インバウンド医療ツーリズムに関して
宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦
–
8月4−6日と上海で、日中経済交流協会主催の日本精品店に出店させていただきました。弊社の中国企業である”俊彦医学管理:Central medical club china”としての展示会への参加で、クリニックからは、営業の責任者の高田が参加しております。
日本の企業としては、皆中小企業で知名度の高い会社の出店はなく、その中でも医療機関あるいはメデイカルツーリズムの関連は弊社とT&Cメデイカルサイエンス関連の会社と2社のみの出店でした。
T&Cメデイカルサイエンス関連の会社の展示では、私が20年ほど前に訪れた上海で日本人医療をやっていた”サクラクリニック”が、成田にも透析センターを出したニュースや今年の11月に”世田谷クラブ”というMRやCTをいれた健康管理施設ができること、青木先生のクリニックC4でのガン治療などの話が紹介されていました。
–
一方で、外苑東クリニックや銀座ソラリアクリニックの紹介はなかったので、提携が解除されたのかもしれません。
中国人による爆買いは、中国政府による外国製品への関税強化と電子商取引ECの解禁で急速に萎んでいます。しかし現状では、中国人の来日数は増加の一途をたどっていますので、総量はさして落ちないと思います。先日のラオックスの担当者との打ち合わせでは、これから中国人は爆買いから、高度なサービスを求めて来日するとのことで、そうなれば、医療は不可欠の商品=サービスという位置づけになると思いました。
実は、中国人の経営者には、医療保険がもともとありません。したがって、国内で受けても、海外で受けても保証つまりは支払いが可能な医療保険を契約しています。
先日も、胸腺がんの患者さんの相談を受けたのですが、化学療法で縮小しないため、日本で陽子線治療を受けたいということでしたので、いろいろな施設に相談しましたが、どこも受けてくれませんでした。結局、その患者さんはアメリカに行って治療を開始しています。
また、先日は前立腺肉腫の若い中国人の患者さんが、当院に検査に来られ、癌研有明病院を紹介しましたが、これも手術できないということで断られました。この患者さんも、アメリカで手術を受けました。
–
このように中国人の患者さん、特に富裕層は、自国に保険制度がないため、海外の医療保険会社と契約をしていますので、選択肢が広く、海外での治療に関する滞在費や同行費も担保されるので安心なわけです。
先日は、中国人の友人のご亭主が肺がんの疑いがあるということで来院されました。画像からは、肺がんではなく、区域に一致する肺炎と診断し、念のためPETも実施しましたが、保険を気にせず受診や検査ができるのは、本当にベストな治療を可能とすることを痛感しました。また、先日人民代表大会でご一緒した奥様の健診では、大腸のポリープが疑われたので、すぐに中国で内視鏡検査を実施してもらい、S字結腸にあった8mm大のポリープを内視鏡手術で切除しました。
このように少しずつ、実績と口コミで広がっている当院ですが、今後は、どこかで口コミが爆発し、多くの患者さんや経営者が健康管理目的で来院されるようになる
日も近いと思われます。
–
日本の商社とも打ち合わせの中では、中国での健診センターなどのお話をいただきますが、これは日中戦争で敵地に軍隊を進めるようなものですので、私としては興味がなく、やはり東京に健診センターを持って、インバウンドの患者さんを受け入れるべきだと思います。
画像センターの場合、診断はできても、治療は高度な医療機関と連携しなければなりませんので、やはり立地は東京しかないと考えています。
2018年には、東京に画像診断センターを持って、インバウンドに備えるつもりです。
それと来年の今頃を目標に放射線治療センターを宇都宮にオープンします。
群馬県には重粒子線治療・トモセラピーがあり、茨城県には陽子線治療・トモセラピー・サイバーナイフが設置されています。
私どもの栃木県には、ライナック以外何もありません。
したがって、患者さんを診察していると、どうして?放射線治療をやらないのかな?という患者さんに遭遇することがしばしばです。
–
これまた10億円以上の投資が必要ですが、絶対に重要で求められるべき医療インフラだと思っています。待たずに検査をして、治療計画を立てる、そしてすぐに放射線治療を実施して、その後の維持療法は、抗がん剤・免疫療法・オンコサーミアなどの就学的治療を実施できる体制を構築するつもりです。
最後に自治医大の村松先生の遺伝子治療ですが、NHKなどで何度も放映され、当院へのお問い合わせも多数あります。
9月からは、火曜日に小野先生のパーキンソン病・FMT-PETの専門外来を設置することになりました。
事前に診断を確定することで、治療対象者を選択し、治療用のベクターが製造できて承認されれば、治験で治療を開始できるように準備してまいります。
(※編集部注:受診方法や相談窓口に関しては来月のメルマガに掲載いたします。)