乳がんは、早期発見が非常に重要とされており女性の中には気になっている方も多いのではないでしょうか。特に30代後半以上の女性にとっては、乳がんは決して他人事ではありません。
今回は、乳がんの早期発見についてお伝えしてまいります。これから乳がん検診を検討している方、乳がんに不安を感じている方はぜひ最後までご覧ください。

乳がんは早期発見が重要ながん
乳がんは進行すると、がん細胞が乳房内に拡散されているだけではなく、脇の下などのリンパ節や骨、肺や肝臓といった離れた臓器へ転移していくことがあるとされています。しかし、早期発見ができれば乳房内にとどまっている段階での治療ができるのです。
しかし、乳がんの初期段階では、しこりや違和感、痛みなどの自覚症状を感じにくく発見が遅れてしまうことがあります。そうならないためにも自分で判断せずに定期的な乳がん検診を受けることが重要になってくるのです。
乳がんを早期発見するためのポイント
ここからは、どうすれば乳がんを早期発見できるのかについてお伝えしていきましょう。大切なことは日常から自分の乳房の状態を意識していくことです。変化に気づいたら乳腺外来を受診すること、そして定期的な検診を受けることです。3つのポイントについて詳しく解説していきます。

普段から自分の乳房の状態を確認しておく
近年では決まった方法や頻度で乳房を自己触診する「自己検診」だけでなく、日頃から自分の乳房に関心を持ち、変化に気づくことを大切にする「ブレスト・アウェアネス」という考え方が推奨されています。
例えば、日頃の生活の中で乳房を見たり触れたりしながら小さな変化を確認するとよいでしょう。
例えば入浴のタイミングや着替えなど自分の乳房をみる機会は1日に何度かあると思います。少しの時間でもよいので意識してみてください。
具体的には
新しいしこりがないか
乳房に形が変わっていないか
乳房の左右差の変化がないか
皮膚のトラブルが出ていないか
乳頭から分泌液が出ていないか
乳頭や乳輪に変化がないか
などの小さな変化を意識的に見ることが大切です。
変化に気づいたら小さなことでも乳腺外来を受診する
もし乳房に気になる変化を感じた場合は、乳腺外科などの医療機関を受診することが大切です。日頃忙しくされている方にとっては後回しにしがちな医療機関への受診ですが、ぜひ仕事帰りやお仕事がお休みの日などに受診してみてください。
一度受診すると不安も解消されますし、何より意識的に乳がんについて考えるようになります。そうした行動が未来の早期発見につながってくるのです。
40歳過ぎたら定期的に乳がん検診を受ける
現在、日本では40歳以上のすべての女性を対象として、2年に1回のマンモグラフィによる乳がん検診が推奨されています。
マンモグラフィでは、触診では分かりにくい小さな病変や石灰化などが見つかることがあり、自覚症状のない乳がんを早期発見するために重要な検査です。
しかし、年齢や乳房の状態、乳がんの家族歴などによって、必要となる検査や受診方法が異なる場合があります。特に家族に乳がんや卵巣がんになった方がいるなど、乳がんのリスクについて気になることがある場合は、医師に相談して自分に適した検査について確認するようにしてください。
宇都宮セントラルクリニックでは、完全予約制にて乳腺外来の受診ならびに乳がん検診が可能です。自覚症状のある方はもちろん、ご不安やお悩みのある方もお気軽に来院ください。

急激に高まる乳がん患者数と死亡率
ではなぜ、乳がんの早期発見が注目を集めているのでしょうか。
それはここ数十年で、乳がん患者数と死亡率が急激に高まっているからです。
以下、乳がんに関するデータを見ていきましょう。
国立がんセンター がん対策情報センターが発表しているデータによれば、1975年から患者数と死亡者数は次のように変動しています(数字は推計)。
| 患者数 | 死亡者数 | |
| 1975年 | 11,123人 | 3,262人 |
| 1980年 | 14,447人 | 4,141人 |
| 1985年 | 20,296人 | 4,848人 |
| 1990年 | 24,697人 | 4,922人 |
| 1995年 | 31,174人 | 7,763人 |
| 2000年 | 37,389人 | 9,171人 |
| 2005年 | 52.211人 | 10,721人 |
| 2010年 | 68,071人 | 12,454人 |
| 2015年 | 87,050人 | 13,584人 |
|
2020年 |
91,531人 | 14,650人 |
|
2025年 |
約98,000人(予測値) |
16,200人 (予測値) |
1975年から2025年までの間に、乳がんの患者数は約9倍、死亡者数は約5倍に増加しています。
また、2026年時点での男女別「部位別がん患者数」のランキングは次のとおりです。
| 男性 | 女性 | |
| 1位 | 前立腺がん | 乳がん |
| 2位 | 大腸がん | 大腸がん |
| 3位 | 肺がん | 肺がん |
| 4位 | 胃がん | 胃がん |
| 5位 | 肝臓がん |
子宮がん |
女性がかかるがんの1位は乳がんで、2位の大腸がんと比較しても患者数は1万人以上の差があります。現在では、日本女性の12人に1人が乳がんにかかると言われています。
なかでも、30~60歳の女性が乳がんにかかる率が最も多く、特に30代後半から急激に増え、40代後半と60代前半にピークがやってきます。
海外のデータでは、たとえばアメリカの統計では8人に1人が乳がんにかかるとされています。しかしアメリカやイギリスなどでは最近は年々、乳がん患者の死亡率は減少傾向にあります。
乳がんの早期発見・早期治療の重要性
乳がんは女性のみがかかる病気というイメージが強いですが、男性も乳がんを発症するケースはあります。
比率でいえば乳がん患者さんのうち、男性の割合は0.8パーセントと低いですが、全くいないわけではありません。男性乳がんの患者さんの多くは60~70歳の方です。
男性乳がんは女性よりも予後不良になりがちというデータもありますが、それは男性の場合、女性と比べてがん発症に気づくのが遅く、治療の開始も女性と比べると遅くなってしまうためだと言われています。
とはいえ、乳がんに関しては早期発見・早期治療が大きな影響を及ぼすことは、女性でも男性でも変わりません。
2024年に厚生労働省が発表した、「人口動態統計」における、主な部位別がん死亡者数のデータを見てみましょう。
| 男性 | 女性 | |
| 1位 | 肺がん/52,330人 | 大腸がん/25,588人 |
| 2位 | 大腸がん/28,804人 | 肺がん/22,845人 |
| 3位 | 胃がん/25,535人 | 膵臓がん/20,223人 |
| 4位 | 膵臓がん/21,170人 | 乳がん/15,781人 |
| 5位 | 肝臓がん/15,618人 | 胃がん/14,840人 |
上記の患者数ランキングと比較して、何か違いに気づくでしょうか。
男女ともに、患者数ランキングと死亡者数のランキングが異なっているのです。
特に男性のほうは順位が少し入れ替わっているぐらいなのですが、女性は大きな違いが見られます。
患者数では1位であった乳がんは、死亡者数では4位なのです。
データのみをもとにして一概に言えるわけではありませんが、その要因のひとつには、乳がん検診の普及や啓発運動があると言ってよいでしょう。
乳がんは、その原因がはっきり解明されていない病気のひとつです。
発症については女性ホルモンの影響が大きいと考えられていますが、研究によって以前は要因とされていたものが、そうではないと結論づけられたケースもあり、まだまだ研究の余地が大きいのが乳がんという病気です。
早期発見で90パーセントは治癒できる
そこで乳がんに関しては、早期発見・早期治療が最も重要になってきます。
早期発見であれば、90パーセント以上の人が治癒すると言われているほどです。
日本乳癌学会の発表によれば、乳がんの「10年生存率」に関して以下のようなデータが出ています。
乳がんのステージは大きく5つの病期(ステージ)に分けられ、どのステージで発見されるかによって、生存率が如実に変わってくるというものです。
| ステージ | 状態 | 生存率 |
| 0期 | 非浸潤がん | 95.45% |
| Ⅰ期 | 2cm以下でリンパ節への転移がない | 89.10% |
| Ⅱ期 | 2cm以上and/orワキのリンパ節への転移がある | 78.60% |
| Ⅲ期 | 5cm以上でワキのリンパ節への転移がある、皮膚に及んでいる | 58.74% |
| Ⅳ期 | 他の臓器に転移している | 25.49% |
この数字を見ても、どれだけ初期にがんを発見することが大切なのかが分かります。
0期の発見であれば、生存率が約95パーセント。つまり乳がんは早期発見によって、適切な治療を受ければ、ほとんど生命に影響を及ぼさず治癒できる病気なのです。
前述のとおり、乳がん検診の普及と啓発運動は、乳がん患者の死亡率低下に大きな効果をもたらしていくといえるでしょう。
2000年からスタートした、早期発見・早期診断・早期治療を推進する「ピンクリボン活動」はその最たる例です。
乳がん検診には「視触診」「超音波(エコー)」「MRI」「マンモグラフィ」などがあります。
マンモグラフィとは乳房のX線撮影です。この検査が乳がんの早期発見率を上げたとも言われています。
とはいえどの検査にも長所と短所があり、ひとつの検査で「異常なし」と診断されても、他の検査によって乳房に異常が見つかる場合もある、ということは理解しておかなくてはなりません。
マンモグラフィとエコー検査の併用が発見率を最も高めるというデータもあります。
2007年7月から2013年3月には、厚生労働省による乳がん検診に関する国家プロジェクト、「J-START」が行われました。40歳以上の女性を対象に、関係医療機関・団体の協力を得て、日本全国で乳がんの対策型健診を行ったのです。
その結果、乳がんの早期発見には、マンモグラフィとエコー検査の併用が有効であるとのことで、これは海外の論文でも報告されています。
現在では乳がん検診ではふたつの検査を行う病院も多く、また併用を推奨している自治体もあるほどです。
乳がん検診にかかる費用は、方式・受ける病院・検診を行う自治体によって様々です。
なかには乳がん検診の費用負担がない自治体もあり、そうなると全額自己負担となります。
40歳以上の方だと、自治体による検診を2年に1度受けることができ、その場合は費用の自己負担額も少なくて済むでしょう。
また、本人や配偶者が勤務する企業の健康診断で、乳がん検診を受けることもできます。

日本の女性に推奨したい、乳がん検診
日本の乳がん検診受診率は、海外の先進国と比較しても低いと言われています。
OECD(経済協力開発機構/ヨーロッパ諸国を中心に34カ国の先進国が加盟)の調査結果には、次のようなデータが出されています。
| 乳がん検診受診率の国際比較 | |
| オランダ | 87.60% |
| アメリカ | 80.40% |
| フランス | 75.40% |
| イタリア | 70.00% |
| 韓国 | 63.60% |
| 日本 | 36.40% |
ピンクリボン運動をはじめとする啓発活動によって、乳がんに対する認識・検診の受診率が高まったとはいえ、国際的に見ればこれだけ受診率が低いのが現状です。
そこで、検診の受診以外で皆さんに始めてほしいことは、「自己検診」です。
自己検診にはいくつかのポイントがありますが、いずれにしても自分で異常を発見した場合は、早めに医療機関で乳がんの検査を受けてください。
異常を感じてもそのまま放置していては、自己検診の意味はありません。
ここまで述べてきたように、女性にとって乳がんは最も注意すべき病気だと言えます。
しかしながら早期発見で治癒できるがんでもあります。
ぜひ乳がんに対する認識や知識を高め、検診など乳がん対策に取り組んでください。















