狭心症
荷物を持って歩いた時、胸が痛くなったことはありませんか?
すぐによくなったからといって、痛みがあったことを忘れてしまってはいませんか?
その痛み、実は心臓からのSOSかもしれません。
心臓は、1分間に250mlの血液を送り出し、全身へ血液を届けるポンプの役割をしています。
このポンプを動かすための栄養を送る血管が「冠動脈」です。
狭心症は、この冠動脈が狭くなってしまい、ポンプを動かすための栄養が足りなくなり痛みを起こす病気です。
ここでは、狭心症になりやすい人、狭心症になったらどうなるのか、狭心症の治療方針などを説明します。
狭心症とは?
狭心症は、冠動脈が細くなり、運動などの労作で心臓が一時的な血液(酸素)不足となることで、独特な胸の痛みが生じる病気です。
血液不足は一時的なもののため、少し休めば痛みがなくなるのが特徴です。
狭心症も急性心筋梗塞症と同様に、「冠動脈リスクファクター」と呼ばれる危険因子を持つ方に起こりやすいといわれています。
冠動脈リスクファクターには、「制御不可能なもの」と、「制御可能なもの」があります。
制御不可能な冠動脈リスクファクター
- 家族歴
- 性別
- 年齢
- 遺伝 など
制御可能なリスクファクター
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 喫煙
- 飲酒
- 運動不足
- 肥満 など
職業性ストレスや生活様式も動脈硬化の進展に関連するといわれており、狭心症は生活習慣病として考えなければなりません。
狭心症の症状
狭心症では、運動した時や興奮した時など血圧が上がるような動作をした際に、
- 「胸の圧迫感」
- 「絞扼感(こうやくかん)」
- 「焼かれる感じ」
という症状が主に出ます。
急性心筋梗塞症と同様に、みぞおちや肩、奥歯にも同様の症状が出ることがあります。
しかし痛みの持続時間は数分~10分程度で、安静にしておくことにより速やかに改善します。
また、ニトログリセリンを使用すると速やかに改善することも特徴のひとつです。
狭心症の原因
狭心症は、一時的な血液不足により心臓が酸素欠乏症になることで起こりますが、そもそもは冠動脈が細くなっていることが原因です。
冠動脈が細くなっている原因には、以下の3通りがあります。
① 器質的狭窄(器質性狭心症)
冠動脈内に動脈硬化が起こり、血管の内腔が狭くなってしまいます(狭窄※きょうさく)。
また、骨の成分のような石灰分が血管にまとわりつくことで、血管の弾力性がなくなり、相対的に血管が狭くなってしまうこともあります。
内腔の80~90%以上の狭窄(きょうさく)が出来てしまうと、血液不足が生じやすくなるため、狭心症の症状が出やすくなります。
② 冠攣縮(冠攣縮性狭心症)
冠攣縮(かんれんしゅく)とは、冠動脈が突然痙攣して細くなってしまうことで、血液が流れなくなり、狭心症を発症します。
なぜ冠動脈が突然痙攣してしまうかは分かっていませんが、動脈硬化や喫煙が影響しているのでは、と推測されています。
③ プラーク破綻と血栓性閉塞(冠血栓性狭心症・急性冠症候群)
これは動脈硬化の一種ですが、高脂血症の影響で、血管壁の中に柔らかいコレステロールの塊(粥状硬化)が出来、この塊が突然破裂することで血の塊を形成します。
その結果、血管の内腔が急激に狭くなり、冠動脈の血流が低下します。
このプラーク破綻による狭心症は特別に「不安定狭心症」と呼ばれ、急性心筋梗塞症へと発展してしまう危険性があります。
狭心症の合併症
狭心症が急性心筋梗塞症へと発展してしまった場合は、急性心筋梗塞症と同様に心機能低下、心不全、不整脈などを合併する可能性があります。
そうなった場合、日常生活への影響も出てきますので、何としても狭心症のうちに治療を継続することが勧められます。
狭心症の治療法
狭心症の治療方針は、先にご紹介した3つの分類によって違いますが、急性心筋梗塞症への発展を予防し、生命予後を改善することが一番の目標です。
①器質的狭窄(器質性狭心症)
まずは心臓の動きを抑えて安静を図ることと、冠動脈の血流を増やすことが目標となります。
薬剤を用いた内科的治療が優先されます。
それでも狭心症の症状が繰り返し出る場合は、カテーテル治療で冠動脈を広げたり、状態次第ではバイパス手術が選択されます。
②冠攣縮(冠攣縮性狭心症)
治療の原則は、冠動脈の痙攣を起こさないことです。
そのため、「カルシウム拮抗薬」と呼ばれる薬を用いた内科的治療が行われます。
内服をやめてしまうと再発することが多いため、長期間にわたって内服を続けなければいけません。
③プラーク破綻と血栓性閉塞(冠血栓性狭心症・急性冠症候群)
治療のためには原則入院が必要です。
治療は急性心筋梗塞症に準じた内容が選択されます。
まずは血をサラサラにする薬や、心臓を安静にするような薬を使いますが、冠動脈が細くなったままだと効果がないため、冠動脈を広げるカテーテル治療を行うことがあります。
細くなっている血管の場所や本数によっては、カテーテル治療では治癒しきれない場合もあるため、バイパス手術が最初に選択される場合もあります。
まとめ
狭心症は、一度発症してしまうと、自分自身だけではなく家族にも大きな影響を与えてしまいます。
狭心症を発症しないように、日頃からの健康管理には十分気をつけながら、何か気になることがあれば病院を受診するようにしてください。