当院代表佐藤俊彦のコラム ~人生100年時代の社会保障について~
人生100年時代の社会保障について
宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦
秋も深まってまいりましたが、皆様におかれましては益々お元気でお過ごしのことと存じます。いま、紅葉真っ只中の北京で記事を書いております。
迦華クリニックが来年の春節明けのグランドオープンを目指して準備中ですが、私も月に2回中国に営業支援と現場のセットアップのための支援に来ております。中国では、医療は公的医療と自由診療を完全に消費者が選択可能になっています。つまり、社会保障に政府が介入しない社会です。介入の方法はいろいろありますが、日本の場合は社会保障費の40%を税金で支出しているので、ゆりかごから墓場までの英国病に近い状況になっています。これでは政府の権限が絶大で混合診療を禁止していますので、自由診療のマーケットが成熟することを妨げています。それにひきかえ、中国では政府がそもそも医療費よりも成長産業への投資を優先していますので、医療産業は営利目的である自由診療マーケットに大きくシフトしてきており、年収1億円程度のお医者さんが急増しているのも現実です。IT大手のアリババやジンドンなどもヘルスケア業界に進出しており、AI問診で1日3~10万人の外来患者をネット上で診療する体制や、そこで発生する薬剤処方や配達網にネット通販のインフラを利用しており、医療供給体制が大きく変化しています。
一方、我が国は「2020年以降の経済財政構想小委員会」(通称:小泉小委員会)は、2016年10月に「人生100年時代の社会保障へ」と題した報告書を発表して、予防医療に大きく舵を取ろうとしているようです。つまり、財務省が診療報酬を下げる方向で圧力をかけてきているので、自由診療を解禁して混合診療に持って行きたいが、医師会の大反対を伴うのは目に見えているので、予防医療にシフトさせ、公的保険の下げ分をここで帳尻合わせしようという内容です。20年勉強して、40年働き、20年老後の人生設計は終わりました。これからは、20年勉強して、70年働き、10年の老後を迎えてくださいという内容です。これはパソナの竹中先生もおっしゃっていますので、そうなるのだと思います。働き方改革も先生のおっしゃる方向で法案が通りましたし、ホワイトカラーエグゼンプション(頭脳労働者脱時間給制度)も同様ですね。
健康ゴールド免許を手に入れるためにも、検診を受診して予防医療にお金を使っていただくことが将来病気した時に自己負担が減るなどの優遇政策を受けるのに不可欠です。
日本企業の業績を考えても健康経営に投資することは必要不可欠で、その費用は労働者と企業の責任でまかないなさいという方針のようですね。
一方で、健康への投資は所得とも相関しているのが現実です。中国では、富裕層の数がアメリカの富裕層の数を抜いて世界一になりました。つまり、これからも中国人富裕層は、海外のいい医療を目指してやってくるわけですし、日本が彼らに選ばれるかどうかはプロモーション次第です。11月末の北京でのメディカルツーリズムの展示会もありますので、ジャパンパビリオンは頑張って欲しいですね。
では、日本のアドバンテージはどこになるのか?中国人富裕層のニーズは、IVFとPET検診・美容医療です。IVFは米国の一人勝ちですので、日本は無理ですね。PET検診・美容医療に、遺伝子治療だとぼくは考えて準備しています。遺伝子治療研究所で治験の準備を実施しておりますが、自費診療であれば世界中から患者をリクルートすることは極めて容易です。再生医療新法の早期認証制度を用いることで(欧米からは、あからさまに非難されていますが)容易に可能なのです。
この小泉小委員会の提言をみると、70年間働くための予防医療制度を作る必要があることがわかりますが、これが私たちのセントラルメディカル倶楽部です。現在の最高齢のメンバーさまは93歳の女性ですが、お元気で老後生活に入られておりますし、高齢女性は単身で生活されている方が多いので、私どものメディカル倶楽部に入会されて、積極的に健康管理をされている方が多いです。当初は男性会員様が多かったのですが、現在は女性会員様の入会が増えているのが特徴です。
本年6月より新しいデジタルPETが稼働し、新規入会のメンバー様も増えてきました。宇都宮だけではキャパシティもいっぱいになってきましたので、2020年中に東京にメディカル倶楽部の拠点を増設する予定で準備しております。
政府が提案する70年間働くための予防医療システムの一助になればという考え方で今後の準備を進めてまいります。
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