乳がん治療の3本柱といえば、「手術」、「薬物治療」、「放射線治療」です。
そのなかで、最も誤解されやすい治療法が放射線治療ではないでしょうか?
放射線治療には、「副作用がきつい」というイメージがあるかもしれません。でも、実はそうではないのです。
急速に高齢化が進んでいる我が国。それに伴い、高齢のがん患者も増加し、がん以外の持病との兼ね合いなどから手術や抗がん剤での治療が行えないケースもあります。
そこで、手術も抗がん剤も行えない患者さんの救世主となり得るのが放射線治療なのです。放射線治療と副作用についてみていきましょう。
副作用が出る可能性のある治療とは?
乳がんは、しこりの性質や進行度などに応じ、「乳がん治療の3本柱」といわれる「手術」、「薬物療法」、「放射線治療」を組み合わせて治療していきます。
- 薬物療法
- 放射線治療
薬物療法
薬物療法には、抗がん剤(化学療法)、ホルモン療法、分子標的治療があります。
「ホルモン療法」は、乳がんに深く関わるエストロゲンという女性ホルモンを、薬を使ってコントロールすることでがんの再発リスクを下げる治療法です。
乳がんのがん細胞にHER2タンパクが多く出ているタイプ(HER2陽性乳がん)に対しては、「分子標的治療薬」が有効である可能性があります。
放射線治療
「放射線治療」は、病巣部に放射線を照射してがん細胞を死滅させる局所療法です。
近年では治療前の検査技術や照射方法が非常に進歩しており、がんの大きさや位置を正確に測って、その部分だけに集中的に照射できるようになりました。
その結果、放射線の治療効果は格段に向上しています。
副作用について
抗がん剤の治療において、最もイメージが強いのが「副作用」ではないでしょうか?
吐き気をもよおしたり、髪が抜け落ちて帽子を被らなくてはならなかったり、というのはよく聞きますよね。
でも、どんな治療によってどんな副作用が引き起こされるのでしょうか。
ここでは、がん治療による副作用についてみていきます。
- 抗がん剤による副作用
- 放射線治療による副作用
抗がん剤による副作用
手術治療や放射線治療は局所的な治療であるのに対し、抗がん剤は、より広い範囲を治療できる治療です。
転移または転移の可能性があるとき、転移を予防したいとき、血液・リンパのがんのように広い範囲に治療を行う必要のあるときなどに行われます。
しかし、抗がん剤は副作用が起こりやすいことが知られています。
アレルギー反応
点滴投与直後から、皮膚に発疹やかゆみなどの症状が出ることがあり、ひどい場合には血圧の低下や不整脈、呼吸困難を起こすこともあります。
骨髄抑制
化学療法により血液をつくり出す骨髄の機能が障害を受けると、白血球や赤血球、血小板などが減少します(骨髄抑制)。
細菌や真菌に対する抵抗力が弱くなり、口の中や肺、皮膚、尿路、腸管などで感染症を起こしやすくなります。
吐き気、嘔吐
ムカムカし、吐きそうな不快感があり、嘔吐することもあります。
下痢・便秘
腸の粘膜が化学療法の影響によって荒れて炎症を起こしたり、感染が起こって下痢になることがあります。
また、腸の動きを調節している神経に化学療法の影響が及び、腸の動きが弱くなったり、便秘になったりする場合があります。
口内炎
口の中の粘膜に対する抗がん剤の作用により口内炎ができ、痛んだり食べ物がしみたりします。
貧血
抗がん剤が骨髄にある造血幹細胞の機能を害し、赤血球が減少したり、消化管などから出血したりして貧血を起こします。
倦怠感、疲労感、めまい、息切れなどの症状が現れます。
出血傾向
血小板が減少し、出血しやすくなったり、出血すると血が止まりにくくなったりします。
鼻や歯ぐきからの出血、皮下の出血斑などが起こりやすくなります。
疲労感やだるさ
疲れやすい、気力が出ないなどの症状が現れます。
化学療法そのものの影響と、吐き気や貧血などの副作用を含む、様々な要因が重なって起こると考えられています。
脱毛
毛の根元の細胞が化学療法の影響を受けると脱毛症状が起こります。
頭皮だけでなく体毛やまゆ毛なども抜け、精神的にもつらい症状のひとつです。
手足のしびれ
指先や足先の感覚が鈍くなったり、しびれやピリピリとした違和感が出ることがあります。
放射線治療による副作用
放射線治療にも、限定的ではありますが副作用はあります。
放射線治療はピンポイント照射でがん細胞を狙い撃ちすることができるようになりましたが、その周辺にある臓器にダメージを全く与えないわけではありません。
たとえば、消化管への照射では、下痢や吐き気、食欲不振が出たり、頭部へ照射した場合は、頭皮の荒れや脱毛が見られることがあります。
また、照射部位の皮膚が徐々に日焼けのようになることもあります。
しかし、ピンポイントの照射では副作用もピンポイントで、全身に及ぶケースは稀といえます。
それぞれ必要に応じて投薬を行ったり、日々のケアで改善を図ったりすることで、最小限に抑えるように努力がなされます。