代表的な症状

気管支喘息
 

 
気管支喘息は、乳幼児から高齢者までどの年代になっても起こりうる病気です。医療が発達している日本でも気管支喘息の発症頻度と死亡率は増加しており、治りにくい病気の一つです。時には治療を行う時間もなく突然症状が悪化し、亡くなってしまうこともあります。
 
気管支喘息は「気道の炎症が完全にはよくならず、ずっと続いている」「炎症が続いているせいで、ちょっとした刺激でも喘息発作を起こしてしまう」「炎症が続いているせいで、空気の通り道が常に制限されてしまう」等が病気の典型的な状態です。炎症を繰り返すことによって気道の壁が分厚くなってしまい、さらに空気の通りが悪くなってしまいます。これは「気道リモデリング」と呼ばれ、この状態にならないような治療を行っていく必要があります。
 
また、気管支喘息はアレルギー物質に対する「アトピー型」と「非アトピー型」に大別され、気管支喘息の治療に加えてアレルギーの治療も併せて行う場合があります。

 
気管支喘息に特徴的な症状は、主に以下の3つとされています。
 

  • 発作性の咳
  • 喘鳴
  • 繰り返す呼吸困難

 
風邪をひいた後に咳が長引いたり、呼吸するたびに「ヒューヒュー」音がしたりするのは、気管支喘息を強く疑う症状です。また、季節の変わり目などに咳を繰り返したり、息が苦しくなる場合も気管支喘息を疑った方がよいでしょう。

 
最近の研究によって、気管支喘息は喘息特有の気道の炎症が原因であることがわかってきました。しかし気管支喘息の原因は複雑で、なぜ気管支喘息という病気が発症してしまうのかに関してもいまだ解明されていないことの方が多いです。そのため、原因を追究してそれを解決することにこだわるのではなく、喘息の症状を早く見つけ、治療へとつなげることが大切とされています。
 
喘息の症状や特徴は年齢によって以下の様に異なります。
 
①乳幼児
乳幼児は気管支喘息の自覚症状を上手に訴えることができないことや、いろいろな検査を行うことができないことから、診断が難しいです。そのため、乳幼児の気管支喘息(小児喘息)は重症化しやすく、注意が必要です。
 
②学童期~青年期
思春期を迎えるころにはアレルギーへの耐性が生まれ、自然治癒することがあります。
 
③成人
成人になってから発症した気管支喘息、または小児喘息が治癒しきらずに長期間喘息を患っている場合には、気管リモデリングが進んでしまい、気道の閉塞を起こし、呼吸困難感を感じやすくなります。
(※気管リモデリング:気管の炎症が完全に良くならず、再発を繰り返すことによって気管の壁が分厚くなってしまい、元の太さには戻らなくなってしまうこと。その結果、空気の通りがますます悪くなってしまいます。)
 
④高齢者
高齢者の喘息では、喫煙による慢性閉塞性肺疾患(COPD、俗にいう肺気腫)やその他の呼吸器系の病気が原因で起こることがあります。そのため、病態や治療が複雑で治療が難しくなります。

 
気管支喘息が悪化する原因としては、以下のようなものがあります。
 

  • 気象の変化
  • 大気汚染や煙
  • ストレス
  • アルコール

 
気管支喘息が悪化すると、当然ながら呼吸ができなくなります。小児では「歩けない」「食事ができない」「強いゼーゼーがある」「顔色が悪い」、乳幼児では「呼吸があらい」「顔色が悪い」「ゼーゼー音がする」など、治療が受けられなければ命にかかわる状態となります。特に小児や乳幼児は自分でうまく訴えられないことが多く、周りの大人が気づいてあげなければなりません。
 
成人の気管支喘息が悪化した場合にはご自身で症状が悪化したことに気づくことがほとんどですが、発作時に使用する吸入薬を乱用することで中毒症状を起こしてしまうこともあるため、注意が必要です。
 
重症化してから治療をするのではなく、上記のような症状を悪化させる原因を可能な限り避けることも重要です。

 
気管支喘息では、以下の7つの状態を目標にして治療を行います。
 
①健康な人と変わらない生活が送れる
②正常に近い呼吸機能を維持する
③十分な睡眠を確保できる
④喘息発作が起こらない
⑤喘息死の回避
⑥治療薬の副作用がない
⑦気道リモデリングを防ぐ
 
これらの目標を達成するために、吸入ステロイド薬を用いた薬物療法を行います。吸入ステロイド薬は気管の炎症を抑える効果があり、症状の改善だけでなく気管リモデリングを防ぐ作用もあります。それ以外に、原因となっているアレルゲンを除去したり、呼吸が苦しくなるような運動を避けるなど、日常生活の見直しも必要となってきます。

 
喘息は子供から大人まで幅広い年齢層に発症する病気ですが、年齢によって治療方法や重症化した時の対処法が異なってきます。喘息の治療は、小児の場合は小児科医へ、成人の場合には呼吸器内科医への受診をお薦めします。