代表的な症状

便秘大腸憩室炎

 

 
憩室(けいしつ)とは、胃や腸のような消化管の壁の一部が袋状に飛び出したものの総称です。
この憩室が多発する場合を憩室症と言います。
憩室の発生場所として最も多いのが大腸で、大腸に発生した憩室を大腸憩室と呼びます。

憩室は腸の内側から外側に向けて飛び出すため、便の通る内側には小さな穴が空いています。
そこに便秘で便が詰まると炎症を起こすようになり、便秘大腸憩室炎を起こします。

 
憩室があるだけでは全く症状はなく、健康診断などの機会に受けた大腸内視鏡検査でたまたま見つかることがほとんどです。
大腸憩室で出る可能性のある症状は、憩室炎と憩室出血です。
憩室炎の場合には、発熱や炎症が起こった場所での腹痛を自覚し、憩室出血の場合では突然の下血が見られます。

憩室炎は40~50歳代の中年男性に多く、診断が遅れ症状が重くなってから受診することも、しばしばあります。

また、これらの症状以外に、腹部膨満感など漠然とした症状が持続することもあると言われています。

 
大腸憩室は「西欧文化の病」とも言われ、もともとは欧米諸国やオーストラリアなどに多くアジア圏やアフリカには少ないとされてきました。
しかし、生活習慣や食習慣の欧米化に伴い、日本を含めたアジア圏での患者数は増加しています。
加えて、憩室炎や憩室出血などの合併症も増加してきており、注意が必要な疾患の一つと見られています。

大腸憩室が生じる原因としては、繊維分の少ない食品の摂取に伴い腸の蠕動が亢進し、大腸の壁に無理な圧力がかかってしまい袋状に飛び出す、と考えられていました。
加えて同一家系内で発生することもあり、一つの理由で発生するのではなく、様々な要因が複雑に絡み合うことで発生すると言われるようになりました。

大腸憩室を有する頻度は、40歳代では10%以下ですが、80歳を超えると約70%が有するようになります。

憩室炎を発症する危険因子としては、

 

  • 内臓脂肪型肥満
  • 鎮痛薬の乱用
  • 免疫抑制剤の使用
  • 便秘症

などが言われていますが、これらの原因を予防したからと言って発症を抑えることはできません。
というのも、これらの危険因子は憩室炎を引き起こす可能性が高そうだと見込まれているだけで、結局のところ憩室炎を引き起こす確定的な原因は存在しないからです。

 
大腸憩室炎を治療せずにいると、最初は大腸だけにとどまっていた炎症がお腹全体に広がり、腹膜炎という状態を呈するようになります。

さらに症状が進行すると、憩室はもともと大腸が袋状に飛び出した脆弱な場所なので、炎症の影響を受け腸自体が破け、腸管穿孔という状態になります。
腸管穿孔まで至ってしまうと、高い確率で緊急の処置が必要になります。

 
軽度の憩室炎やそれに伴う腹膜炎までであれば、食事をせずに点滴や抗生物質の投与を受ける保存的治療で対応できます。
しかし、ひとたび腸管穿孔を来してしまうと、ほとんどの場合で緊急手術が必要となります。

もし緊急手術が必要になった場合は、その穴の開いた腸を切除するだけでなく、状況次第では一時的な人工肛門を作る必要が出てくるなど、かなり体に負担をかける治療を受けなくてはなりません。

 
大腸憩室炎は現代病と言ってもよく、誰しもが経験する可能性のある病気です。
憩室炎もその程度次第では治療方法が大きく変わってきますので、発熱に腹痛を伴う場合は、軽く考えずに医療機関を受診するよう心がけましょう。

憩室炎の治療はほとんどの場合で消化器内科医が担当しますが、経過中に手術が必要となる場合もあり、消化器内科医と外科医の両方が在籍する施設への受診を考えてみてください。