お知らせ・トピックス

血管からがんを治すカテーテル治療の挑戦

宇都宮セントラルクリニック 放射線科医 佐藤俊彦
 
東京で、雹が大量に降るなど、確実に気候寒冷化が進行していることは皆様お気づきのことと思います。クライメイト チェンジが起きており、北極圏の温暖化と温帯地域の寒冷化が鮮明になってきています。この傾向は、今後も続くようですので、突然の自然災害には十分注意が必要です。
気候変動がもたらした過去の事実は、原田さんのヤフーニュースをご参照ください。
ヨーロッパが10-14世紀に中世の温暖化とともに、バルト海沿岸に東方移民が起き、勢力図が変わっていき、その後に来る寒冷期にヨーロッパの覇権がロシアに移って行った事実は、今後ロシアが覇権を握る可能性を示していると言えるのです。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/haradatakeo/20140526-00035666/
 
宇都宮でも、冠水被害が相次ぎ、下水施設には自信があった宇都宮市も、さすがに1時間に50mm以上の降雨を想定していなかったようで、都市機能が一部麻痺するという事態に陥いりました。
幸い、当院の周辺に被害はなく無事でしたが、宇都宮は雷都(らいと)というくらい雷が多いので、停電が多く、そのたびに診断機器が止まってしまいます。そのため、皆様にはご迷惑をおかけすることがありますが、なにとぞよろしくお願いします。
 
私の尊敬する奥野哲治先生が、新しく本をだされました。“血管からがんを治すカテーテル治療の挑戦“という本ですが、これまでの先生の血管内治療の開発の歴史とその効果が書かれている大作です。私も、日本医大に血管造影を習いに行っていた時期がありましたので、先生のお考えには、大変共感する部分が多く、一気に読ませていただきました。
がんやリュウマチ、炎症性疾患、外傷は、それぞれ新生血管が症状や病変の進行に深くかかわっているので、新生血管を血管内治療、つまりカテーテルを使ってたたいてしまえば、病気は治るという理論で実践されています。
http://www.amazon.co.jp/%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%8C%E3%82%93%E3%82%92%E6%B2%BB%E3%81%99-%E3%82%AB%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E6%8C%91%E6%88%A6-%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%A5%A5%E9%87%8E-%E5%93%B2%E6%B2%BB/dp/4797372109
たしかに、がんの診断だけでなく、炎症性疾患でも、外傷後の治癒機転で新生血管がでてきます。しかし、とくに外傷後の治癒機転においては、新生血管をつぶしてしまうと治癒しないのではないか?という懸念がありましたが、それもつぶしてしまったほうがいいという理論で、好成績をあげておられます。また、血管を詰める物質も非常に研究されており、抗生物質のチエナムを使ったり、既存の薬剤で、薬事承認を受けている既知の薬剤を工夫して使っておられる点も、共感に値します。
いま、遺伝子治療を実施しておりますが、新規の薬剤で、未承認薬を使う治療はリスクが大きいことと、費用の問題があります。私も、先生には患者さんを治療していただいております。局所コントロールという意味では、非常に良好な成績で、まず、血管内治療とトモセラピーで、画像で見えるがんをつぶしておいてから、免疫療法に導入させていただいております。
一度、乳がんで手術したくないと思っている患者さんは、ぜひご一読ください。
 
また、先日、クリニックC4の青木先生とお会いし、いろいろ教えていただきました。
放射線治療には、増感剤というものがあります。
http://www.troc.jp/care/sensitizer.html
これまでは、過酸化水素とヒアルロン酸を局所注入していたのですが、青木先生は、がん関連遺伝子(m-RNA)の過剰な発現や癌抑制遺伝子の読み取り部分のメチル化などを阻害する物質を局注して放射線治療線量を少なくして安全な治療を実践されています。
“分子標的トモセラピー“といっておられました。
じつは、この治療法もたくさんお願いしており、先日は肝内胆管癌の患者さんにCTガイド下で腫瘍を穿刺してそこから薬剤を投与し、通常の半分の放射線量で完治できた患者さんがおりました。また、面白いことに原発巣が消えたことにより、骨転移も消えてしまった例がありました。
また、ある乳がんの患者さんは、手術で乳房腫瘤を切除した標本で、ホルモン感受性強陽性だったので、抗ホルモン製剤を使っていたのですが、骨転移と肝転移をきたした例がありました。抗がん剤治療にあわせて、トモセラピーと免疫療法を実施して、完治しています。
つまり、転移した病変は、ホルモン感受性のない腫瘤であったために、抗ホルモン剤が効かなかったわけで、術後のホルモン治療は100%の効果はないということがわかると思います。したがって、術後の定期的なPEMによる局所再発の有無のチェックと全身転移の有無をPET/CTで診断し、CTC(循環がん細胞)をテロメスキャンでチェックしていくという私たちの経過観察方法は、今後スタンダードになっていくと思われます。


先日、当院のブレストセンターの半年分の成績をまとめたのですが、乳がん確定例は14例あり、そのうちの9例は1cm以下の超早期乳がんでした。
では、これらの患者さんに対して、切らないで治療する方法として、FUSという方法をご紹介したいと思います。
 
先日、軽井沢で、ブレストピア病院の古澤先生の講演をお聞きしてきました。
http://www.breastopia.or.jp/bhg/05/02.html
先生は、国内で唯一のFUSセンターで乳がんや良性腫瘍を対象とする、切らずに治す外科医です。
FUSは、超音波を病変に集束させ、熱を発生させることで病変を焼ききるという画期的な方法です。自費診療ですが、非常に優しい治療ですので、手術による変形や痛みもなく、治療できますので、一度、検討してみる価値はあると思います。
http://fus.breastopia.or.jp/
当院では、今後、FUSを積極的に導入して行こうと検討しております。
これからも、当院の画像診断センターは1cm以下の乳がんを見つけることを主眼として、診療体制を強化してまいります。
1cm以下の乳がんをみつけて、外来で10分程度でがん治療を完了する。そんな時代がそこまでやってきていると感じています。
 
これらの先生たちとの連携を強化しながら、画像診断のマエストロを目指して精進してまいります。




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