富士フイルム 古森会長 ”本業を培養する”
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宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦
すっかり秋らしくなって参りましたが、皆様お元気でお過ごしのことと思います。
栄枯盛衰は、世の常ですが、DPEというビジネス、すっかり消滅してしまいましたね。
みなさん、スマホやデジカメで写真を撮るので、クリーニング屋さんとか、たばこ屋さんがDPEをやっていたことを知らない若者もいるようです。
Development Printing Enlargementの略で、写真をプリントアウトしていた時代に存在したサービスです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/DPE
私が売却したドクターネットは、ノーリツ鋼機というDPE機器大手にM&Aで購入いただきました。ノーリツ鋼機は、DPE機器をコダックや富士フイルム、コニカにもOEMしておりましたので、いわばこの業界で世界を制した和歌山の優良企業であったわけです。しかし、デジカメの登場により、即死に至るわけですが、事業再生に挑戦した西本社長が目をつけたのが、医療・農業・本業(製造業)でした。そして、医療部門のM&A案件第一号が、ドクターネットだったのです。
いまも、放射線科医は不足していますので、この業態は全く減速することなく、大学系遠隔診断の会社が苦戦する中、順調に業績を伸ばしております。
私も、昔の部下たちが、幸せに働いていけることをノーリツ鋼機さんの経営陣の皆さんに大変感謝しております。
一方で、富士フイルムも、実は同じ目に遭っています。古森会長は、お会いしたことはありませんが、なかなかすばらしいビジネス感覚の持ち主で、本当に人材豊富なんだと感心しています。富士フイルムと言えば、半分を富士ゼロックスが稼いでいますが、イメージング事業が後退する中、ヘルスケアを1兆円産業にすると言うことで、再生医療・医薬品や医療機器の開発をどんどん行っています。
古森会長の功績は、フィルム技術を液晶ディスプレーに使う偏光板の保護フィルムに乗り出したことで、世界シェアの70%を握ったことにあります。その資金で、買収を広げていくわけですが、写真技術でこれまで蓄えてきた数々の技術をiPS細胞ベンチャーのCDIに提供し、そして買収してしまう。終いには、本家本元の京都大学を抜いてしまう。
その先には、細胞バンク・創薬支援・再生医療など、100兆円ビジネスへと続くわけです。
動物実験も不要になり、業界全体が変わる、つまり、富士フイルムにお金が流れる?構造が・・・
松田聖子のコマーシャルで有名な、アスタリフトは、フィルムに使うコラーゲン技術と抗酸化技術を組み合わせたもので、女子社員が強制的に買わされたとか?都市伝説がありますが、使ってみるとリピーターが多いようです。
また、エボラ出血熱の唯一の薬剤と言われている”アビガン”は、富山化学を買収したたまものです。本当に優れた経営者の方の取り組みは、勉強になります。
というわけで、今月は、北欧の100年企業を巡るツアーに参加させていただき、いろいろ感じるところをフェイスブックにUpしましたので、ぜひ、見ていただければ幸いです。
その1
デンマークで最も古い特別養護老人ホームを視察しました。
独立採算制で運営していますが、63億円の予算で建物を115年ぶりに立て替えており、非常に綺麗な施設で、外部からのレストランの利用なども受け入れ、入居者を鍵をかけて幽閉することもなく、開放感ある感じでした。
120名の入居者を165人のスタッフでケアしており、居宅も48M2とかなり広く、夫婦でもそれぞれに法律で1室を提供されていました。(一緒でないところがいい。)
87%は認知症で、徘徊などもあるので、GPSのペンダントをぶら下げていましたが、基本的には施設に柵もなく、誰でも入れる感じです。
市が、入居が必要と判断した老人は、2ヶ月以内に入居できるような体制を実施しており、入居金80万円と月額26万円(年間300万円)を支払えば、死ぬまでいられるわけです。年間の施設運営費用は、約1000万円なので、不足分は市から補填されるそうです。
入居者の部屋を訪ねると、101歳の男性が、ここのケアは素晴らしい。女性がたくさんいるので、どの女性とも仲良くして、特定の人を付き合わないことがトラブル回避に重要だ。食事の時は、複数の女性と一緒にお相手する。ことが長寿の秘訣らしいです。
人生の達人のお言葉に、いたく感銘を受けました。
http://holmegaardsparken.dk/for-beboere.html
その2
124年続く、フィンランドのチョコレートメーカーのFAZERの工場に行ってきました。
彼らの日本に対する戦略は、1)confectionary industry2)ムーミンブランドの国内ブランド3)フィンエアー以外のエアライン向けのカタログ販売の3通りです。
特に興味を持ったのは、1)confectionary industryで、僕らが美味しいと思って食べているグリコアーモンドチョコレートは、実はFAZERの原料で作られていたわけです。他に、明治、ロッテ、Mary’s、Yoku Mokuも同じ原料を使っている。どおりでうまいわけです。124年続くレベルの味なわけです。
フィンランド人は、日本人が味噌汁を恋しいと思うように、子供の頃から食べているFAZERのチョコレートを食べたくなるそうです。
ご存知のように、チョコレートの原料となるカカオは、シエナレオネで発生したエボラ出血熱で出荷停止となり、カカオの相場が一桁違った高騰をみました。チョコレートメーカーにとっては死活問題のはず・・・
どうやって、ヘッジしているのか?聞いてみたら、この会社の最大部門は、調達部門だそうです。日本ではバターが供給不足ですが、カカオ以外に生乳の調達や砂糖の調達は死活問題で、調達部門が最も重要な部門らしいです。
しかも、日本のチョコレートメーカーは、どうして?FAZERの原料を使うのか?と質問すると、アリバカカオを使っているからということで、”神様の食べ物”といわれ、王様への献上品だったそうです。カカオ品種の2%しか生産されておらず、にわかに参入してくるような会社は入手できないらしいです。ここでもカカオ利権の国際ネットワークができているんでしょうね。
日本は、そういえばカカオの取れる赤道直下で、植民地を持っていなかった。。。
また、日本ではベルギーチョコレートのゴディバが超有名ですが、本場ベルギーでは、ノイハウスが王室御用達です。以前は、薬剤師がカカオを管理していたので、簡単にはチョコレートを作ることはできなかったとか?
日本で唯一のノイハウス銀座店は、7月31日を持って閉店し、事実上日本から撤退しました。これもゴディバのブランディング戦略に対する敗北というところでしょうか?
FAZERの1)confectionary industry戦略は、ブランディング戦略にお金と時間をかけずに勝負する方法として、中小企業経営者には有用な譲歩王と思いました。
http://www.fazer.com/fazer-since-1891/
その3
SILIA LINEでヘルシンキから、ストックホルムに向かっています。
約2000人が乗船しているということですが、ダブルベッドルームで、シャワーも湯量も豊富でまずまず満足な船旅です。
お店が終わるのが早すぎで、ちょっと寂しいですが、冷蔵庫の飲み物が全て無料ということなので、ゆっくりやっつけながら、船旅を満足することにします。
インターネットは、快適ではありませんが使えますし、暇つぶしには最適なので、朝までゆっくり約19時間の船旅です。
本日は、365年続く、FISKARSという会社を訪問しました。
この会社、フィンランドのルイヴィトンと言われておりまして、元々は鉄の家庭用製品を作っていた会社ですが、2013年にRoyal copenhargen今年に入って、waterford,wedge wood,Royal doulton,Royal albertを買収し、全ての競合企業を買収しちゃう勢いの会社です。
主には、斧やハサミなどの鉄製品、家の中で必要なLiving products、そしてoutdoor productsを生産し、複数のブランドを買収することで、客がどのセグメントの商品を買いに来ても、自社製品が売れる仕組みづくりです。
完全にコモディティ化した商品であるため、価格・デザイン性くらいしか競争力がないので、全部買収しちゃおうという感じです。
それにしても、この単純明快な戦略を、これほど大胆に進めてしまうことが、365年生き延びてきた会社が所以です。
工場跡地には、芸術家の工房と芸術大学・専門学校を自社向けに開校し、若いデザイナーの育成にも余念がありません。
ぼくには、芸術的センスがありませんが、なかなか面白い作品を展示していました。いずれも、一点ものという作品で、この試作品のなかから、ヒット商品がきっと生まれるんでしょうね。
北欧の100年企業、感服しました。
http://www.fiskars.fi/?gclid=CLHAgImk7ccCFaINcwod21sCBg
これらの企業は、ファミリーでやっているところもありますが、やはり有能な後継者がいるということなんですね!ポイントは!
ということで、シリア難民が今問題になっていますが、移民受け入れは重要なことだと考えます。
雑種第一世代が、最も有能な能力を発揮すると遺伝学的にはいわれています。
経済を回復させるには、戦争・自然災害・画期的イノベーションしかないといわれますが、画期的なイノベーションを生み出す企業、もうひとがんばりしたいと思います。