【再掲】去勢抵抗性前立腺癌のLu-PSMA治療に関して(続報)
去勢抵抗性前立腺癌のLu-PSMA治療に関して(続報)
宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦
前回のメルマガでも、ご報告しましたとおり、前立腺癌は、ホルモン治療を実施するのですが、これに抵抗してがんが増殖するものを、去勢抵抗性前立腺癌と言います。
この場合は、抗がん剤を投与するしかありませんが、抗がん剤の投与により反応するのは30%程度で、1年以内に死亡するケースがほとんどです。
これに対して、外照射で放射線治療を実施することも、初期には可能ですが、広範囲に転移巣が広がると、放射線による外照射では治療が困難です。
そこで登場するのが、内用療法という治療法です。
これは癌細胞がもっているPSMAというタンパクに対して、特異抗体を準備します。そこにGaを標識してPETを撮影することで、まずは癌細胞にPSMAが存在することを確認します。前立腺癌の中には、この物質が存在しない細胞(神経内分泌腫瘍:NET)に変化するものも報告されており、DOTATATEを用いたPETを実施することで診断も可能です。したがって、Ga-PSMAで陽性であることを確認して、Lu―PSMAを投与し、組織内からβ線照射を開始します。
これは治療前(下段)と治療後(上段)の比較ですが、たった1回のLu-PSMA投与で腫瘍サイズが縮小していることがわかります。これにより、腫瘍溶解症候群が発生し、一過性にPSAの急上昇をもたらし、その後急速にPSAが低下しました。
腫瘍溶解症候群による体調不良がありましたが、すぐに回復されています。
注目点は、両側の耳下腺に集積していることです。つまり、唾液腺も放射線照射されてしまうので、治療中の冷却が必須です。
これは、患者さんの血中PSAの値ですが、一過性に上昇後に急減していることがわかります。2回目のLu-PSMAを実施しましたが、2回目の副作用は軽微のようです。
このあとの治療としては、Immuno-Radiationtherapyが重要になります。
https://www.cancerit.jp/62230.html
前立腺癌は、免疫治療が効かない”冷たいがん”として有名ですが、これにニボルマブとイピリブマブを併用することで有効と報告されています。
これは、当院のケースですが、去勢抵抗性になり、抗がん剤を実施していましたがだめな患者さんにBAK療法を実施したケースです。PET画像では、CRになっていることがわかります。
したがって、放射線内照射のあとに何らかの免疫治療が有効であると考えます。
当院では、ブルツブルグ大学の福島先生と共同で、これらの患者さんのアウトバウンドのご支援をしております。
当院の遠隔医療システムを使えば、全国からお問い合わせが可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
https://ucc.or.jp/telemedicine/
今後、去勢抵抗性前立腺癌に関しては、患者さんの急増が予測されています。しかし、国内では、診断目的のGa-PSMA検査や治療目的のLu-PSMAの体制が未整備の状況です。
前立腺癌の患者さんは、比較的全身状態がいい患者さんが多いので、渡航に関しても、十分に耐えられる患者さんが多いので、このシステムを積極的に押し進めるつもりです。
近い将来に、日本でもこの治療はポピュラーになってくると思いますが、まずは、患者さんと一緒に勉強していこうと考えております。
暑い毎日が続きますが、ますますのご健勝を御祈念いたします。
今後とも、当院へのご支援のほど、よろしくお願いします。