胃がん
胃がんとは
胃がんは、胃の粘膜から発生する悪性腫瘍の総称で、世界的に見ても東南アジア諸国で多く診断されているがんです。
厚生労働省の集計では、がんによる死亡原因として男性で2位、女性で4位に位置しています。
胃全体は
- 胃食道接合部
- 胃体上部
- 胃体中部
- 胃体下部
の4つの部位に分けられ、アジア諸国では胃の出口に近い胃体中部から胃体下部にかけて胃がんが多く発生していました。
欧米では、胃の入り口である胃食道接合部や胃体上部に胃がんが発生していましたが、近年アジア諸国でもこの胃食道接合部に出来る胃がんが増えつつあります。
その一方、従来見られていた胃の出口に近い部位に発生する胃がんは世界的にみても減少傾向にあります。
胃がんの症状
早期がんでは何らかの症状を自覚することはほとんどなく、健康診断などの機会で受けた胃内視鏡検査でたまたま発見されることが多いです。
進行がんとなっても胃がん特有の症状が出ることはありませんが、
- 心窩部不快感
- 食欲低下
- 体重減少
など、漠然とした症状のことが多いです。
胃食道接合部に出来た胃がん(胃食道接合部がん)では、食事の通りにくさや胸やけを訴えることがあります。
胃がんの原因
日本を含めたアジア諸国ではもともと胃がんは多く、進行がんで発見されることがほとんどでした。
現在でも、東南アジア諸国では進行がんの割合が高いと言われています。
当初は胃潰瘍が進むと胃がんに変化すると信じられてきましたが、1994年に世界保健機関(WHO)から、ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)が胃がんの原因となると認定されました。
その後、様々な実験により、ピロリ菌だけが感染したことで胃がんになることが証明されています。
また、胃がんとなった方の約95%はピロリ菌に感染しており、逆にピロリ菌に感染していない方はほとんど胃がんになっていないことも判明しました。
その他にも胃酸分泌過多、塩分の過剰摂取、ストレスなど様々な環境因子が胃がんを発生させると言われていますが、ピロリ菌の感染ほど強い因果関係を示しているものはありません。
また、最近日本でも増えつつある胃食道接合部がんは、逆流性食道炎や食生活の欧米化が原因と言われており、これまで日本で見られていた胃がんの発生原因とは大きく異なっていることに注意が必要です。
胃がんが悪化すると・・・
進行がんが悪化すると、
- 腫瘍からの出血による吐血
- 黒色便
- ふらつき
など、貧血に伴う症状が出ます。
胃の出口に進行がんが出来ると、胃から十二指腸への胃液などの排出ができないため、腹部膨満感や嘔吐を繰り返すようになります。
さらに進行すると、みぞおちあたりに硬い腫瘤を触れたり、腹水がたまることもあります。
胃がんの治療
ピロリ菌の感染が胃がんの原因と認められて以来、ピロリ菌の除菌が保険診療で受けられるようになりました。
その効果もあってか、日本における胃がんの新規発生数は減少傾向にあります。
あと30年もすると、胃がんで亡くなる方はかなり少なくなるかもしれません。
また、健診での胃内視鏡検査が普及したことにより、より早期のうちに胃がんが発見されるようにもなってきています。
当然のことながら、早期で発見された方が治癒する可能性は高くなります。
胃がんの治療は、早期がんか進行がん(遠隔転移の有無を含む)であるかにより大きく変わってきます。
がんの進行度による治療方針:早期がんの場合
胃の粘膜までにとどまっている早期がんであれば、胃内視鏡を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dessection: ESD)か、胃を切除する外科手術で治癒を目指すことができます。
がんの進行度による治療方針:進行がんの場合
進行がんの場合では、まず外科手術の適応となるか判断するため、CTなどを用いて全身を調べます。
もしすでに遠隔転移が認められている場合は、抗がん剤を中心とした治療が行われます。
上記の進行度に加え、胃のどの場所にがんが発生したかによって、手術で胃を残せるかどうかが決まってきます。
まとめ
日本において胃がんは減少傾向にあるとはいえ、未だがんによる死亡原因の上位を占めています。
健診などの機会があれば、胃内視鏡検査を積極的に受けてみましょう。
治療は消化器内科医や消化器外科医が行いますが、進行度によって治療法が変わります。
両者が綿密な連携を取れている消化器病センターを有する施設での検査が望まれます。