当院代表佐藤俊彦のコラム ~免疫放射線治療(Immuno-Radiotherapy)に関して~
免疫放射線治療(Immuno-Radiotherapy)に関して
宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦
秋も深まってきましたが、皆様にはお元気でご活躍のことと存じます。
当院は、2018年よりサイバーナイフ&トモセラピーを導入して、免疫放射線治療を行って参りました。この度、医用画像専門誌「映像情報メディカル」からの依頼で、総説として「放射線治療×免疫療法」についてまとめ、2020年10月号として発売されましたので、是非ご一読いただければ幸いです。
わたしが京都大学の本庶先生の講演を聴いたのは、2015年にワシントンで開かれた免疫学のシンポジウムの時でした。免疫を抑制するシグナルをブロックすれば免疫活性が上がるという理論で、免疫寛容のメカニズムを理解すれば、その逆を利用して治療に使えるというものです。このアブスコパル効果を効率よく発現することができるのが放射線治療であり、特にhypofructionation(寡分割照射)で、high dose(高線量)のものということです。これは病変だけをピンポイントで照射できることが条件であり、重粒子線治療でも、陽子線治療でもなく、サイバーナイフが最適の装置ということになります。
オリゴメタスタシス(5個以下の転移病変)の症例では、2020年4月の診療報酬改正で、放射線照射が保険適応になりました。これは放射線治療を実施した方が、延命効果に有意差を認めることができたからです。つまり、これもアブスコパル効果なのです。この際に免疫チェックポイント阻害剤を併用すれば、完治する例も経験しています。
また、免疫チェックポイント阻害剤は、MHCという抗原で覆われた約70%の癌細胞には効きにくいため、BAK療法などの自然免疫応答系の免疫細胞療法や、自然免疫応答系も特異的免疫応答系も活性化するNKT細胞療法との併用が有効です。これらの免疫細胞療法は基本的には自由診療となるため、放射線治療も自費診療になってしまいます。(免疫チェックポイント阻害剤は保険診療になるので、これとの組み合わせがファーストチョイスです。)
“転移があるから化学療法しかない”時代から、“転移があるのでImmuno-Radiotherapyを選択する”時代が来ている、と私は考えています。現代の標準治療をやりました、効きませんでした、なので、がん難民になるか?ホスピスへ行くのか?そういう医療自体が、時代遅れであると考えます。
ぜひ、ご一読ください。
(映像情報メディカル 2020年10月号【特集】放射線治療システムの進展)
▽ダウンロードは、こちら
http://ucc.or.jp/wp-content/uploads/2020/10/くわしくはこちら.pdf
< 還暦を迎えて >
みなさまのおかげで、9月17日還暦を祝うことができました。30歳で甲状腺癌になり、甲状腺全摘をして、その後の副甲状腺機能低下症に苦しみながら、再発や転移への恐怖を味わいつつ、最初の10年はドクターネットと宇都宮セントラルクリニックの経営に邁進してきましたが、30年経過して、興した会社を一つずつ卒業させる出口戦略を考えているところです。2010年にM&Aで売却したドクターネットは、2019年にJMDCの子会社として上場を果たしました。2017年に宇都宮セントラルクリニック&メディカル倶楽部のCMCは、オリックスグループに入り、今後人生100年時代のヘルスケア改革に向けた事業戦略を実践する場として準備中です。新しい人材をオリックス本社から投入してもらい、大きく育てていくつもりですので、今後ともご支援のほど、よろしくお願いします。