用語集

乳がん治療用語集:がんではない乳腺・乳管の腫瘍と乳房の痛み

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

近年、日本女性の乳がん罹患率が急上昇しています。乳房に少しでも異常があると、「もしかしたら乳がんにかかってしまったのでは……」と不安になりますよね。
でも、しこりがあるからといって、必ずしも乳がんとは限りません。しこりを感じるケースが多いため、乳がんと間違えやすい病気がいくつかあります。いざというときに慌てないよう、そんな病気について知っておきましょう。

乳房や胸にしこり・痛みがあっても乳がんとは限りません

乳腺葉状腫瘍

乳腺・乳管など乳房の構造を知りましょう乳腺にできる腫瘍です。線維腺腫と似ていますが、しこりが急激に大きくなるのが特徴です。乳腺腫瘍のなかでは少ない方で、0.3%~0.5%といわれています。

30~50代にかけて発症することが多いといわれていますが、なかでも40代の女性に最も多いようです。若い年代では良性、年配の方では悪性のケースが多いという特徴があります。

「葉状」という名前は、腫瘍細胞が葉っぱのような構造をとって増殖することに由来しています。

乳腺葉状腫瘍の原因

乳腺葉状腫瘍は、今のところ原因不明の病気です。

乳がんが乳腺の腺管上皮から発生するのに対し、乳腺葉状腫瘍は間質細胞が腫瘍化することははっきりしていますが、なぜ腫瘍化するのかなど原因は医学的に解明されていません。

乳腺葉状腫瘍の症状

乳房に、急速に大きくなるしこりが現れます。数カ月で10センチ以上の腫瘤になることもあります。複数できる場合が多いですが、1つだけの場合もあります。

しこりは、触るとやや硬く、よく動く楕円形で、周囲との境界がはっきりしています。

分葉状に大きくなっていくのが特徴です。しこりが大きくなると、乳房の形や大きさが違ってくるのが外観からもわかるようになります。

乳腺葉状腫瘍の検査

小さな乳腺葉状腫瘍は乳腺線維線種との区別が困難で、そのためには正確な検査を行わなくてはなりません。

乳腺葉状腫瘍の検査は、問診と触診の上、超音波検査とマンモグラフィー、さらに針生検をして診断します。超音波検査で分葉状構造があれば、葉状腫瘍が疑われます。

乳腺葉状腫瘍の治療

乳腺葉状腫瘍の治療は、悪性・良性に関わらず完全腫瘍摘出が原則です。
完全に腫瘍を摘出すれば治癒できますが、もしも取り残しがあると、高確率で局所再発が見られます。

乳がんと違い、リンパ節転移がないので、通常は腫瘍部分のみの切除ですが、しこりが大きい時や悪性の場合などには、乳房の全摘をしなくてはならないこともあります。

乳腺葉状腫瘍は手術で摘出します

手術後、再発がなければ予後は良好ですが、悪性・良性を問わず、約20%の局所再発があります。そのため、術後も経過観察が必要です。

再発したり、悪性化したりした場合には、高確率で肺や骨に転移します。がんではないので、抗がん剤や放射線療法は効きにくく、現在のところ十分な治療法がありません。

乳管内乳頭腫

乳管内乳頭腫は、乳管の中にできる上皮性腫瘍(消化管の粘膜や皮膚の表皮のように、表面をおおう細胞=上皮に発生する腫瘍)です。乳管を形成している乳管上皮細胞が乳頭状に増殖している、良性の腫瘍です。
乳頭近くの比較的太い乳管に発生することが多い病気ですが、末梢乳管に発生するケースもあります。

乳管内乳頭腫の原因

現在のところ、はっきりした原因は不明です。
ただ、ほとんどの乳頭腫ではホルモン受容体が陽性なので、卵巣ホルモンが何らかの影響を与えているものと考えられています。

乳管内乳頭腫そのものががん化するとは考えられていませんが、将来乳がんを発症するリスクが高まる病気として注意しなくてはなりません。

乳管内乳頭腫の症状

乳頭から分泌物が出ることがあります。

分泌物は茶褐色や赤い血性の場合、粘り気の少ない漿液性(しょうえきせい)の場合が半々で、水のように透明なこともあります。分泌量は、下着に少し付着する程度から、母乳のように大量に出るケースまでさまざまです。

分泌物が下着に付着することで気がつくケースがほとんどですが、最近では、乳がん検診の際の超音波検査で発見されるケースも増えています。分泌物が乳腺内にたまると、しこりとして触れるものもあります。

乳管内乳頭腫の検査

まずは、通常の乳がんの検査のように、マンモグラフィと乳房超音波検査を行います。

マンモグラフィと乳房超音波検査を行います超音波検査で病変が特定できる場合は、細胞診や針生検を行うこともあります。また、分泌物が出ている乳管開口部から造影剤を注入し、レントゲン撮影する「乳管造影」を行うこともあります。

しかし、乳管内乳頭腫と乳頭状型の非浸潤性乳がんとの鑑別診断は非常に難しいので、針生検で乳管内乳頭腫とされても、画像診断で非浸潤性乳管がんが疑われる場合には切開しての生検によって診断を確定する必要があります。

一部の施設では乳管内視鏡を行っていますが、まだ一般的に行われる検査ではありません。

乳管内乳頭腫の治療

乳管内乳頭腫と診断されたら、まずは経過観察が基本です。非浸潤性乳管がんとの区別が難しいこともありますので、必ず定期的に検査を受けてください。

乳房の痛みについて

乳がんの疑いがあればセルフチェックを乳房に痛みを感じて乳がんを疑い、乳腺科を訪れる女性はたくさんいます。
でも、実は、痛みは乳がんの症状ではないことがほとんどです。

乳がんの場合、しこりが大きくなると痛みを伴うことがありますが、初期においては、しこりに触れてもほとんど痛みはありません。

乳房が張ったり、引きつれたり、乳房に痛みを感じたりするのは、多くの場合、ホルモンのバランスの影響です。生理のときに乳房が張ることがあるように、正常なホルモンバランスの変動に伴い、乳房にも変化が起こるものなのです。

痛みを感じたことから検査をして、乳がんが見つかるケースもありますが、多くの場合は乳がんによって痛みが出ているわけではありません。
乳がんかどうかを知るためには、まず、下記のセルフチェックをしてみましょう。

  • 乳房にしこりがある
  • 腋の下にしこりがある
  • 乳房の皮膚に引きつれがある
  • 乳房に「えくぼ」のようなくぼみがある
  • 左右の乳房を比べて、大きさや張りの差がある
  • 片方の乳頭の表面がジュクジュクしている状態が続く
  • 片方の乳頭から、血性の分泌が出る

このような症状がある場合は、乳がんが疑われます。

痛みが乳がんの症状ではないと言っても、「痛みがないから乳がんではない」と考えるのは早計です。定期的に乳がん検診を受けることが一番ですが、何か乳房にいつもとは違った違和感をおぼえたら、乳腺科で相談をしてみるのが良いですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。