代表的な症状

食物アレルギー

 

 
「アレルギー性疾患」は、私たちの体が外からの異物に対して防御反応を起こし、その結果、様々な症状を呈する病気のことを指します。アレルギー性疾患と呼ばれる病気は幅広く、以下のような代表的な病気があります。
 

  • 花粉症によるアレルギー性鼻炎
  • 皮膚のアトピー
  • 気管支喘息
  • ネックレスなどの金属が触れたところが赤くなってしまう金属アレルギー

 
これらの病気もアレルギー性疾患に含まれます。
 
その中でも、私たちが普段口から摂取する食物に対するアレルギーを起こしてしまう状態を、食物アレルギーと呼びます。
 
食物アレルギーを含むアレルギー性疾患は20世紀に入ってから急増しており、特に子供の患者数が急激に増えています。食物アレルギーのほとんどは乳幼児から小児期に発症し、小中学生の約5%は何らかの食物アレルギーを抱えているとされています。
 
乳幼児に起こる食物アレルギーは、大人が大丈夫だろうと過信して与えた食物から起きることがほとんどです。実際に、体が成長するにつれて免疫機能も成長し、アレルギー反応を起こしづらくなってきます。このような理由から、乳幼児から小児期に与えてよい食べ物がある程度決められているのは、免疫機能の成長を待っているということになります。

 
食物アレルギーは大きく分けて、アレルギーの元(アレルゲン)を摂取してすぐに症状がでる「即時型」と、数時間から数日たって症状がでる「遅延型」の2種類があります。一般的に食物アレルギーとされるのは「即時型」ですので、こちらの症状に注意して下さい。
 
即時型食物アレルギーの症状は、主に以下のようなものがあります。

 

  • 蚊に刺されたような赤いボツボツが体に広がる
  • 特定の食物を摂取した後、唇が腫れる、のどがイガイガする
  • 咳が止まらなくなる
  • 下痢・嘔吐をする
  • 息苦しくなる

 

これらの症状はどれか一つだけでなく、複数出ることがあります。成人であればご自身でアレルゲンを除去したり、症状に気づくことができますが、乳幼児や小児の場合はそうではないため、大人が注意しなければなりません。

 
食物アレルギーは、アレルゲンとなる食物が腸から吸収され、免疫機能に「敵」と認識されてしまうことで起こります。また、食物アレルゲンは口から摂取して吸収されるだけでなく、アレルゲンの粉末を吸ったり、アレルゲンの液体が肌に触れるだけでアレルギー症状を発症することがあります。

 
食物アレルギーの症状で一番気を付けなければならいのは、「アナフィラキシーショック」です。
一般社団法人日本アレルギー学会という団体がアナフィラキシーガイドラインを発行していますが、それによると
 

アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過剰反応」

アナフィラキシーショックは「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」

とされています。
 
引用:一般社団法人日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン
 
このアナフィラキシーショックはアレルゲンと2回目に接触した時に起こりやすく、かつ症状が急激に進行してしまいます。ショックを起こしてしまうと自分では症状を訴えることは出来ず、周りから気づかれない限りは治療を受けることすらできません。
 
アレルギーを持っている方が突然の呼吸困難、息を吸うとヒューヒューいう、意識がない、などの状態になってしまった場合には、一刻も早く対処する必要があります。

 
食物アレルギーだけに関わらず、アレルギー性疾患の治療法は、アレルゲンとなる物質と接触しないことと、その機会を極力減らすことがとても重要です。それだけで効果がない場合は。以下の2通りの治療を行います。
 
①抗アレルギー薬
アレルギー反応を起こしてしまう体内物質を抑える効果のある薬です。花粉症によるアレルギー性鼻炎などでもよく使用されます。
 
②アレルゲン免疫療法
アレルゲン免疫療法は、アレルギー性疾患に対する唯一の根本的治療です。また、原因となるアレルゲンに特化した治療法になります。食物アレルギーの場合であれば、アレルゲンとなる食物をごく少量から摂取し、徐々にその量を増やしていくことで「脱感作」を目指します。この「脱感作」は、アレルゲンに対する免疫機能の働きを徐々に抑えていくことを言います。
 
これらの治療を行っても食物アレルギーが改善しない場合には、アレルゲン物質を除去した食事を続けなければなりません。加工食品ではえび、かに、小麦などアレルゲンとなりやすい7つの物質を表示する義務があるため判断しやすいですが、それ以外のアレルゲンに関しては摂取する前にその都度確認した方がよいでしょう。
 
ここまで気を付けても、やはりアレルゲンに接触してアナフィラキシーショックを起こしてしまう可能性があります。そのために「エピペン」と呼ばれる応急処置の薬剤を携帯することをお薦めします。

 
食物アレルギー自体はよくあるありふれた病気ですが、乳幼児や小児では命にかかわることもありますので、周囲の大人が注意して見守る必要があります。また、アナフィラキシーショックを起こしてしまった場合には、いかにエピペンを常備していたとしても、自分自身で打てる状況にはありません。一瞬の躊躇が命取りになりますので、すぐに使用することを心掛けてください。