当院代表佐藤俊彦のコラム ~乳腺生検に関して~
乳腺生検に関して
宇都宮セントラルクリニック 放射線専門医 佐藤俊彦
私は、NPO法人ピンクリボンうつのみやの理事長もしているのですが、乳腺診療に関してはいつも矛盾を感じます。
たとえば、この患者さんは50代の女性ですが、マンモグラフィでは高濃度乳腺で、超音波検査を実施しました。超音波検査では、明らかに腫瘍がありますので生検するべきかどうかを造影MRIを実施して検査をしたのですが、この検査では良性とも悪性ともとれる所見で決め手に欠けます。
拡散強調画像では、低信号なので悪性画像とは異なり、良性病変のように感じますが、確定診断の為にCNBという生検を実施しました。
その結果は、良性でした。
このあと乳腺の先生は、生検を実施した時に十分に検体がとれなかったのでは?ということで、病院を紹介します。
なんとその病院では、FNAという細胞診を実施して、異常がないため手術でとりましょうとのこと・・・
なぜ、 VABという吸引組織診を実施しないのか?理解に苦しみます。
手術での生検は、まず、腫瘤を触知しないので癌の手術と同じように大きく切開して、正常な乳腺も含めて切除します。
したがって、経年変化をマンモや超音波で経過観察するときにその変形で経過観察が困難となり、造影MRIでの経過観察が必要になります。
上図が術後の経過観察のマンモグラフィです。
傷口が引き連れて、がんによる変形との区別が困難です。したがって、造影MRIを実施する必要が毎回生じるわけです。
手術による侵襲よりも軽度なのが、吸引細胞診VABです。
この例のように、最初にきちんとした量を生検できていないと、勘違いをして手術による生検に回ってしまう例は、避けなければなりません。
皆さんに、ワンポイントアドバイスは、生検しましょうと言われたら、何回も刺されたり、手術生検にならないように“VABで生検してください”とお願いすることです。
また、一方で、手術生検は必ずしも病変をとれるとは限りません。
この患者さんは、マンモグラフィでは見えず、超音波検査で腫瘤が発見されました。よく見るとマンモグラフィでは、軽度の石灰化を伴っていますが、悪性所見とは言い切れません。
ところが、MRIや乳房専用PET(PEM)では、明らかに悪性像を呈しています。
VABを実施して、DCISというステージ0の乳癌が発見されました。
そこでA病院を紹介したところ、外来へ行き局所麻酔で切除してもらったそうですが、病理の結果は乳腺症とのこと。
患者さんは、何もなくて良かった・・・とおっしゃっていましたが、がんは一体どこへ?
半年後に経過観察しましょうといって、PEMを実施すると、病変は残ったままでした。
乳腺外科医の大先生に文句を言うのも、狭い社会に生きているとはばかられますので、これを某大学病院の教授にお願いして、再度手術を依頼したわけです。
そうしたら、術後の病理は、なんと乳腺症で癌はないとのこと・・・????
すぐに、術後のPEMを実施したところまたもや残っているわけです。
このように何度も切り刻まれた乳房は、マンモや超音波検査で見えにくくなって、ますます病変の発見が遅くなります。
実は、いまの中国がこんな状態ですね。だから、患者さんが日本へ逃げてくるわけです。
手で触るような大きな乳癌を切除している外科医は、どうしても触知しない乳癌を取りに行くときに画像ガイド下でとればなんてことない手術ですが、とれない可能性があると思った方がいいですね。
というわけで、わたしはまず、画像診断が最も重要であると考えます。
マンモグラフィ健診を受けるのに、トモシンセシスで受けないなんてありえません。
米国では、マンモグラフィがあまりにも見えないので、トモシンセシスでの健診に5年も前から移行しています。
また、超音波は術者によって差があるために、日本では学会が健診として推奨していません。したがって、3D超音波検査が開発され、当院では8年前からSIEMENSのABVSを導入し、今年からはAIによる自動診断を導入しています。
AIは、知能指数で1万以上ありますので、人間がかないっこありません。
この例は、ABVS+AIで癌を疑われたのですが、PETでも癌の所見が確認できました。
このように健診は、最新の診断機器で検査することが重要であるばかりでなく、生検が必要と言われたら、予備知識として、FNA(細胞診)・組織診(CNB)・吸引組織診(VAB)とあって、組織量が十分でないと、良性病変ほど間違うので、細い針から順番に刺すのは、場合によっては3回も刺される事になりますので、最初からVABで組織検査を実施してもらう事が重要です。
http://www.devicormedicaljapan.jp/mmt/exam/kensa.html
また、当院では、セカンドオピニオンを実施しております。何かお困りの事があれば、いつでもご相談下さい。