乳がんは、かなり高い確率で治る病気です。
検査の結果、がんの告知を受けたら、まずは冷静になりましょう。
自分の現在の病状について十分に理解し、どのような治療を受けていくかじっくり考えることが大切です。
がん告知は、これから始まるがんとの闘いに向けた第一歩です。
乳がんサバイバー(乳がんを発症するも、治療によって元気に生活を送っている人のこと)になるためにも、乳がんの治療法について知り、納得できる治療を受けましょう。
乳がんと診断されたら・・・
もし、乳がんの告知を受けたら、どうすればよいのでしょうか。
- 落ち着いて病状を把握する
- 信頼できる情報にアクセスし、乳がんへの理解を深める
- 治療を受ける病院を決める
落ち着いて病状を把握する
がんを告知されてショックを受けない人はいません。
でも、まずはできる限り気持ちを落ち着かせて医師の話を聞きましょう。
できれば、家族と一緒に医師の説明を聞くとよいでしょう。
診断は、メモを取りながら聞きます。
また、わからないことは、できる限りその場で質問しましょう。
信頼できる情報にアクセスし、乳がんへの理解を深める
帰宅したら、メモを見ながら自分自身の乳がんの病状について整理しましょう。
その上で、乳がんの全般的な情報や治療に関する情報を集め、乳がんについて学ぶことも必要です。
ただし、インターネットなどには情報が氾濫しており、手当たり次第にアクセスすると、かえって混乱してしまいます。
情報の質を見極め、信頼性のある情報を探すことが大切です。
治療を受ける病院を決める
治療を受ける病院を決めます。
乳がんの場合、「乳腺専門医」のいる病院を選んでください。
専門医のいる病院で診断を受けた場合は、そのまま治療へ進むケースがほとんどですが、医師との相性もありますので、まずは医師と話し合い、感触を確かめましょう。
最近はホームページを持っている病院も増えているので、どのような方針を持って治療にあたっている病院かみていくのもよいでしょう。
診断を受けた病院から別の病院や自分が治療を希望する病院を紹介してもらうこともできます。
セカンドオピニオンを受けたり、患者の会などで経験者に相談する方法もあります。
最終的に決めるのはあなた自身です。「治したい」という強い気持ちを持って前に進みましょう。
乳がん治療とは?
乳がんの治療は、がんの状態や進行の度合いによって、最適と考えられる治療は異なり、また、がんの性質によって効果的な薬も違います。
そのため、「あなたの」がんと、「あなたの」状態について詳しく調べる必要があります。
治療方針を決めるために必要な情報は、以下のようなものになります。
- がんの進行度に関する情報
- がんの性質に関する情報
- 患者の体に関する情報
がんの進行度に関する情報
治療の流れや手術方法を決めるために必要な情報です。
- しこりの大きさ
- がんの広がり具合
- 他の臓器への転移の有無
- 病巣の数や位置、乳房内における広がり
がんの性質に関する情報
手術後に、どのような薬剤を使うかなどを決めるために必要な情報です。
- ホルモン受容体の有無
- HER2(がん細胞を増殖させるたんぱく質)の有無
- がんの増殖能力(Ki67の程度)
- がんの悪性度
患者の体に関する情報
体の状態によっては行えない治療があるため、確認が必要な情報です。
- 年齢
- 閉経前か、閉経後か
- 遺伝性乳がんの可能性があるか
- 妊娠中かどうか
- その他、合併症やアレルギーの有無
これらの情報と、患者さん自身の希望をすり合わせて治療方針を決定します。納
得いく治療を受けるために、病気を正しく理解し、自分の希望をしっかり持って、治療法を主体的に検討していきましょう。
乳がんと放射線治療
乳がんの治療には、大きく分けて3つの柱があります。それは、手術、薬物治療、放射線治療です。
乳がんは、しこりの性質や進行度などに応じ、この3つを組み合わせて治療していきます。
このなかで、乳がん手術後に再発の予防として期待されている放射線治療は、どのように行われるかご説明します。
放射線治療とは?
「放射線治療」は、がんの病巣部に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる局所療法です。
近年では治療前の検査技術や照射方法が非常に進歩しており、がんの大きさや位置を正確に測って、その部分だけに集中的に照射することができるようになりました。
その結果、放射線の治療効果は格段に向上しています。
放射線療法に使われる放射線としてよく知られているのはX線ですが、このほか、粒子線を使う陽子線治療や重粒子線(炭素イオン線)治療も実用化が進んでいます。
再発予防のための放射線治療とは?
乳がん術後の再発予防として行われる放射線治療には、主に次の3種類があります。
温存乳房照射
手術で部分切除(温存手術)を選択した場合は、手術後、基本的に「温存乳房照射」が必要です。
残した乳房の中へのがんの再発を防ぐため、残した乳房に放射線を照射します。
乳房温存手術後の放射線治療により、乳房内の再発が約3分の1に減少することが証明されています。
胸壁照射
手術で全摘を選択した場合、病理検査の結果によっては、術後に全摘した部分へ放射線を照射することがあります。
これを「胸壁照射」といい、多くの場合「領域リンパ節照射」が追加されます。
領域リンパ節照射
ワキの下のリンパ節や、鎖骨下、鎖骨上のリンパ節への放射線照射です。
放射線治療においては、放射線の影響により、照射部分の炎症症状などの放射線障害や、めまいなどの全身症状があらわれることもあります。
しかし、副作用を和らげるケアを行いながら治療していきます。
期待される放射線治療
乳がん治療の場合、どんな治療法をどのように組み合わせて進めていくかは、治療前に大まかな方針が決まります。
手術後に組織の病理検査をした結果や、薬物の効果によって治療内容が変更される場合もあります。
もちろん初期における適切な治療が大切ですが、再発や転移を防ぐ方法も知っておいたほうが役立つでしょう。
その再発を防ぐための方法の一つが、放射線治療です。今後の発展が期待されます。