乳がんの「しこり」。最近、乳がんにかかったことを明かした芸能人のブログやSNSなどの影響もあり、乳がんには「しこり」というものができることが、以前よりも広く知られるようになってきています。
それでも、実際の「しこり」について、どのようなものなのか、どんな状態なのか、どこにできるのかまでは、なかなか分からないのではないでしょうか?
また、ひとくちに「しこり」と言っても、人によって千差万別です。
今回は、乳がんのしこりと、そのチェック方法についてみていきましょう。
乳がんの「しこり」ってどんなもの?
日常生活において、乳がんに気づいた理由で一番多いのは「しこり」です。
特に入浴中や着替えのときなどは胸に触れるので、「あれ?」と、しこりのようなものがあることに気がつく人が多いようです。
胸にしこりを感じるのは、乳がんではなく他の病気だったり、特に異常がない場合もありますが、そういった「しこり」と乳がんの「しこり」には、少し違いがあります。
乳がんのしこりは、まずゴリっと硬いこと。
そして、表面がデコボコで境目がはっきりしないこと、形が整っていないこと、周囲の組織に癒着するためあまり動かないなどの特徴があります。
とは言っても、しこりの状態は、その人の乳房の大きさや硬さ、しこりのできた場所などによって異なります。
医師が触診をする場合は、しこりの場所や大きさ、硬さ、境目がはっきりしているかどうか、また、よく動くかを調べます。
ただし最終的な診断をするには、病理検査をする必要があります。
もし、しこりに気づいたら、すぐに病院で診断を受けましょう。
乳がんのしこりは、どんな場所にできるの?
乳がんの治療で最も大切なことは、早期発見することです。
早期に適切な治療を受けると、治る可能性が高くなります。
乳がんは、身体の表面に近いところに発生します。
乳房は自分で触れることができるので、自分で観察したり触れたりすることにより、がんを発見できる可能性が高いのです。
日本乳がん学会による「全国乳がん患者登録調査報告」(2014年)によると、登録された7万8897症例のうち、自己検診(セルフチェック)にとって発見されたものが4万3225例と54.8%にものぼり、検診での発見率33.4%をはるかに超えています。
乳がんの早期発見のためには、定期的な検診受診にくわえ、セルフチェックを行う習慣をつけましょう。
しこりが一番できやすい場所は、乳頭を中心に見て外側上部の部分で、5割近くを占めています。
しかし、他の部位での発生も決して少ないわけではありません。次いで上部の内側、下部の外側、内側と続きます。セルフチェックの際には、乳房全体を丁寧に調べましょう。
乳がんのしこりはゴリッとかなり硬い傾向にあります。また、周囲の組織に癒着するため、あまり動きません。また、痛みはありません。
乳がんのセルフチェック方法
では、セルフチェックのやり方を覚えておきましょう。
- セルフチェックの時期
- セルフチェックの方法
セルフチェックの時期
乳房が張っている時期だとしこりが判りにくいので、張りや痛みがなく、乳房がやわらかなときに行うのが良いでしょう。
閉経前の人は、月経が終わってから1週間~10日の間に行いましょう。
閉経後の人は、毎月1回、行います。忘れないようにするため、セルフチェックの日を決めて行うといいですね。
たとえば毎月1日に行うとか、自分が生まれた日に行うなど決めておくと忘れにくいでしょう。
また、新年にカレンダーや手帳を用意したとき、1年分の実施日にチェックを付けてしておくのもいい方法です。
セルフチェックの方法
では、セルフチェックの方法とチェックポイントをご紹介します。
- 鏡の前で
- お風呂で
- 寝転んで
- 乳首のチェック
- 下着を確認する
1. 鏡の前で
鏡の前に立ち、両手を上げた状態の乳房と乳首を、正面・側面・斜めから観察しましょう。
次に、両手を下げた状態でも観察します。
<チェックポイント>
- 乳房の表面に凹みや引きつれはありませんか?
- 左右の乳房の形や大きさに変化はありませんか?
- 乳首がへこんだり、ただれができたりしていませんか?
乳房にがんができると、皮膚表面が内側に引っ張られて、エクボのようなくぼみができることがあります。
これは、乳房の中にできたがんが、乳腺や乳腺につながる皮膚の組織を引っ張るためです。両手を上げてみると、よりはっきりわかる場合があります。
乳房の形もよく観察してみましょう。これまでほぼ左右対称、同じような張りだったはずなのに、変化はないでしょうか。
<チェックポイント>
- 形・大きさなど、明らかな左右差が出ていませんか?
また、皮膚の様子も観察しましょう。
<チェックポイント>
- 赤っぽくなってむくんだ感じに腫れていませんか?
- 皮膚にオレンジの皮のような凹凸が現れていませんか?
- 皮膚が熱っぽく感じられませんか?
これらの症状も乳がんの疑いがあります。がんが皮下のリンパ管に浸潤した場合に見られる症状です。がんと無関係な炎症で起こることもあります。
2. お風呂で
入浴時、皮膚の凸凹がよくわかるよう、手に石けんを付けて滑りやすくしておきます。
指をそろえ、指全体で“の”の字を書くようにして乳房全体を触ってみましょう。
続いて、指を揃えて伸ばし、腋の下に差し入れ、指先で確認します。
<チェックポイント>
- しこりはありませんか?
- リンパ節は腫れていませんか?
鎖骨の下や、乳房の下も忘れずにチェックしましょう。
腋の下には乳房につながるリンパ節があるので、腋の下にしこりができたことで乳がんが発見されるケースもあります。
乳がんは、左右の乳房ともに「外側の上部」に発生しやすいので、特に注意して調べましょう。
3. 寝転んで
薄いクッションか折りたたんだバスタオルを肩の下に敷き、仰向けに寝ます。
右手を頭の下へ入れ、左手の指をそろえて伸ばして右乳房の内側を調べます。
左手の指の腹で右乳房の内側(乳首よりも内側)から胸の中央に向かって、まんべんなく滑らせます。
<チェックポイント>
- しこりや変形はありませんか?
このとき、乳房をわしづかみにしないようにしましょう。
乳房全体がしこりのように感じてしまいます。
つかむのではなく、あくまで滑らせるように動かします。反対側の乳房も同様に行いましょう。
4. 乳首のチェック
左右の乳首を、乳をしぼるような感じで軽くつまみます。
<チェックポイント>
- 血性の分泌物は出ませんか?
乳首の皮膚表面にがん細胞ができるタイプの乳がんでは、乳首の先端がジュクジュクした擦り傷のようになることがあります。
これは「パジェット病」といわれるもので、乳がんだと気づかず皮膚科を受診するケースが多いようです。
また、乳首の見た目もチェックしましょう。
<チェックポイント>
- かさぶたや、ただれはありませんか?
- 乳首が極端にへこんで(陥没して)いませんか?
- 引きつれるたり、両方の乳首の向きが変わっていませんか?
- 左右で乳首の高さが異なっていませんか?
こうした症状も、乳がんの可能性があります。
5. 下着を確認する
意外かもしれませんが、ブラジャーもチェックします。
<チェックポイント>
- ブラジャーの乳首が当たる部分が汚れていませんか?
もし汚れていた場合は、乳首に異変がないかを細かくチェックしてください。
乳首には母乳が出てくる小さな孔がいくつもあいていますが、乳首から分泌液が出ている場合、両方の乳首にある小さな孔の何ヵ所かから白~無色の液が出ている状態なら基本的に心配いりません。
しかし、片方の乳首のひとつの孔から茶褐色または赤色の液が出ていたり、いつも下着の片方だけにシミが付いていたりするような場合は注意が必要です。
乳がんの9割が「乳管」内部に発生しますが、孔から色のついた分泌液が出るということは、孔につながる乳管もしくは小葉にがんがある可能性が高いからです。
分かりにくい場合は、ティッシュペーパーを挟むなどして分泌液がないか確認するとよいでしょう。
このように、普段から乳房の状態を確認していると、万が一病変が生じたとき、小さな変化であっても気づきやすくなります。
もし少しでも変化や異変に気づいたら、すぐに病院を受診しましょう。
乳がん検診がないからこそのセルフチェック
自治体などの乳がん検診は、40代以降からとなっています。
近年、若い世代の乳がんが増えていると言われますが、これは全体数が増えているからで、20代、30代の女性の罹患率は横ばいです。
そのため、メリット・デメリットを考えた結果、乳がん検診は40代以降とされているのです。
それでも、乳がんにかかる若い世代がゼロというわけではありません。
検診がないからこそ、セルフチェックが大切です。
ぜひチェックのやり方を覚えて、早期発見に努めましょう。