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アメリカのCCRC見学に関して・・・

宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦

梅雨らしくない日が続き、本格的な夏を迎えようとしているこの頃ですが、皆様お元気でお過ごしのことと思います。
私は、7月19日から27日まで、ボストンとニューヨークのCCRC(Continuing Care Retirement Community)の見学ツアーに参加してきました。
私自身、介護保険に関する事業には、消極的な考えだったのですが、恩人からどうしても地方の名門ホテルの再生事業プランをお願いしたいと依頼があり、今回の見学ツアーでそのヒントを得たいと参加に至った訳です。
皆さんご存知でしたか?実は、米国には、介護保険そのものの制度がありません。
したがって、75歳ぐらいになると、元気なうちにCCRCに入居(Independent living)して、やがて来る身体や認知機能の衰えを迎えた頃には、Assisted Livingへ転居、そして終の住まいとしてSkilled Nursing homeへとその入居形態を移行していくのです。そしてこの老いと共に変化していく場所は、同じコミュニテイの中にあり、そこで生を完結しようというものです。
日本の介護保険では、自宅からサービス付き高齢者住宅、有料老人ホーム、特別養護老人ホームへと別施設へ移っていく現状があります。米国では、寄付に対する税控除などの制度などのバックアップが充実していますので、これら施設の建設には、宗教団体や政府による寄付が大きな役割を果たします。また、大学のキャンパスを改修してCCRCにすることで、学生さんたちのボランテイアを受けることが可能になるものなど、いろいろな施設を見学することができました。そこで私が、最も印象に残っているのは、NORTH HILLと言う施設です。
http://www.northhill.org/sophisticated-active-adult-apartments-Boston#.V4FLmfmLR3g

ここは、大学のキャンパスを改修した施設で、285室のIndependent Living、36室のAssisted Living、36部屋のSkilled Nursing homeを持つ巨大な施設です。ホテルの一室を借りるような感覚で、80歳くらいで移り住んでくる方が多いようです。入居金は、3600-12000万円くらい、死亡時には90%返還されます。月額利用料は、45-85万円+αとなっています。このほかのメディケアは、老人の医療保険でしかまかなえないので、長期介護が必要になったときのために、民間の介護保険に入ることが可能です。短期リハビリ、認知症サポート、終末期ケア、必要なすべてのサービスを自宅で受けることが可能な保険にも加入できます。費用は、入居時に280-680万円、月額5万円で、フィットネスクラブ利用料(3600円)が義務づけられています。これは、日本で言う高級老人ホームに相当する施設と考えていいのですが、この施設では外部からのレストラン利用や各種リクレーションの開催などで、地域コミュニテイとの交流プログラムが用意されており、日本の高級老人ホームのような老人だけのコミュニイではなく、非常にオープンな施設であることが印象的でした。
日本版CCRCは、東京で今後あふれる老人を地方のCCRCが受け入れをするものですが、多くは非常に交通の便が悪い田舎にあるために、どうしても孤立しやすい環境にあり、オープンなコミュニテイとはかなりかけ離れたもので、そのほとんどが失敗しています。
一方で、地方の老舗ホテルは、地方都市の一等地にあり、そこがCCRCに業態転換すれば、地方のお客様だけでなく、東京からも十分にお客を呼び込むポテンシャルがあると考えます。
介護事業は、超アナログで雇用も必要な事業です。介護保険+自費介護を組み合わせることで、大きなポテンシャルを持つビジネスモデルになると思いますし、さらにそこに医療機関と連携させることが非常に重要になってくると思われます。
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CCRC見学後は、ロチェスター大学の大学発ベンチャーKoning社を訪ね、世界で初めてのBreast CTの日本導入に関して、打ち合わせをしてきました。1年ほど、Koning社とは、いろいろ交流を重ねてきましたが、内容のすばらしさだけでなく、開発者のNing先生、そのまわりのビジネスマンたちはいずれも、元は大手医療機器メーカーの国内・海外担当者がそろっており、業界ビジネスのスペシャリストで、小さいながらもすばらしい会社でした。Small rich companyを地でいっている会社だと思います。
では、Breast CTの説明を少ししましょう。従来のマンモグラフィは、挟んだ乳房の部分しか写らないため、実は画像上、見えない部分が多かったのですが、Breast CTでは、挟む必要がない分、痛みもなく、こうしたブラインドも全くない真の3D画像を取得できます。したがって、これまでのように技師のスキルを問わず、かつ読影のミスもなくなるわけです。また、乳房撮影の時に、放射線が健常臓器(甲状腺や腹部など)にどうしてもひばくする訳ですが、それも全くない設計になっています。
本機はコンパクトで、電源要件も緩和されたVersion1.5も開発され、ますます日本市場に有利な状況になっています。
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価格は、まだ高いのですが、すべてのマンモグラフィがこれに置き換わるポテンシャルを持っていると思われます。
当院に来られている獨協医大の伊藤講師は、すばらしい画質で、ファーストチョイスに使える、検診から精密検査、生検まですべてにわたって有効だ。”と評価していました。
是非とも、厚生省の薬事申請をトライし、当院で導入し、学会発表を通じて女性死亡原因1位である乳がんとその検診に向き合いたいと考えています。尚、導入については年内を目指して、準備していく予定ですが、詳細が決まりましたら、改めてご報告させていただきます。
最近の乳腺外来は、超繁忙期に入ってきて、予約などにおいてご迷惑をおかけしておりますが、何かご不便なことがあれば、何なりとお申し付けください。
また、緊急な検査はいつでも対応させていただきます。

最後に認知症のお話を少しします。わたしは9月には、イギリスの認知症ケアの施設見学に行く予定です。
認知症は、画像診断の一つのテーマで、“ボケは止められる”で書いたとおりなのですが、先日も、セカンドオピニオンに来られた患者さんが、アルツハイマーの治験を受けているのだが、効果がない偽薬であればその間に症状が進行してしまう可能性があるため、正確に診断した上で治験か治療かを開始したいという相談でした。この方は、既に某大学病院で、アミロイドプラークのPETを実施していて、アルツハイマーという診断でしたので、当院ではFDG―PETを実施しようということになりました。
FDG―PETの結果においても、海馬型の典型的なアルツハイマー病であると説明したところ、その方は治験をおりて、すぐに治療を開始するという選択肢を選ばれました。パートナーがいれば、まともな選択ができるわけですが、なかなか独居だと難しい問題とも感じました。
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9C%E3%82%B1%E3%81%AF%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B-%E4%BD%90%E8%97%A4-%E4%BF%8A%E5%BD%A6/dp/4434198971
今後、認知症の画像診断と遺伝子治療は、医療や皆さんの人生にとって基軸になってくると思われます。

では、来月も、メルマガでお目にかかれるのを楽しみにしております。




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