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がんはステージ0で見つけ、未病で治す

医療法人DIC字都宮セントラルクリニック理事
NPO法人野口医学研究所 専務理事
医療法人社団野口記念インターナショナル画像診断クリニック 理事長
東北福祉大学特任教授
佐藤俊彦氏
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皆さんの中で、がんを経験された方もいるかもしれませんが、がんは現在、ステージ1 で見つかれば治る病気になってきました。しかし、ステージ1で見つかっても、10%ぐらいの方がすぐに再発したり転移したりします。そこで、画像以外の検査法として考えられたのが、ステージ0Ⓡで見つける新しい診断法です。つまり、画像で見えないがんを見つけるのです。がんが免疫で治ることはエビデンスが得られてきていると思いますが、新しい治療法として免疫療法が注目されています。

テロメスキャンⓇ
最初にお話しするのがテロメスキャンⓇという治療法です。がんは5~10㎜になると画像で見えますが、5mm以下のがんはPET診断や画像診断、内視鏡ではなかなか分かりません。そこで、がんを画像診断ではまだ検出できない段階で見つけるためにテロメスキャンⓇが開発されました。開発者は岡山大学の外科医の藤原俊義先生です。
アメリカでは、これと似たようなジョンソン&ジョンソンのセルサーチという商品があります。われわれの仕組みと違う点は、セルサーチは死んだがん細胞も生きたがん細胞も見つけるのですが、テロメスキャンⓇは生きたがん細胞のみを見つけることができることです。
がんは、血液やリンパ液に乗って血管内に浸潤していきます。浸潤した細胞がどこかに引っかかって転移を起こすのですが、画像で見えるのは塊になった部分だけです。血液中を浮遊しているがん細胞(CTC)を見つける方法は、今までありませんでした。早期がんでも、血管中にがん細胞がたくさん浸潤している入は、早い段階で転移や再発の兆候を示すとされているので、テロメスキャンⓇと画像診断を組み合わせることで、健診目的にも術後の再発予測にも使えます

テロメスキャンⓇは、二つのノーベル賞受賞技術に基づく検査法です。一つはクラゲの発光遺伝子(GFP)です。アデノウイルスというかぜのウイルスに組み込み、その改変ウイルスを採血した血液中に入れます。そこに、もう一つのノーベル賞技術であるテロメレースという酵素を使います。がん細胞内にはテロメレースがあり、無限に増殖しますが、正常な細胞にはテロメレース活性がありません。この性質を使って、ウイルスを感染させたものを観察します。すると、ウイルスに仕込まれていたクラゲのGFP が発現しますから、顕微鏡でがんを確認することができます。
薬事は未承認ですが、東京医科歯科大学の呼吸器の先生や東大の婦人科の先生たちが臨床論文を出しており、もうすぐ上市可能なところまで来ています。
CTCを使って治療効果を見ることもできますし、治療後もCTC 検出率が高ければ、再発・転移の可能性が高いので、全身治療の化学療法や免疫療法を加える必要があると判断することができます。
塊になった部分は画像で見えますが、CTCが陽性で画像で見えない場合は困ります。自覚症状が全くなく、検診を受けてがんが見つかり、血液中に生きたがん細胞が幾つかある場合、画像診断で見つかればそこを取り除けばいいのですが、見つからなければ5mm以下のがんがあると予測され、免疫療法を選択するしかないと判断されます。
乳がんに関しては、HER2というレセプター(受容体)があるかどうかで、治療の際に選択される薬剤が全く異なります。例えば原発巣はレセプターが陰性であっても、転移した箇所が陽性であれば、原発巣と転移巣で違う薬を使わなければなりません。現在は転移巣の組織を取って、頭に転移したら頭の組織を取って調べるしかありませんが、この方法を使うと、頭の組織を取らなくてもある程度予測できるようになります。さらに、将来的には一個一個のがん細胞の遺伝子を解析するサービスも考えていて、より分子生物学的にがん細胞の性質を調べられる時代が来ると思います。
がんの早期発見のためには、未病の段階でCTCで見ることが重要です。5mm から1cm 以上になると画像で見えるので、この段階で診断がついて、ステージングも終わって治療法を選択できます。治療後に治癒に向かう人と再発する人がいますが、治癒するか、再発するかをモニタリングするために、こういったものを見ていくことが非常に重要です。

免疫療法
 小野薬品工業のオプジーボという薬がよく知られるようになり、皆さんも癌の発病と免疫との間に力関係があることはうすうすお気付きのことと思います。非常に強いストレスなどがあると免疫力が落ちて、がん細胞が出てくるとどんどん増えていきます。

 免疫担当細胞の能力は、年齢とともに下がってきます。例えばγδT細胞は、がんだけでなくウイルス感染などにも直接作用する非常に有効な免疫担当細胞ですが、年齢別に見ると20代を境に極端に下がります。こういったものを増やすことは予防にも生かせるのではないかということで、さまざまな取り組みが行われています。
免疫応答には大きく分けて二つあります。一つは自然免疫応答です。NK細胞やγδ細胞がそれに当たり、自分と違ったものはどんどん攻撃します。がんになったものや、ウイルス感染などでウイルス抗原が正常細胞に出てきたものを異物として排除します。ですから、こういった細胞を選択的に増やしていけば、ウイルス感染にもがんにも抵抗力がつくだろうというのが、再生医療促進法で言われている免疫細胞療法の役割の一つです。
もう一つ、特異的獲得免疫応答です。例えば発がんしてしまった場合、がん細胞の一部を取り出してワクチンなどを作ると、このワクチンを樹状細胞が認識して、T細胞を経由して攻撃するという獲得免疫系が作用します。
この二つの系統の働きをする細胞を両方とも培養して、がん患者に戻す治療法を選択します。予防に関してはどのがんに感染しているかが分からないので、NK細胞やγ・う細胞を特異的に増やして戻すのが、予防に使われている免疫細胞療法の考え方になります。
一昨年11月に施行された再生医療促進法により、再生医療技術はリスクの度合いから3種類に分類されています。第1種はiPS細胞などを含む特殊な再生医療技術、第2種は体性幹細胞などによる再生医療技術、第3種は免疫細胞療法などの再生医療技術です。免疫細胞療法は再生医療のーつとして位置付けられていますから、がんになった方だけでなく、定期的にがん予防に使われるといいと思います。

まとめ
重要なのは、テロメスキャンⓇを使って、ステー ジ0Ⓡでがんを見つけるということです。この検査で異常があった場合、どこにがんがあるのかを調べるには、内視鏡とPET の検査を選んでいただくのが最善だと思います。がんの治療をお考えであれば、免疫細胞療法はいろいろな免疫系をコントロールすることができるようになっているので、ご活用いただきたいと思います。免疫細胞療法は、予防の部分ではまだまだ治験が足りませんが、非常に有望な領域だと思いますので、皆さんの健康管理の一助になればと思います。

ステージ0 Ⓡ 株式会社メディカリサーチの商標登録
テロメスキャンⓇ オンコリスバイオフアーマーの商標登録




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