代表的な症状

肝硬変

 

 
肝臓は様々な原因により、毎日のように何らかの障害を受けています。
しかし大抵の場合はその障害は一過性であり、かつ肝臓の細胞は再生機能があるため特に治療をすることなく自然と治癒することが多いです。

しかし、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性肝障害など持続的に肝臓への障害が続く場合には、肝臓の細胞の再生にも支障が生じ、徐々に線維化を起こし肝臓そのものは硬くなっていきます。
この状態となった肝臓のことを硬変肝と呼び、この硬変肝のために何らかの症状が出始めたときに初めて肝硬変と呼ばれるようになります。

肝硬変となる原因も様々で、かつ出て来る症状も多岐に渡ります。
ここでは、肝硬変で出るであろう代表的な症状に関して説明します。

 
肝硬変は何十年いう長い年月をかけ、徐々に進行します。
そのため、初期の頃は何も症状がありません。この状態を代償性肝硬変と呼びます。
代償性というのは、まだ残っている肝臓でかろうじて正常は働きができている状態のことです。

一方で、正常な働きができなくなってしまった状態を非代償性肝硬変と呼びます。
この状態になると、自覚症状としては

 

  • 全身倦怠感
  • 易疲労感
  • 食欲不振
  • 性欲減退

などの漠然とした症状に加え、

 

  • 手足のむくみ
  • お腹に水がたまる(腹水)ことによる腹部膨満感
  • 皮膚の掻痒感

などが出ます。

その他、肝硬変の合併症として、

 

  • 感染症に弱くなる
  • 食道静脈瘤
  • 低栄養状態

など、徐々に末期の症状が出現し始めます。

 
肝硬変を起こす原因は、

 

  • C型ウイルス性肝炎
  • B型ウイルス性肝炎
  • アルコール性肝障害

の順に多く、これら3つで肝硬変となる原因の約90%を占めます。
近年では肝炎ウイルスの治療が進歩したことによりC型およびB型ウイルス性肝炎が減少し、肝硬変となる割合が減っています。

その代わり、アルコール性肝障害や、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)による肝障害から肝硬変へと至る方が徐々に増えてきています。
これらは生活習慣病と密接に関連しており、国を上げて対策が取られています。

 
肝硬変の最も重要な合併症は、肝細胞がんです。
日本において発生した肝細胞がんの90%以上は、ウイルス性肝炎による肝硬変を背景としています。

全国的な調査では、肝硬変に合併した肝細胞がんの割合は、C型が73%と最も高く、B型も合わせると89%と高くなっています。
ウイルス性肝硬変では肝細胞がんの合併率が高く、最も多い死因であるため、肝硬変の方は定期的な検査を受けることが推奨されています。

その他には、

 

  • 肝硬変による食道静脈瘤
  • 肝性脳症
  • 腹水の貯留

などがあります。
さらに、肝臓の機能が著しく低下することにより肝不全を発症し、黄疸や意識障害を呈するようになります。

 
肝硬変の治療は、以下のような状況を加味して治療法を検討します。

 

  • 肝硬変の原因となった疾患は何か
  • 肝硬変の状態が代償期か非代償期か
  • 併存する各種合併症の有無

例えばC型肝炎ウイルスによる代償期の肝硬変では、インターフェロンなどの薬剤を用いたウイルス性肝炎の治療が主体となります。
その目的は肝炎ウイルスによる持続的な障害を沈静化させ、肝臓の再生を助けることにあります。

その一方で非代償期肝硬変となった場合は、併存する合併症に対する治療や低栄養状態の改善を行います。
末期肝不全状態では生体肝移植も選択肢に入りますが、肝炎ウイルスに再感染したり、拒絶反応の問題があるなど、簡単ではありません。

 
肝硬変は、可能な限り末期肝不全にならないよう普段から気を付けて治療をしなければなりません。
治療は十年単位での長期間に渡りますので、根気よく治療を受けましょう。
肝炎ウイルスが原因の肝硬変であれば、肝炎ウイルスに対する治療も行わなければならないため、ウイルス性肝炎を専門とする消化器内科医の治療を受けることが望まれます。