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乳がんと妊娠・出産の関係性~妊娠中に検診を受けても大丈夫?

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妊娠中に乳がん検診を受けても大丈夫?

妊婦

「妊娠、出産、授乳期」は乳腺が非常に発達しますので、何も自覚症状がない場合に定期検診として乳がん検診を受ける必要はありません。
しかし、以前からシコリなどを指摘されている場合の定期検査や、シコリなどの自覚症状を感じた時は別です。
「妊娠、出産、授乳期」には検査ができないと思っている方も結構いらっしゃいますが、異常が見えにくいことには変わりないものの、だからといって検査ができないわけではありません。

乳がん検診といえばマンモグラフィが主体ですが、マンモグラフィは乳房専用のX線撮影装置、つまりレントゲン検査を行う装置です。
マンモグラフィで受ける放射線の線量は1~3ミリグレイと、胎児が影響を受けるとされる線量100ミリグレイに比べたらはるかに少ないですし、基本的には乳房への被爆であって胎児のいる腹部にはほぼ影響はありません。
ただし、本当にマンモグラフィが必要な状況と判断されたわけでなければ、やはり妊娠中はマンモグラフィではなく超音波検査(エコー検査)が望ましいでしょう。

エコー

超音波検査は胎内の赤ちゃんの状態を診断するために使用されるものと同じで、ジェルを胸に塗って、プローブと呼ばれる機械を当てて乳房内部を映します。
超音波検査は、文字通り超音波という特別な音を対象物にあてて、音が反射した様子を画像化する医療機器。
放射線ではなく音を用いるため、妊娠中や出産後でも安心して受けることができます。
また、妊娠中は乳腺が発達してデンスブレスト(高濃度乳房)の状態になりやすく、乳がんの発見が困難になりやすいケースがあります。
デンスブレストの場合には、超音波検査が適している場合も多いです。

シコリのようなものがある、皮膚の表面にひきつれがある、など少しでも違和感をおぼえたら乳腺科を受診してください。

出産・授乳歴がないと乳がんの発がん率が上がる?

乳がんになるリスクを高めてしまう危険因子には次のようなものがあります。

《確実にリスクが高い》
・出産の経験がない
・授乳の経験がない
・家族(母親、姉妹など)に、乳がんにかかった人がいる
・乳がんや良性の乳腺疾患になったことがある
・初めての出産が30歳以上だった
・身長が高い
・肥満である(閉経後)

《ほぼ確実にリスクが高い》
・初潮がきた年齢が低い
・閉経した年齢が遅い
・生まれたときの体重が重い
・飲酒量が多い
・喫煙の習慣がある

なぜこれらのようなことがいえるのかというと、乳がんが発生したり進行したりする原因のひとつに、「エストロゲン」という女性ホルモンの影響があるからです。
海外の研究によると出産経験のない人とある人を比較した場合、出産経験のない人が乳がんを発症する確率は経験のある人の約1.2~1.7倍、日本はそれよりも高い2.2倍と報告されています。

妊娠をすると「プロゲステロン」という女性ホルモンが優位になり、乳がんの原因となるエストロゲンの影響が少なくなります。
そのため出産経験のない女性はエストロゲンの影響を受けやすくなるため、乳がんにかかるリスクが高くなるといわれています。

体温

現在の日本は女性の社会進出が進み、1人の女性が出産する回数が低下している傾向にあります。
厚生労働省が実施している平成28年の人口動態統計の年間推計によると、出生数が過去最少の約98万人。
年間の出生数が100万人を割るのは昭和22年の統計開始以来、初めてのことです。

また、女性が生涯に産む子供の推定人数を示す合計特殊出生率は、過去最低だったのは平成17年の1.26、27年は1.45と報告されています。
昭和22~24年の「第1次ベビーブーム」期(ピーク時の24年には270万人)と、その時期に生まれた女性による46~49年の「第2次ベビーブーム」期(ピーク時の48年には209万人)に比べるとかなりの減少傾向にあります。

これらのことから、1人の人が産む子供の数が減ったことに加え、一度も出産しない人が増えていることがわかります。

では授乳歴ではどうでしょうか?

授乳

授乳のとき、脳下垂体からプロラクチンとオキシトシンというホルモンが分泌され、母乳を生成するほか、授乳しやすいよう働きかけます。
プロラクチンは母体の排卵を抑え、エストロゲンの量が減ります。
そのため、エストロゲンにさらされる期間が短くなり、乳がんになるリスクが低下すると考えられています。

乳がんと妊娠・出産の関係性で知っておきたいこと

仮に、妊娠中に乳がんが発見されても、出産は可能です。
ただし、妊娠週数や進行具合などによって対応はケースバイケースとなります。
状況に応じて、出産後に手術や薬物治療を行うこともありますし、妊娠中に抗がん剤治療を行ってから出産する場合もあります。

出産

乳がんそのものが胎児に悪影響を及ぼすことはありません。
母親のがん細胞が胎児にうつる心配はなく、出産後授乳しても、赤ちゃんに害はありません。
ただし、抗がん剤服用中の授乳は控えてください。

乳がん治療後に妊娠する人もたくさんいます。
乳がんの治療後に妊娠しても、生存率が低下することはありません。
過去に抗がん剤やホルモン剤による治療を受けた経験があっても流産や早産、乳がんの再発リスクが高まることはありません。
「乳がん再発が心配なので出産を諦める」という話を耳にしますが自己判断せず、専門医に相談しましょう。

相談

また、現在パートナーはいないけれど将来は赤ちゃんが欲しい、という人もいらっしゃるでしょう。
この場合、薬物療法で卵巣機能の低下や無月経になるまえに、卵子や卵巣組織を凍結保存しておいて、治療が完了してから妊娠・出産するという方法があります。
すでにパートナーがいる場合は、受精卵の凍結保存も選択肢の一つです。

乳がんの治療前にできるだけ将来の妊娠に対する不安を解消しておく。
これによって、より前向きに治療に専念することができます。

不安・疑問があれば医師にご相談ください

乳がんだからと一様に妊娠・出産を諦めることはありません。状況によっては十分、妊娠出産が可能な場合もありえます。
定期検診を受ける、セルフチェックなどで、もし乳がんの疑いがある場合は乳腺科を受診、不安や疑問があれば遠慮なく医師に相談してください。
また、心配かけたくないからと家族に内緒にするのはよくありません。
症状やこれからのことなどを話し合い、皆で力を合わせて治療に専念しましょう。

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