用語集

乳がん治療用語集:5年生存率・10年生存率・ステージについて

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現代の日本人は、一生のうち2人に1人が何らかのがんを患うといわれています。
がんは、遺伝子に傷がつくことによって起きる病気です。遺伝子に傷がつくと、異常な細胞ができ、増殖していきます。
これを「がん化」といいます。
この異常な細胞は次第にかたまりになり、周囲に広がりやすくなっていきます。やがて血管などに入り込み、全身に広がり、転移していきます。

がんは、喫煙や過労、栄養などの生活習慣と関係がある病気の一つですが、なかでも乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンが発がんや増殖に多く関与していることも分かっています。
経口の女性ホルモン剤も長期にわたって服用すると発がんのリスクを上げるといわれています。

乳がんにはホルモンの分泌が大きく関わっている。

さて、女性のがんに関しては、患者数と死亡数に違いがあります。
女性がかかるがんは、圧倒的に乳がんが多いといわれ、2012年の男女別「部位別がん患者数」のランキングでも、女性では乳がんが1位。2位の大腸がんと1万人以上の差をつけています。
しかし、2014年に厚生労働省が発表した「人口動態統計」を見ると、乳がんは死亡者数ではなんと5位なのです。

なぜ、こんなに差があるのでしょうか?

これは、乳がんは他の部位のがんと比べて比較的薬物治療が効きやすいタイプのがんであること、また、胃や大腸などの内臓器と違い身体の表面の臓器のがんなので 人間が生きていくために必要な栄養の消化吸収などに直接は影響をしないこと、などが考えられます。
そしてもう一つ、その大きな要因には、近年の乳がん検診の普及や啓発運動があると言ってよいでしょう。

乳がん治療においては「早期発見」が重要。がんに打ち勝ついちばんの近道は、早期発見です。

がんは、日々健康に気をつけていても襲いかかってきます。一方で、医学も日々進歩しており、近年では早期に発見すればするほど生存率は高まっているのです。
ぜひ、乳がんのステージやその状態を予備知識として知っておきましょう。

5年生存率

がんについて、「5年生存率」という言葉をよく耳にします。
がんの種類によっても異なりますが、5年生存率は、治癒のひとつの目安とされており、治療の結果、“再発がなく”生存して5年経てば、がんが治癒したと考えられています。
しかし、間違えてはいけない点があります。

「5年生存率」とは、「がんと診断されてから、また、がんの治療開始から5年後に生存している人の割合」のことです。

5年生存率とは?たとえば、「5年生存率が30%」とは、ある時点でがんと診断された人が100人いたとして、そこから5年後に30人が生きており、70人は亡くなっているという意味です。
ただし、この「生きている人」とは、完全に治癒した人という意味ではありません。
「再発せずに生存している人」と、「再発はしてしまったものの、生存している人」が含まれているのです。

つまり5年生存率とは、「がんの治療開始から5年後に、再発の有無に関わらず生存している人の割合」のことをいうわけです。
5年生存率は、がんが完全に治る可能性とは限りません。しかし、また同時に、必ずがんで亡くなっているとも限らないのです。

10年生存率

2016年1月、全国がん(成人病)センター協議会が、がんの「10年生存率」を発表しました。
これは、1999年から2002年までにがんと診断された約3万5000人を追跡調査し、日本で初めて集計・公表したデータです。

これまでは「5年生存率」が、がん治療の目安とされてきましたが、近年、新しい抗がん剤などの登場によって、再発しても長期間生存できるようになってきました。
そうなると、5年生存率の、“治癒した”と判断する指標としての意味が薄れてきてしまいます。
そこで、新たな指標となるデータとして「10年生存率」が発表されたのです。

がん治療は常に進化している。しかし、現在は、このデータ収集時からすでに15年が経っています。また、その間にがんの治療技術は格段に進歩してきました。
そのため、今のところは、何年分の生存率を新たな指標とするべきなのかは、まだ定まっていません。

がんの治療技術は日進月歩です。今後、このデータがさらに精密にされていく間には、現在の10年生存率が示す数字よりも、さらに高い確率でがんを克服し、10年後も生き延びる人が増えていると考えられます。

乳がんのステージ

がんは、進行度によってステージ分けされています。
乳がんも同様で、ステージ0~4に分けられ、ステージ4は最もがんが進行していることを表しています。

ステージ0

がんが乳腺の中に止まっている状態(非浸潤)で、極めて早期の乳がんです。
手術で病巣を切除することで、ほぼ完全に乳がんを治すことができます。術後の薬物療法は必要としないケースが多いです。
5年生存率は95.5%。

ステージ1

シコリの大きさが2cm以下で、腋の下のリンパ節には転移していない状態です。
手術±放射線治療(乳房温存手術の場合)が行われます。また術後の薬物治療も必要です。
5年生存率は89.1%。

ステージ2

シコリの大きさが2cmから5cm。またはシコリの大きさが2cm以下でも腋の下のリンパ節に転移している状態です。
治療法は、基本的にステージ1と基本的に同様ですが、手術方法としてはステージ1よりは乳房切除(全摘)のケースが多くなります。

ステージ2a

シコリの大きさが2cm以下で、腋の下のリンパ節へ転移がある場合、またはシコリの大きさが2~5cmで脇下のリンパ節への転移がない場合をいいます。

ステージ2b

シコリの大きさが2~5cmで腋の下のリンパ節へ転移を認めるケースです。
5年生存率は78.6%。

乳がんの早期発見は乳がん検診から。

ステージ3

ステージ3a

シコリの大きさが2cm以下で、腋の下のリンパ節に転移があり、さらにリンパ節が癒着して周辺の組織に固定している状態などをいいます。
5年生存率は58.7%。

ステージ3b

シコリの大きさや腋の下のリンパ節への転移に関係なく、シコリが胸壁に固定しているか、または皮膚にシコリが顔を出したり皮膚が崩れたり、浮腫んでいるような状態です。
5年生存率は約52%。

ステージ3c

シコリの大きさに関わらず、腋の下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移しているケースです。あるいは、鎖骨の上下にあるリンパ節に転移があるケースをいいます。
5年生存率は約50%を下回ります。

ステージ4

がんが乳房だけに留まらず、他の離れた臓器まで転移を認める場合をいいます。乳がんから転移しやすいと言われている臓器は骨、肺、肝臓、脳などです。
抗癌剤、ホルモン療法、分子標的薬など薬物療法が治療の中心となります。
5年生存率は25.5%。

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