乳がんの基

乳がんの「しこり」って何? どんな種類がある?

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「もしかして、乳がんかも……」
何気なく触った胸に“しこり”を感じ、ドキッとしたことはありませんか?

日本では、乳がんにかかる女性が年々増え続けており、近年では年間5~6万人がかかると言われています。
厚生労働省の人口動態統計「死因別死亡数」(2011年)によると、35~64歳のがんによる死亡原因1位は乳がんです。
さらに、若い年代においても、乳がんにかかる人は増えています。

乳がんは、体の表面に近いところにできるため、気付きやすいがんです。
他のがんは自分の目で見たり触ったりすることができませんが、乳がんは自分の手で触れたり観察したりすることによって発見できる可能性が高いのです。

乳がんは、早期発見で90%以上が治ると言われています。定期的な検診に加え、自己検診も定期的に行いたいもの。
そこで、「しこり」について知って、いざという時に備えましょう。

乳がん しこり

乳がんの「しこり」とは?

乳がんで一番わかりやすい症状は「しこり」です。

「お風呂で体を洗っているとき、胸にしこりのようなものがあるのに気がついて、病院へ行ったら乳がんが発見された」
「着替えのとき鏡を見たら、胸にくぼみのようなものがあったので、検査してみたら乳がんだった」

というように、日常生活でちょっとした異変に気づいたことから乳がんが見つかった事例はたくさんあります。
といっても、乳房の大きさや硬さ、しこりの場所などによって、判断できる「しこり」の大きさや硬さは異なります。

乳がんのしこりの特徴には、以下のようなものがあります。

  • 硬い
  • 表面がデコボコ
  • 境目がはっきりしない
  • 形が整っていない

しかし、しこりの大きさや硬さは、千差万別です。

乳がん しこり 気づく

その人の乳房の大きさや硬さ、また、しこりのできた場所などによって違うのです。また、乳腺のしこりは他の病気にも見られるため、その判断も必要です。

医師が触診をする場合は、しこりの場所や大きさ、硬さ、境目がはっきりしているかどうか、また、よく動くかを調べます。
乳がんのしこりはゴリッとかなり硬い傾向にあります。また、周囲の組織に癒着するため、あまり動きません。

ただし、最終的な診断をするには、病理検査をする必要があります。
触診で乳がんが疑われるしこりを発見できる可能性はありますが、しこりを触った感じだけでは、乳がんか、そうでないのかをはっきりと見極めることはできないのです。

もし、「しこりがあるな……」と気がついたら、すぐに病院で診断を受けましょう。

しこりを放っておいたらどうなる?

胸にしこりがあることに気づいているのに、放置していたらどうなってしまうのでしょうか?

乳房は、ほとんどが母乳をつくる乳腺でできています。
乳がんは、この乳腺にできる悪性腫瘍です。細胞ががん化してがん細胞となり増え始めると、「しこり」になって現れます。

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乳腺は、乳頭を中心に15~20ほどの乳腺葉で構成されています。
この乳腺葉は、母乳をつくる「小葉」と、小葉でつくられた母乳を乳頭まで運ぶ細い枝のような「乳管」に分けられます。

がん細胞が乳管や小葉内にとどまっている状態を「非浸潤がん」といい、さらにがん細胞が増殖して乳管や小葉の外に広がった状態を「浸潤がん」といいます。

非浸潤がん

がん細胞が、乳管や小葉の中に留まっている段階です。
がん細胞は乳管や小葉の中で増えるため、原則的に転移することはなく、手術によって治癒できるがんと言えるでしょう。

非浸潤がんは、がん細胞が留まっている箇所によって、次の2種類に分かれます。

  • 非浸潤性乳管がん(乳がん全体の7%弱)
  • 非浸潤性小葉がん(同0.1%ほど)

乳がんの10~20%がこの非浸潤がんの段階で発見されていると言われ、手術で切除すれば、リンパ節や他の臓器に転移する心配は理論的にはありません。

浸潤がん

一方、乳がんの中で多いのは「浸潤がん」で、乳がんのうち80%を占めるといわれています。

浸潤がんは、がん細胞が乳管や小葉の膜を破って外に出るため、転移の可能性が高くなります。
時間の経過とともにがん細胞は増殖していき、血管やリンパ管へと広がっていきます。
乳がんの診断を受けたときには、リンパ節や脳、骨、肺、肝臓など、胸から遠い臓器にまでがん細胞が運ばれ、がんを発生する遠隔転移を起こしていることもあるのです。

浸潤がんは転移の可能性があるため、多くは手術だけでなく抗がん剤やホルモン剤などの全身療法が必要となります。

乳がんは、早期発見するほど生存率が高いと言われています。
でも初期症状では、食欲が減退したり体調が崩したりするなどの全身症状がほとんどみられません。

つまり、乳房の変化が大きなサインなのです。
乳房のわずかな変化を見逃さないことがとても大切です。

乳がん検診

対策型の乳がん検診(住民検診)では、厚生労働省の「がん検診事業の評価に関する委員会」において2年に1度が適切であるとされています。

問診

問診票に、以下の項目を記入します。

  • 月経周期
  • 初潮時期、閉経時期
  • 未婚または既婚
  • 妊娠、出産歴
  • 病歴
  • 家族歴(家族でがんにかかった人がいるかどうかなど)
  • 気になる症状の有無

など。また、診察室で医師からの質問に答えます。

視診

乳房を目視判断します。乳房の形、ひきつれや、エクボのようなへこみがないか、また皮膚の状態などを観察します。

触診

医師が乳房やわきの下に直接触れて、しこりや分泌物、リンパ節に腫れがないかなどを確認します。マンモグラフィ検査を併用して行われることが多いようです。

マンモグラフィ検査

乳がん しこり マンモグラフィ

乳房専用のX線撮影装置を使っての検査です。しこりのほかにも、しこりになる前の石灰化した小さな乳がんを見つけることができます。

撮影台の上に乳房を乗せ、透明な2枚の板で圧迫して薄く伸ばし、上下や斜め方向からレントゲン写真を撮ります。

マンモグラフィは乳房を押しつぶして平たくするため、痛みを感じることもあります。
月経前は乳房が張るため、痛みが強くなるので、月経前を避ければ、痛みの軽減に繋がります。

マンモグラフィは、初期のがんを発見しやすい検査です。月経前を避けて是非受けてください。

この段階で異常がなかった場合は、2年後にまた検診を受けることになります。

エコー(超音波検査)

乳がん しこり エコー

超音波を発する機器を乳房にあて、反射された音波を画像化することによって乳房内部の様子を映します。
マンモグラフィ検査と合わせて行うことで乳がんの発見率が高くなるため、マンモグラフィの追加撮影を行う場合もあります。

また、このほかにMRI検査などの画像診断を行う場合もあります。
この結果、異常なし、または良性の病変であることが判れば、また2年後に検診を受ければ大丈夫です。
ただし、良性であっても病変が認められた場合は、医師の指示に従いましょう。

細胞診・組織診

がんが疑われる場合や、画像診断で良性か悪性かの区別がつかない病変が認められた場合に行われます。
しこりに細い針を刺して細胞を採取する「細胞診」、やや太めの針を刺して組織の一部を採取する「組織診」などがあります。
この段階で乳がんであることが判明したら、医師と話し合い、治療に入ることになります。

若い世代の検診について

自治体などで行なっている乳がん検診は、40代以降が対象です。20代、30代の若い世代は検診を受けなくても大丈夫なのでしょうか?

初期のがん発見率が高いマンモグラフィですが、実は、若い人に対しては乳がんを発見できないケースも多いようです。
その理由は、若い人は乳腺濃度が濃いという点が挙げられます。

この点では、エコーは乳腺濃度に影響は受けないとされていますが、実施する技術者によって差があるため、まだ死亡率が下げられるという結論にまでは至っていないのが実情です。
このため、若い年齢で乳がん検診を受けても、正しく発見できる可能性は限られてきてしまうわけです。

また、この世代の乳がんは稀なため、がんが見つかるメリットよりも検診を行うデメリットの方が大きくなるという理由から、月に1度のセルフチェックが推奨されています。

乳がん しこり 検診

もし胸やワキに「しこり」を感じたら・・・

「乳がんと診断されたら怖いから、病院へは行かない」と言う人がいます。
小さなお子さんをお持ちの方や、お仕事が忙しい方、ご家族の介護をしていらっしゃる方など、「自分の都合で入院なんてしていられない」と言う人はたくさんいらっしゃいます。

でも、考えてみてください。

本当にもし乳がんだったら、発見が遅かったら、もっと長い治療が待っているかもしれません。
何より、あなたの大切な命が失われてしまうかもしれません。
お子さんを置いて、大切な仕事を半ばにして、遠いところへ旅立たなくてはならないかもしれないのです。

繰り返しになりますが、乳がんは早期発見すれば、ほとんどが治ります。
少しの治療で治る初期の乳がんは、決して怖い病気ではないのです。
もしも、胸や脇にしこりを感じたら……大切な人のために、すぐに病院へ行きましょう。

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