COPD(慢性閉塞性肺疾患)
平成30年の人口動態統計によると、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)は、男性の死因の8位となっています(*1)。
COPDは世界的に見ても喫煙との関連が示されている病気のひとつであり、過去に喫煙をしていた方々が高齢者になっていった末、将来的には世界の死因の第3位になると予測されています。
COPDは一度発症してしまうと、禁煙をしても肺の機能が元に戻ることはなく、悪くなる一方です。
ここでは、喫煙とCOPDの関係、COPDでどのような症状が出るのか、そしてCOPDの治療法について説明します。
COPDとは?
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主に喫煙を原因として発症した、
- 肺気腫
- 慢性気管支炎
- 気管支喘息
の併発により気管が閉塞し、閉塞性換気障害を特徴とする疾患群であるとされています。
これは、COPDとはひとつの病気ではなく、「様々な病気が集まった状態」を表しています。
通常、COPDによる閉塞性換気障害はゆっくりと進行し、逆戻りすることはありません。
このCOPDは世界中に罹患者のいる深刻な病気のひとつであるため、2001年には『Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease』(通称GOLD)と呼ばれる、国際ガイドラインが制定されました。
日本でも、このガイドラインに沿った治療が行われています。
COPDの症状
COPDの代表的な症状は、労作時の息切れであり、その多くは60歳以上の高齢者に起こります。
しばしば「口すぼめ呼吸」という、特徴的な呼吸方法を目にします。
これは、息を吐く時に口をすぼめることで口の中の圧力を高め、ゆっくり呼吸を行うやり方です。
口の中の圧力を高めると気管の中の圧力も高くなるため、つぶれている気管を広げることができます。
呼吸だけでもかなりのエネルギーを消費するため、体重減少も特徴的です。
また、かぜなどをきっかけとして呼吸状態が悪くなり、人工呼吸器管理を必要とする場合もあります。
COPDの原因
COPDとなる原因は、喫煙です。
そのため、COPDは生活習慣病のひとつとして考えられています。
たばこの煙を吸入することで、肺の中の気管支に炎症を起こします。
その結果として気管支炎が発症し、咳や痰が出たり、炎症を起こすことで気管支が細くなります。
細いストローがつぶれて吸えなくなったと想像してみてください。
また、気管支が枝分かれした肺の奥深くにある肺胞(はいほう)と呼ばれる場所が、たばこの煙や様々な有害物質で破壊されて、肺気腫という状態になります。
そうすると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下し、呼吸困難を呈します。
COPDの合併症
COPDに特有の合併症はありませんが、この病気自体がゆっくりと進行していくため、運動時の呼吸困難感や日常生活でのQOL低下が徐々に見られます。
徐々に苦しくなっていく、というのがCOPDの最もつらい一面ではないでしょうか。
COPDの治療方法
COPDに対する管理の目標は、以下の内容を気道閉塞の重症度だけでなく、症状の程度を加味した「重症度」を総合的に判断したうえで、治療法を段階的に増強していきます。
①禁煙指導
喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまうので、禁煙が治療の基本となります。
COPDの発症後でも、禁煙はその後の呼吸機能の低下を遅らせて予後を改善させるといわれています。
これは禁煙外来での治療が勧められます。
②気道の閉塞を改善するための薬物療法
喘息の治療と同様に、気管支を広げる吸入薬や、内服薬を使用します。
気道閉塞が重度で増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬を使用します。
非薬物療法では呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)が中心となります。
③気道感染に対する薬物療法
かぜなどの上気道感染がCOPD患者の急性増悪の原因となるため、痰を出しやすくする薬や、抗生物質の投与を行います。
また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種も勧められます。
④在宅酸素療法
呼吸困難感が強い時や、運動・睡眠時に高度の低酸素血症を呈する場合では、自宅で酸素吸入療法を行う事ことがあります。
たばこの火が簡単に引火し爆発するため、在宅酸素療法を行う時には、禁煙を徹底しなければなりません。
さらに呼吸不全が進行した場合は、小型の人工呼吸器とマスクを用いて呼吸を助ける、換気補助療法が行われることもあります。
⑤Volume reduction surgery(VRS)
症例によっては過膨張した肺を切除する外科手術(肺容量減少術)が検討されることもあります。
成功例からは「症状の改善に繋がる」といわれていますが、COPD患者は手術自体のリスクが高いため、あまり行われません。
まとめ
COPDの原因や種類は多く、その治療法も多岐にわたります。
治療を受けなければならない状態になる前に、禁煙を心掛けてください。
万が一COPDと診断された場合、それが治療を要するのか、どのような症状が出るかなど、呼吸器の専門医とよく相談してください。
禁煙を考える場合は、禁煙外来の受診をお薦めします。
■参考
*1(参考)平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況 「死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)・死因順位別」