急性胃腸炎
「おなかが痛い」
「気持ちが悪い」
「吐いてしまう」
「下痢をしてしまう」
皆さん、今までに一度はこれらのような症状を経験したことがあるのではないでしょうか?
それは急性胃腸炎です。
もはや国民病と言ってもいいくらい、急性胃腸炎という病気は世の中にあふれかえっています。
その種類は、冬の時期に流行するノロウイルスや、食中毒を起こす病原体が体内に入り込み起こす感染性腸炎まで、多岐にわたります。
自分では予防していると思っているのに、知らない間にどこからか病原体が体の中に入ってきてしまうのです。
そこで、なぜ急性胃腸炎になるのか、急性胃腸炎になってしまったらどうするのか、予防法などをご紹介します。
急性胃腸炎とは?
急性胃腸炎とは、胃腸の粘膜が何かしらの原因により障害をきたし、粘膜が炎症を起こしている状態をいいます。
炎症を起こした粘膜は腫れ、急性発症の下痢や吐き気、嘔吐、腹痛を伴うようになります。
胃腸の粘膜に障害を起こす原因には様々なものがあります。
なかでも、ウイルス性をはじめとした感染症が多く、一般的に急性胃腸炎といえば、感染性胃腸炎を指すことが多いです。
急性胃腸炎の症状
急性胃腸炎の代表的な症状には、
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 発熱
などがあります。
何らかの病原体に感染してから実際に発症するまでには、潜伏期間という症状が出ない時期があります。
たとえばカンピロバクターという細菌は、潜伏期間が10日ほどあるので、10日前に何を食べたか聞かれることもあります。
急性胃腸炎の原因
急性胃腸炎は、ウイルスや特定の病原体によって生じることが多いです。
そのほか何らかの薬剤やアレルギーで胃腸炎を起こす場合もあります。
私たちがよく経験する急性胃腸炎は、そのほとんどがウイルス性胃腸炎です。
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- アデノウイルス
などが代表的なウイルスですが、冬場に幼稚園や小学校などで集団発生するノロウイルスは聞いたことがあるのではないでしょうか。
特にノロウイルスがカキの生食で感染するので、特に冬場の生ガキには注意が必要です。
細菌性腸炎は、主に食中毒の一種とも考えられます。
生卵や鶏肉などの生食から感染するカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌などがあります。
急性胃腸炎の治療法(*1)
ウイルス性急性胃腸炎の治療は、なんといっても脱水の予防です。
ウイルスなので、抗生物質などは全く効きません。
治療の主体は、嘔吐・下痢がひどく脱水が強い場合は点滴、発熱・腹痛がある場合は解熱鎮痛剤といったように、症状を緩和する治療を行いながら、自然に回復するのを待ちます。
よく、病院を受診して点滴を打てばすぐに良くなると考えている方もいますが、気持ち悪くてお腹も痛いなか、つらい思いして病院を受診する必要はありません。
自宅で、電解質を含んだスポーツドリンクを飲むだけでも、効果は十分に得られます。
これを経口補水療法と呼びます。
最近では、この経口補水療法のために作られた市販の飲料物もありますので、試してみてください。
ただし、ミネラルウォーターやジュースを飲みすぎてはいけません。
ミネラルウォーターは電解質が含まれているため、低ナトリウム血症などの電解質異常をきたすことがあります。
電解質異常が起こると、意識障害や低血圧を引き起こしてしまうため、注意が必要です。
ジュースは糖分が多く入っているものの、同じく電解質があまり含まれていないので、飲ませすぎると電解質異常をきたす場合があります。
併せて注意してください。
とはいえ、嘔吐や下痢の回数があまりにも多い場合には経口補水療法では対応できないこともあります。
水分摂取が困難になるようであれば、病院へ受診をしてください。
数日間の入院が必要になる場合もあります。
一方、サルモネラ菌や出血性大腸菌のような、原因がはっきりしている感染性胃腸炎の場合は、病院での積極的な治療が必要です。
原因が細菌ですので、抗生物質を使用します。
その他はウイルス性腸炎と同じで、脱水にならないように点滴などで水分管理を行います。
急性胃腸炎の合併症
医療体制の充実している日本では、急性胃腸炎で命を落とすことも、何か重篤な合併症を起こすことはありません。
数日で快方に向かっていくので、それまでじっと耐えてください。
ただし、急性胃腸炎で下痢をしているときには、市販の下痢止めを飲んではいけません。
体内に入った病原体を外へ出すために下痢をしているので、それを止めることは体内に病原体もとどめてしまいます。
回復が遅れるばかりか、重篤な状態に陥る可能性もあるため、注意してください。
まとめ
急性胃腸炎の症状はつらいですが、一過性のものです。
胃腸炎の方が移動することで、他の人に胃腸炎を移す可能性があるので、他人との接触は極力控え、自宅で安静にしつつ、早めに病院を受診しましょう。
■参考
*1(参考)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症