乳がんの基

おっぱいが小さいと乳がんになりにくい?~乳がんのウソ・ホント

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おっぱいのサイズと乳がんのリスクは関係ある?

「おっぱいが小さければ乳がんにはならない」、その一方で「おっぱいが大きい人は
乳がんになりやすい」という人がいますが、果たして本当でしょうか?

おっぱい

乳房の内部には乳腺と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経などがあります。
乳腺組織は15~20の腺葉で構成されています。腺葉は、乳汁を作る小葉と乳汁を運ぶ乳管から出来ています。
乳がんは小葉細胞や乳管細胞が悪性化するもので、乳管を伝わって周囲に広がったり、乳管の壁を破って乳管の外に飛び出し、さらにはそこからリンパ管や血管に入り込み、肺、肝臓、骨などに転移していきます。

乳腺があれば、乳がんが発症する可能性があります。
そもそも乳房の大きさの違いは乳腺の量の違いとは比例しないので、「小さい胸=乳腺組織が少ない」ということではありません。

米国の女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが乳がんと卵巣がんを予防するため、両側の乳房と卵巣・卵管を切除する手術を受けたという報道は、世界中の人々を驚かせました。
なぜ彼女が手術を受けたのか。
それは彼女の祖母、母、叔母が乳がん、卵巣がんで亡くなったからでした。そして自分が遺伝性乳癌の家系であることがわかったからです。

手術

がんの5~10%は遺伝的要因が強く関わることがわかっていますが、アンジェリーナ・ジョリーさんの場合はBRCA1(がんの発症を抑制する遺伝子)に異常があり、何もしなければ87%の確率で乳がんを発症し、50%の確率で卵巣がんになると診断されていたのです。
アンジェリーナ・ジョリーさんは、まず胸の乳首と乳輪の組織を調べ、病変がないことを確認、胸の乳輪と乳首を残して乳房の内部を切除しました。

もう一度言いますが、乳腺があれば乳がんを発症する可能性があるのです。

おっぱいが小さければ乳がんになりにくい、のウソ

乳房には脂肪組織と乳腺組織がありますが、乳がんは乳腺から発生するがんで、脂肪から発生するものではありません。
乳房が小さい=乳腺が少ないというわけではありませんので、「おっぱいが小さいから乳がんの心配がない」は間違いです。

乳がんというと女性特有の病気だと思われがちですが、男性もかかることがあります。
男性のおっぱいは小さく膨らみもほとんどありません。
それでも少量の乳腺は存在します。

乳腺

乳がんにかかる要因は、遺伝的要素が5~10%といわれていますが、乳がんの多い家系であれば、女性に限らず男性にも発生する可能性が高くなります。
他にはエストロゲンを分解する肝臓が正常に機能していない、許容範囲を超える放射線を浴びる、などが原因といわれています。

男性の場合、浸潤性乳管がんという乳腺にある乳管から発症するものがほとんどで、胸にシコリや痛みを感じて病院へ行ったところ、乳がんと診断されて驚くケースが多いようです。
男性は乳房に脂肪が少ないため、がん細胞が周囲の組織に浸潤しやすく、これによってリンパ節への転移や、血液やリンパ液に乗って肺や骨、肝臓などの臓器に転移する可能性が高くなりがちです。

男性の小さなおっぱいでもマンモグラフィの撮影は可能です。
女性で「私は胸が小さいのではさめない」という人がいますが、どんな人でもマンモグラフィの機械に胸をはさんで撮影することができます(乳房の大きさではほぼ問題ありませんが、肋骨の形によっては撮影できない場合があります)。

おっぱいの大きさとデンスブレスト

日本人女性の乳房の特徴に「デンスブレスト」(高濃度乳腺)があります。
デンス(dense)は濃度が濃い、ブレスト(breast)は胸、という意味。
乳房内部は脂肪と乳腺組織でできており、乳腺組織が多い乳房のことを「デンスブレスト」と呼びます。
乳房の大きさや出産経験の有無などは関係ありません。

日本乳癌検診学会誌によると日本人女性の7割は高濃度乳腺で、111人の検診結果を年代別に解析すると、次の研究結果がもたらされたようです。

  • 40代の27例では、マンモグラフィでがんを発見しにくい「不均一高濃度」「高濃度」の人が89%
  • 50代の30例でも、57%がデンスブレストに該当
  • 若い人ほど高濃度の割合が高い

マンモグラフィの画像は、脂肪は黒く腫瘍は白く写ります。
デンスブレストの場合、乳腺が密集して全体的に白く写るため、腫瘍が見つかりにくいということになります。

マンモグラフィでは乳腺の濃度は4段階に分けられます。

  • 脂肪性
  • 乳腺散財
  • 不均一高濃度
  • 高濃度

このうち「不均一高濃度」と「高濃度」がデンスブレストです。
デンスブレストの場合は、マンモグラフィ検査の結果が「異常なし」であっても、シコリが隠れて写っていないだけという可能性もあります。
このためデンスブレストの場合は超音波検査も併用で受けることが推奨されています。

アメリカの「Are You Dense?」運動

乳がん予防先進国ともいえるアメリカでは「Are You Dense?」という運動が広がっています。
ナンシーさんは毎年マンモグラフィ検診を受け、「異常なし」と診断されていました。
しかしあるとき、乳がんが発見されました。
彼女はデンスブレストだったため、異常が見つからなかったのです。

超音波検査を受けたところ25セントコイン(直径約25mm)大の腫瘍と13個のリンパ節転移が見つかりました。
「6週間前にマンモグラフィ検診を受けたばかりなのに。しかも毎年受診して規則正しい生活を送ってきたというのに」
にわかには信じられず、さまざまな文献を読んだナンシーさんは、当時のアメリカ人女性の40パーセントがデンスブレストであり、デンスブレストに対してマンモグラフィは検出感度が低く、超音波検査やMRI検査と併用する方法があることを知ったといいます。

検査

そして「私と同じような辛い経験をする人を減らしたい!」と、デンスブレストかどうか検査を受けた人や患者さんに伝える重要性を訴え、(デンスブレストの場合は)超音波検査やMRIも受けるべき、と「Are You Dense?」運動を始めました。
現在アメリカでは、乳がん検査の受診者に乳腺濃度を知らせることを義務づける州が増えています。

日本ではまだ乳腺濃度を知らせる義務はありません。
これから乳がん検診を受けることがあったら「私はデンスブレストですか?」とぜひ確認してください。
もしデンスブレストであれば、マンモグラフィと併せて超音波検査も受けましょう。

「私はデンスブレストだからマンモグラフィではなく超音波検査だけでいいのでは?
そのほうが手間も省けるし」という人がいらっしゃいますが、必ずマンモグラフィも
受けてください。石灰化で見つかるタイプの乳がんは超音波検査ではほとんど見えず、マンモグラフィでしか見えないことも多いからです。

おっぱいの大きさと乳がん検診・検査

マンモグラフィ検診は半身裸で装置の前に立ち、乳房を装置の撮影台にのせて行います。
圧迫板とよばれるプラスチックの板で乳房を撮影台に密着させて厚さ4~5cmくらいまで圧迫、所定の厚みになったところで撮影します(一般的に左右それぞれ撮影方向を変えて2枚ずつ、合計4枚撮影)。

「胸が小さいのでマンモグラフィは無理」と思われがちですが、男性の乳がん検査でも使用されていますから問題はありません。
ただし、シリコンや生理的食塩水バックを入れるタイプの豊胸手術を受けている場合、マンモグラフィによる圧迫で、これらが破損する可能性があります。
基本的にはバックを挿入するタイプの豊胸術も、脂肪やヒアルロン酸を注入するタイプの豊胸術も、何らかの異常として画像に写りますので、検診ではなく病院受診での定期検査がおすすめです。

マンモグラフィ

マンモグラフィは痛い、というイメージがあります。
時期を選ぶことが可能であれば、乳腺が張る月経前や月経中は避け、月経後乳腺が柔らかくなっている時期に検査を受けると痛みは軽減するでしょう。

厚生労働省の平成25年国民生活基礎調査によると、他のがん検診について次のようなデータが報告されているようです。

  • 肺がん検診の受診率:40~69歳の受診率が男性47.5%、女性が37.4%
  • 胃がん検診の受診率:男性が45.8%、女性は33.8%
  • 大腸がん検診の受診率:男性は41.4%、女性は34.5%

対して、乳がん検診の受診率は34.2%です。
乳がんは検診によってがんが発見される割合が最も高いものの、受診率は低い傾向があります。

乳がんについて認識してほしいことは・・・

「おっぱいが小さいので乳がんにかかりにくい」
「胸が小さい人はマンモグラフィ検査ができない」
といった情報に惑わされ、定期検診を受けないのは間違いです。

乳腺があれば女性ばかりでなく男性も乳がんにかかること。
マンモグラフィ検査で異常なしと診断されても、デンスブレストの場合、乳がんが潜んでいる可能性があるので、超音波検査を受けたほうがいいということ。

この事実を、しっかりと認識してほしいと思います

乳がんに関わらず、どんな疾患でも早期発見が大切な命を守る“切り札”になります。
定期検診を受けて少しでも疑わしいところがあれば、速やかに専門医を受診しましょう。

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