代表的な症状

最近、息切れや足のむくみ、全身のだるさはありませんか?
もしかしたら心臓の元気がなくなり、「心不全」の状態になっているかもしれません。

 

心不全に一度なってしまうと、体を満足に動かせなくなったり、日常生活にも大きな支障をきたすようになります。

 

ここでは、心不全を引き起こす病気、心不全の治療法、日常生活での注意点に関して説明します。

 
宇都宮市の心不全の治療

 

 

重さがわずか300gの心臓は、1日10万回、一生の間には30億回拍動し、毎日20万トン以上の血液を全身に送り届けます。
そして全身を巡った血液を回収し、再び全身に送り届けます。
しかし様々な心臓の病気が原因で、このような働きができなくなることがあります。
そのような状態を「心不全」といいます。
実は、心不全は特定の病気ではなく、状態を表していることに注意が必要です。
つまり心不全を治すのではなく、心不全の原因となっている病気を治さなければなりません。

 

心不全の症状は、「血液を送り出せないことによる症状」と、その結果「再度血液が回収できないことによる症状」の組み合わせで起こります。

呼吸困難・息苦しさは、血液を送り出せないことによる症状です。
軽いものから並べると、次のようになります。

 

  • 労作時呼吸困難
  • 発作性夜間呼吸困難
  • 起坐呼吸
  • 肺水腫

このうち肺水腫は、「陸にいながら溺れてしまう」と表現されるほど、かなり重篤な呼吸困難症状です。
 

  • 呼吸困難による運動能力低下
  • 心臓から血液が全身に送り出せないため、体を動かせなくなる

といった、両方の原因で運動量が低下します。
動けないとますます筋力が落ち、運動能力が低下するので、ベッドから起き上がることも難しくなってしまいます。

心臓から血液が送り出せないため、全身のむくみを来します。
その結果、胃腸などもむくみ、食欲不振や吐き気、嘔吐などの症状も出ます。
また
 

  • 不安
  • 記憶障害
  • 悪夢

といった、精神状態に影響を及ぼすこともあります。

 

心不全を起こす原因は、次のように多岐にわたります。

 

  • 急性心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患
  • 心筋症
  • 心筋炎
  • 不整脈(心房細動、心室頻拍など)
  • 弁膜症
  • 先天性心疾患 など

 

また、このような原因に加え、
 

  • 水分の取りすぎによる体液量の増加
  • 肺炎などによる呼吸への負担増加
  • ストレス

なども原因となります。

 

心不全としての合併症は特にありませんが、心機能低下が著しい場合には、補助人工心臓や心臓移植という選択肢も出てきます。
ただ、人工心臓は適応に年齢制限があります。
また、心臓移植に関しては様々な問題があるため、万人が受けられる治療ではありません。

 

心不全の治療は、大きく分けて「急激に症状が悪化した急性心不全」か、「もともと心不全であった方の症状が増悪したか」の2通りで方針が変わります。

 

急性心不全の場合、まず原因の究明と診断、それに基づく救急医療が必要となります。

 

 
心不全の症状で最も早く起こるのが、吸困難です。
体内の酸素濃度が低ければ、酸素マスクでの酸素投与を開始します。
それでも酸素濃度が不十分であれば、人工呼吸器を用いた酸素療法が行われます。

 

 
呼吸困難感が強い時は、医療用麻薬を用いて体の負担を取ります。
そして、過剰となった水分を体外へ出すために、利尿剤を使用します。
心臓の動きが弱ければ、昇圧剤や強心剤と呼ばれる、心臓の動きをサポートする薬剤も使用します。

 

 
急性心不全では、心臓の力だけでは全身に血液を送ることができない場合もあります。
そのような時には、近年話題になっている体外式膜型人工肺(ECMO: Extracorporeal membrane oxygenation)を用いた補助を行います(*1)。

 

慢性心不全の方の症状が悪くなった場合は、

 

  • 「症状の改善」
  • 「生活の質の改善」
  • 「生命予後の改善」を目標とします。

 

 
一般治療としては安静が重要ですが、それほど呼吸困難感が強くない場合は、適度な運動が生命予後を改善するといわれています。
また、塩分制限は必須の治療です。

 

 

  • 過剰となった水分を体外へ出すための利尿剤
  • 心臓の動きをサポートする強心剤
  • 血管を広げる血管拡張薬

なども一時的に使用することがあります。
 

 
薬物療法によっても改善が得られない場合、ペースメーカーを留置して、心臓の動きをサポートすることもあります。かなり特殊な治療法のため、循環器専門医の診断・治療が必要です。

 

高血圧や糖尿病などメタボリックシンドロームを誘因とする生活習慣病が、最終的には心不全を引き起こす原因になります。そこで、

 

  • 塩分や脂肪分の多い食事に気をつける
  • 喫煙は控える
  • 日頃から体を動かすことを意識する

 

など、食事・生活習慣に気をつけていくことが大切です。
発症してから治療するのではなく、心不全を発症しないように、定期的な健康診断を受けるなど、日頃からの健康管理に気を付ける必要があります。
そこで、かかりつけクリニックへ定期的に相談することをお勧めします。
 

■参考

 

*1(参考)一般社団法人 日本呼吸療法医学会 ECMOプロジェクト