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【セントラル・ドクター・インタビュー】循環器内科 瀬尾弘司先生「メタボリックシンドローム 第3回 運動療法でメタリックシンドロームを改善しましょう」

メタボリックシンドロームの原因が運動不足ということは、診断された方が一番分かっていることですよね。

 

かかりつけのお医者さんから、運動しましょうと指導されても、

「どんな運動がメタボリックシンドロームの解消に効果的なのか分からない…」

「運動しようにも、なにから始めていいのか…」

とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

 

そこでこの記事では、宇都宮セントラルクリニック・循環器内科の瀬尾弘司先生に、メタボリックシンドロームの予防・解消に効果的とされる運動療法について詳しくお話を伺いました。

 

メタボリックシンドロームにお悩みの方、またその予備軍の方も、最後までお読みいただきご自身の健康増進にお役立てください。

 

宇都宮セントラルクリニック 循環器内科 瀬尾弘司 先生

 

宇都宮セントラルクリニック
循環器内科 瀬尾 弘司

 

——本日は、よろしくお願いいたします。

 

瀬尾弘司先生(以下、瀬尾) はい。よろしくお願いします。今回は、メタボリックシンドロームの予防・解消で大切な「運動療法」についてお話しします。

 

メタボリックシンドロームの原因は肥満、内臓脂肪の蓄積なのは皆さんご存じの通りです。

メタボリックシンドロームの予防・改善は、いかに内臓脂肪を減らすかということに尽きます。内臓脂肪が減れば、インスリン抵抗性がもどり、高血圧、糖尿病、高脂血症が改善されます。

 

【メタボリックシンドロームの仕組み】

メタボリックシンドロームの仕組み

出典:メタボリックシンドロームの仕組み図 宇都宮セントラルクリニック作成

 

内臓脂肪を減らすには、前回ご紹介した「食事療法」とあわせて、今回ご紹介する「運動療法」を実施することが最も効果的です。

 

■メタボリックシンドロームを予防・改善するためのおすすめの運動

 

瀬尾 メタボ改善&健康のためにおすすめする運動には、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動、柔軟運動の4種が挙げられます。

 

どれかひとつの運動と偏ることなく、4種を同じ運動量で実施するのが良いとされています。

 

【メタボリックシンドロームの予防・改善|おすすめの運動4選】

① 有酸素運動
ウォーキングやジョギング、エアロビクス、サイクリング、水泳など、長時間継続して行う運動のこと。酸素を使って体内の糖や脂肪を減少させるのでダイエットに効果的です。

② レジスタンス運動
レジスタンスとは英語で「抵抗」の意味です。腕立て伏せ、スクワット、ダンベル体操など、筋肉に抵抗をかけることで筋力を高める運動です。

③ バランス運動
バランスボールなどの器具を用いて、姿勢維持の能力を高める体幹を鍛えるトレーニングのこと。年配の方は鍛えることで転倒防止、老化の予防になります。

④ 柔軟運動(ストレッチング)
意図的に体の関節や筋を伸ばす運動のことです。

メタボリックシンドロームの予防に効果的か否かは結論は出ていませんが、ヨガの実施で血圧が低下すること、座位前屈ができる人には動脈硬化度が低いことが報告されています。

 

これら4種の運動の中でも、誰しもが気軽に取り組める運動として有酸素運動がおすすめです。

動脈硬化学会では、メタボリックシンドロームの改善に効果的とされる有酸素運動による運動療法の指針を発表しています。

 

【運動療法の指針】

参照:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

 

瀬尾 「中強度」とは、通常速度の歩行時に相当する運動強度のこと。運動強度の数値でいうと、3メッツ(METs)になります。

 

効果的な運動療法の指針ですが、無理に実施していけません。

ご自身の体調が良くないとき、天候が優れないときに無理をして実施するのは逆効果です。体調を崩す原因となってしまいます。

ご自身の体のコンディションと相談しながら実施するようにしましょう。

 

■おすすめする運動療法と身体活動

 

瀬尾 一般的におすすめできる運動療法として、米国の糖尿病学会のガイドラインとして発表している運動療法・身体活動を一例としてご紹介しましょう。

 

【米国 糖尿病学会がおすすめする運動療法と身体活動】
・有酸素運動に加え、レジタンス運動、バランス運動、柔軟運動を行うのがよい
・週計150分以上の中強度から高強度の有酸素運動を行う
・週2〜3回レジスタンス運動を行う
・30分座ったら、立ち上がって動く
・高齢者は特に柔軟運動とバランス運動を週2〜3回行うと良い。ヨガ、太極拳、柔軟運動、バランス運動などがおすすめ。筋肉強化に有効である

参照:米国 糖尿病学会ホームページ(英語)

 

瀬尾 日本において、幅広い年齢層の方に実施していただける運動療法としては以下のものになります。

 

【実際の運動療法】
・散歩、ジョギング、ラジオ体操、自転車エルゴメーター、水泳等全身の筋肉を用いる有酸素運動
・強度:脈拍 一般120回/分程度 60歳以上の方100回/分
・一回の運動時間:10~30分程度
・運動をする頻度:3~5回/週

 

瀬尾 ご年配の方、筋力、筋量の低下している方は、上記の運動に加えて「チューブ」や「軽いダンベル」を用いた筋力トレーニングもあわせて実施すると良いでしょう。

 

■年配の方におすすめ 10歳若返る!インターバル速歩

 

瀬尾 ご年配の方に適した運動療法として、最近注目を集めている「インターバル速歩」をご紹介しましょう。

 

インターバル速歩とは、「早歩き」と「ゆっくり歩き」を3分間ずつ交互に繰り返す、健康増進に効果的とされるウォーキングのことです。

 

インターバル速歩を提唱するNPO法人 熟年体育大学リサーチセンターの研究によると、中高年(平均年齢66歳)を対象に4ヵ月間のインターバル速歩を実施したところ「高血圧症」「高血糖症」「肥満症」と診断さていた被験者の方が30%減少したそうです。

 

メタボリックシンドロームの改善に多いに期待できることが科学的にも明らかになっています。

 

【インターバル速歩のやり方】
①最初の3分は、普通のスピードで歩く
②次の3分は、足を大きく開き、無理のない範囲での早いペースで歩く。
(軽く息が上がる程度)
⑤ ①の歩き方と②の歩き方を交互に3分づつ繰り返す

 

【インターバル速歩を実施するポイント】
1)速歩きの1日の目標はトータル15分
2)インターバルの長さは人それぞれ自由。疲れない程度に休みを取る
3)継続することが大切
4)速歩きの際には、足に十分な負荷がかかっていることが重要
5)競歩に近い自分の最も速い歩きを100%とした時、その70%が速いペースで歩くときのスピード
6)競歩に近い自分の最も速い歩きを100%とした時、その50%が普通のペースで歩くときのスピード

 

瀬尾 3分という時間に縛られずに、ご自身のタイミングで交互に速さを変えてください。

インターバル速歩で大切なのは時間ではなく、速さを変化させること「メリハリ」ですので。疲れて辞めてしまうのではなく、継続することが大切です。

 

■運動療法を実施する上での注意点

 

瀬尾 運動療法は健康になるために実施するものです。以下の注意を守って実施するようにしましょう。

 

1.運動前後での、準備体操・整理運動を必ず行う
2.膝や足の障害を防ぐために靴底の厚いスポーツシューズを
使用する
3.軽い運動を短時間から始めて、次第に長くやや強くする
4.水分の補給を定期的に行う
5.夏の暑い時、雨の日、極端に寒い日など、天候の悪い時の
ウォーキングは避ける
6.食事療法を平行して行う

 

運動療法とあわせて「食事療法」を実施することで、メタボリックシンドロームの予防・改善が叶います。

食事療法については、前回の記事で詳しくご説明していますので、ぜひお読みください。

 

あわせてお読みください。
瀬尾先生インタビュー第2回「メタボリックシンドロームとは第2回 「食事療法」でメタボリックシンドロームを改善しましょう」

 

■余暇の時間で人と一緒にスポーツをすると寿命が延びる?

 

瀬尾 余暇の時間でスポーツを行う人は、やらない人より兵器寿命が長いという海外の研究結果が出ています。

 

デンマークのコペンハーゲン市では、市民8577名を対象に25年間追跡研究したところ、余暇時間にテニスをしていた人では、運動しない人に比べて、9.7年も寿命が長かったというのです。

参照:National Library of Medicine「Time Physical Activities Associated With Widely Divergent Life Expectancies: The Copenhagen City Heart Study

 

また、この研究結果で言われていることは、ジョギングや水泳といった単身で行うスポーツよりも、バドミントン、テニスといった集団で行うスポーツのほうが効果的とされています。

 

因果関係は、まだ研究中なのですが、おそらく人とコミュケーションをとることが影響しているのではないかとされています。

 

これから運動療法を始められる方は、ご家族や友人をお誘いの上、バドミントンやテニスなど、人とコミュケーションをとるスポーツに興じるのも良いかもしれませんね。

 

■メタボリックシンドローム改善のための運動療法から、健康寿命の延伸のための運動療法へ

 

瀬尾 今回ご紹介した運動療法を実施して、日頃から余暇に運動を実施するライフスタイルができると、健康寿命を延ばせることが期待できます。

 

個人差はありますが、60歳を過ぎたあたりから、「ロコモティブシンドローム」の原因となる、年齢を重ねるごとに筋肉量が減少する「サルコペニア」や、心身の活力が低下する「フレイル」の予防が大切になってきます。

 

 

ロコモティブシンドロームは「運動器症候群」のことです。

加齢に伴う筋力の低下、関節の病気、骨粗しょう症などによって移動能力が低下した状態を指す名称です。この状態が長引くと、ひいては介護や寝たきりになってしまうリスクが高まってしまうのです。

 

今回、前回とメタボリックシンドロームを予防・改善するための「食事療法」と「運動療法」を日頃から実践していけば、将来のフレイル・サルコペニア予防に対して備える体作りができます。

 

長寿社会を迎えた今、いつまでも自立と生産性を維持して、楽しく長生きしたいものです。ご紹介させていただいたメタボリックシンドロームを予防・改善をご参考にしていただいて、ご自身の健康増進に役立てていただけたら幸いです。

 

■宇都宮セントラルクリニック
宇都宮セントラルクリニックの人間ドックは、「がん」「脳疾患」「心疾患」の三大疾病を総合的に診断するコースから、内臓脂肪など気になる部分を重点的に診断するコースなど、多様なコースをご用意しております。また、近い将来に65歳以上の約7人に1人がかかるといわれる「認知症」について調べることができるコースもご用意させていただいております。

 

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【この記事の監修医師】

宇都宮セントラルクリニック 循環器内科 瀬尾 弘司

宇都宮セントラルクリニック
循環器内科 瀬尾 弘司

平成2年に獨協医科大学を卒業後、同病院の現在の心臓・血管内科教室に入局し内科学全般および循環器研修に携わる。
平成9年からは栃木県保健衛生事業団にて循環器領域の予防医学を担当すると同時に、宇都宮セントラルクリニックにおいて冠動脈を中心とした循環器領域の画像診断やセントラルメディカルクラブ(CMC)の顧問医として従事。

所属学会等
日本循環器学会認定循環器 専門医
日本内科学会 認定内科医
日本老年医学会認定 専門医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医
日本医師会認定 産業医