発作の既往がなかったとしても、尿酸値が9.0mg/dl以上である場合、ほかの生活習慣病を合併する場合には同じく内服薬の服用が推奨されます。
 
一度痛風発作が起きてしまった場合は、以下のような治療を行います。

  1. 痛風発作の治療
    痛風発作による関節炎を発症した場合には、まずは消炎鎮痛剤で痛みを取る治療を行います。痛風発作が起きているときに尿酸値を下げる内服薬を服用すると発作が悪化しますので、内服しないように注意が必要です。
  2. 高尿酸血症の治療
    高尿酸血症は他の生活習慣病も合併していることが多いため、まずはライフスタイルの指導が必要になります。肥満の解消、飲酒の制限、水分摂取、適度な運動などの生活指導を行います。アルコール飲料、肉類・魚肉類の過剰摂取、砂糖入りソフトドリンク、果糖の過剰摂取は痛風発症リスクを増加させるとされており、適切な制限が必要です。

これらの制限で良く管理されて初めて尿酸の生成を抑える内服薬が効果を発揮します。ライフスタイルの制限を行わず、内服薬だけ服用していても効果はありません。これらの治療を行い尿酸値が6.0mg/dl以下を維持できていると、痛風発作の再発頻度を抑えることができるようになります。

 
痛風や高尿酸血症は日常的によく見かける病気で、ライフスタイルの変化に大きく依存します。普段の健康診断でも尿酸値は検査されていますので、結果をよく見直して異常がある場合には適切な治療を早期に受けることが薦められます。