日本人女性がかかるがんの1位は乳がんです。
現在、日本女性の11人に1人が乳がんにかかると言われています。
では、がんによる死亡者数も乳がんが1位なのでしょうか?
実は、そうではないのです。
2014年に厚生労働省が発表した、「人口動態統計」における、主な部位別がん死亡者数のデータを見てみると、患者数では1位であった乳がんは、死亡者数では5位と、意外と低いのです。
つまり、乳がんを克服し、上手に付き合いながら生存している人が多いということです。
これはなぜなのでしょうか?
そのカギは「早期発見」にあります。
乳がんと早期発見
乳がんは、早期発見すれば、90パーセント以上の人が治癒すると言われています。
乳がんによる死亡者数が少ないのは、早期発見して治療をはじめ、治っている人が多いからなのです。
つまり、乳がんに勝つには、早期発見・早期治療が最も重要だということです。
早期発見と、乳がんが進行した状態で見つかった場合とでは、治療や予後にこのような差があります。
早期発見した場合 | 進行した状態で見つかった場合 |
---|---|
生命が守られる | 再発率が高くなり、生命が危険になる可能性がある |
発症からの10年生存率は90%以上 | 発症からの10年生存率はⅣ期で25% |
乳房を温存しやすい | 乳房を残すのが難しい |
薬物療法(抗がん剤)が不要な場合が多い | 薬物療法(抗がん剤)を使用しなければならない場合が多い |
乳がんの症状とは?
乳がんは、早期の段階では、自覚症状があまりありません。
自覚症状は、病期の進行とともに現れます。
なかでもよく知られる症状が乳房の「しこり」です。
しこりは他のがんでも見られますが、乳がんのしこりは自分でさわって確かめることができることが、他のがんとの大きな違いです。
良性の乳房のしこりと異なり、硬く、あまり動かないことが特徴です。
また、乳頭や乳輪に湿疹やただれが見られたり、乳頭から血の混じった分泌物が出たりするときも、乳がんが疑われることがあります。
がんが進行すると、乳房にエクボのようなへこみが見られたり、皮膚が赤みを帯びて腫れたり、乳房の熱っぽさといった症状が出たり、乳房に痛みを感じることもあります。
さらに、乳がんがリンパ節に転移していた場合、わきの下の腫れやしこりが見られたり、しこりによる神経の圧迫からくる痺れなどを生じるたりすることもあります。
こうした症状は乳がん以外の病気などでも現れることがありますが、早期発見のためにも上記のような異変に気が付いたら、専門医の診断を受けることが大切です。
乳がんのステージとしこりの大きさ
乳がんは、その進行状態によってステージに分けられます。
また、そのとき、しこりはどのような状態になっているのでしょうか?
一覧表にまとめてみました。
乳がんのステージ | しこりの様子と病状 |
---|---|
ステージ0 | しこりがない状態。乳がんが乳管の中にとどまっている(非浸潤がん) |
ステージI | しこりの大きさが2cm以下。わきの下のリンパ節に転移がない状態。 |
ステージIIa | しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移がある状態。または、しこりの大きさが2~5cmで、わきの下のリンパ節に転移がない状態。 |
ステージIIb | しこりの大きさは2~5cm。わきの下のリンパ節に転移がある状態。 |
ステージIIIa | しこりの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節に転移があり、かつリンパ節が周辺組織に固定したりリンパ節同士が癒着したりしている状態。もしくは、わきの下のリンパ節転移はないが、胸骨の内側のリンパ節が腫れている状態。また、しこりの大きさが5cmより大きく、わきの下のリンパ節に転移がある状態。 |
ステージIIIb | しこりの大きさに関係なく、しこりが胸壁に固定している状態。また、皮膚がむくんだり、崩れたり、しこりが皮膚に現れたりしていることも。 |
ステージIIIc | しこりの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移がある状態。または、鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある状態。 |
ステージIV | 他の臓器に転移している状態。 |
セルフチェックの重要性
繰り返しになりますが、乳がんの治療で最も大切なのは、早期発見することです。
早期に適切な治療を受ければ受けるほど、治る可能性が高くなります。
では、どうすれば早期発見できるのでしょうか?
乳がんは、身体の表面に近いところに発生します。
乳房は自分で触れることができるので、自分で観察したり触れたりすることにより、がんを発見できる可能性が高いがんです。
日本乳がん学会「全国乳がん患者登録調査報告」(2014年)によると、登録された7万8897症例のうち、セルフチェックによって発見されたものが4万3225例と54.8%にものぼり、検診での発見率33.4%をはるかに超えています。
乳がんの早期発見のためには、定期的な検診受診に加え、セルフチェックを行う習慣をつけることが一番です。
日常生活において、乳がんに気づいた理由で一番多いのは「しこり」です。
特に入浴中や着替えのときなどは胸に触れるので、「あれ?」と、しこりのようなものがあることに気がつく人が多いようです。
乳がんのしこりは、浸潤がんが1cmを超えるくらいの大きさになると、自分で触っても「しこり」として感じられることが多くなります。
乳がんのしこりは、少し弾力性のある軟骨のような感触といわれます。「梅干しの種のよう」などと形容されることもあります。
また、乳房だけでなく、わきの下にしこりができることもあります。乳がんのしこりには、通常、痛みはありません。
また、しこりがあるからと言って乳がんとは限らず、他の病気の良性のものである可能性も高いですが、触っただけでは乳がんかそうでないのかを判別することはできません。
しこりの存在に気づいたら、すぐに病院へ行きましょう。かかるのは婦人科ではなく、乳腺科です。
セルフチェックは月1回、行いましょう。
毎月1日に行う、自分の誕生日の日に行うなど日を決めておくと忘れずに済みます。
自分の胸の健康に関心を持と続けることこそ、乳がんに打ち勝つ第一歩です。