日本とアメリカの乳がん罹患率・死亡率
2015年の厚生労働省の報告によると、日本国内死因の第一位は「悪性新生物」(がん)で、女性の主要部位別の罹患率は乳房が1位、死亡率は4位となっており、死亡数は13,240人。毎年5~6万人が乳がんにかかり、約1万人が乳がんで亡くなっています。
乳がんにかかる人の割合は、約50年前は50人に1人でしたが、20年前には20人に1人、現在は11人に1人といわれており、大きく増加しています。
これに伴い、乳がんで死亡する女性の割合も約30%と、年々増加の傾向にあります。
日本女性の乳がん罹患率が増えた原因のひとつが「食生活の欧米化」と言われています。
かつての日本は飯と汁に、食肉や魚介類等の動物性の惣菜を主菜として1品、野菜や海藻、豆腐など植物性の惣菜を副菜とした2品の一汁三菜が一般的でした。
それが食生活の欧米化によって高たんぱく、高脂肪の食事が主流になったことで、栄養状態が良くなり、その結果として初潮を迎えるのが早く、閉経は遅い傾向になってきました。
月経がある年代は女性ホルモンの分泌が多いため、女性ホルモンにさらされる期間が長くなったことが、乳がんが増加した原因のひとつと考えられます。
一方、アメリカがん協会(the American Cancer Society)によるアメリカ国内の乳がん罹患数の公式統計(2013年版)では浸潤性乳がん罹患数は232,340人、乳がんによる死亡者は約39,620人と予測、8人に1人が乳がんを生涯の間に発生すると発表しています。
日本も近いうちに8人に1人くらいの割合まで増加するのではないかと言われています。
乳がんによる死亡率が高い傾向にあったアメリカでは、国を挙げて乳がんに対する啓発とマンモグラフィを用いた集団検診を推進し、早期発見により50歳以上の女性の乳がん死亡率が20~25%減少しました。
しかし日本では乳がんに対する関心や知識がアメリカほど浸透しておらず、定期検診に行かない、またはしこりなどの自覚症状が出てからようやく検査を受けたり、病院を受診する人が多い傾向にあります。
検診が浸透しているアメリカに比べ、早期発見の割合が低くなってしまう可能性があるのです。
乳がんは早期発見できれば完治は十分に可能です。
定期検診やセルフチェックであなたの大切な乳房、そして命を守りましょう。
ピンクリボン活動とは?
ピンクリボン活動は乳がんの正しい知識を広める、乳がん検診の早期受診の推進など、乳がんをより多くの人に理解してもらうための活動をいいます。
ピンクリボン活動の始まりについては諸説あります。
<説その1>
1980年代のアメリカ。乳がんで若くして亡くなった女性の母親が残された家族と一緒に「乳がんで家族を失う悲しみを繰り返さないように」の願いを込めてピンクリボンを作った。
<説その2>
1990年代、エイズの活動家たちが「レッドリボン」をシンボルとして使い始めたのをきっかけに、各種慈善事業団体が次々にリボン活動を始めた。
その他アメリカの女性向け健康雑誌の、「乳がん意識向上月間」の特集企画がきっかけとなって、ピンクリボン活動が広がっていったなどのエピソードがあります。
どのエピソードでも、そこに「乳がんで尊い命を落とさないために」という祈りが込められていることに変わりはありません。
ピンクリボン活動によってアメリカの乳がん事情はどう変化した?
アメリカでは、フォード、レーガン元大統領夫人がピンクリボンバッジをつけ、自らの乳がん体験を公表。
1983年、アメリカ・ダラスで乳がん撲滅運動組織『スーザン・G・コーメン・ブレストケア・ファンデーション』が誕生。
設立者であるナンシーは、姉、スーザンを乳がんで亡くしました。
当時はまだ乳がんの知識や情報がまだ十分ではなく、適切な治療を受けらなかったのです。
この組織が同年「レース・フォア・ザ・キュア」を開催。
「レース・フォア・ザ・キュア」は参加者がメッシージやゼッケンを付けて乳がん闘病中の人たちにエールを送りながら5キロを走るもので、全米107都市、これまで100万人が
参加しています。
1993年にはクリントン大統領(当時)が10月の第3金曜日を女性が無料でマンモグラフィを受診できる「ナショナルマンモグラフィデイ」に制定、全米で乳がんによる死亡者を減らす運動が始まりました。
そして2000年、ニューヨークの化粧品会社エスティー・ローダーグループが主催するキャンペーン「グローバルランド イルミネーション」がスタート。
世界50カ国以上の歴史的建造物や著名なランドマークをピンクにライトアップしています。
これまで200カ所を超えるランドマークをピンク色に点灯することで、乳がんの正しい知識と早期発見の大切さを印象的にアピール。
「このライトアップをきっかけに女性は自分自身が、男性はパートナーや家族が乳がん検診を受けることを思い出してほしい」というメッセージが込められているのです。
2010年10月1日には「社会貢献活動の趣旨で24時間以内に点灯された最多ランドマーク数(世界38箇所)」としてギネス世界記録に登録。
2016年日本では東京タワー、東京スカイツリー、清水寺、姫路城。
今年は3月にオープンした東急プラザ銀座2も参加する予定です。
これらの活動のほかにも多くの市民団体がピンクリボン活動に参加。
様々な活動によって、アメリカの乳がんでの死亡率は90年代から徐々に減少しています。
日本のピンクリボン活動の現状は?
「全国初の乳がん検診受診率50%」を目指す『NPO法人ピンクリボンうつのみや』
現在、日本国内には多数のピンクリボン活動組織があります。
『NPO法人ピンクリボンうつのみや』は、栃木県宇都宮市を拠点に、乳がんに関する知識をわかりやすく伝え、乳がんの早期発見の推進のために幅広い活動を行っています。
目標は「全国初の乳がん検診受診率50%」。
乳がん早期発見のための定期検診や受診率を向上させ、乳がんによる死亡者数を減らし、女性の健康な生活はもちろん、家族や周囲の人たちも安心できる社会を目指しています。
乳がん、というと怖い印象がありますが、早期発見であればあるほど治癒の可能性が高まります。
早期発見で笑顔に!NPO法人「J.POSH」
NPO法人「J.POSH」(Japan Pink-ribbon of Smile and Happiness=日本笑顔と幸せのピンクリボン)は2002年、「受けようマンモグラフィ検診 乳がん早期発見で笑顔の暮らし」を合言葉に NPO団体を設立。
乳がんのセルフチェックの方法がわかるガイド付きのポケットティッシュの制作、お母さんが乳がんによる闘病生活を送っている高校生を対象に「J.POSH奨学金まなび」を設立、経済的なサポートをするなど家族に向けての支援も行っています。
乳がん検診の大切さを伝えて15年、ピンクリボンフェスティバル
ピンクリボンフェスティバルがスタートしたのは2003年。
朝日新聞社等とともに各地で乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さを伝える活動を続けています。
ピンクリボンフェスティバルのメインイベントが毎年、ピンクリボン月間である10月に開催される「ピンクリボンスマイルウォーク」。
街行く人に検診を促すもので、東京、神戸、仙台で実施しています。
また、乳がんの専門医や乳がんを体験したゲストを招いたシンポジウムも行われ、乳がんの現状と最新治療、心のケアなどについて意見をシェアします。
ピンクリボン活動で女性の“美しくありたい”を応援
下着メーカー、ワコールも積極的にピンクリボン活動を行っています。
早期発見、早期治療、術後のクオリティオブライフ向上のためのサポートを展開。
2016年10月1日(土)~10月31日(月)には、乳がんの早期発見・早期診断・早期治療支援活動であるピンクリボン活動の一環として、ワコールグループの約 2,000 店舗でピンクリボン・フィッティングキャンペーンを実施。
期間中、ブラジャーを1枚試着すると10円をお客様に代わってワコールから公益財団法人日本対がん協会「乳がんをなくすほほえみ基金」へ寄付するというもので、4,732,630円が集まりました。
また、乳がん手術を受けた人へのブラジャーやランジェリー、スイムウェアも提案しています。
ピンクリボン活動に求めるもの・求められるもの
日本でピンクリボン活動が広まるようになったのは2000年代頃で、認知度が上がるとともに乳がん検診の受診率も2004年には19.8%だったのが、2013年には34.2%になりました。
このように日本の受診率はおだやかに上昇していますが、受診率80.4%のアメリカをはじめとする諸外国に比べると、まだまだというのが現実です。
「ピンクリボン活動というワードを知っていますか?」という問いに対して、8割を超える人が「知っている」と答えました。
では「どのような目的で行われているでしょうか?」と尋ねられたとき、「乳がん検診の受診を促すもの」と即答できるでしょうか?
美しくピンク色にライトアップされた東京スカイツリーや清水寺などにスマートフォンを向けて夢中で撮影している人のなかには、「キレイだけど何のイベント?」と首を傾げる女性も少なくありませんでした。
今一度、ピンクリボン活動の目的にしっかりとフォーカスすること、イベント参加型のお祭りで終わらせないことが大切だといえるでしょう。
イベントに参加するだけがピンクリボン運動ではありません。
ピンクリボン活動をイメージさせるものにピンクリボンバッジがあります。
さまざまな団体や企業がピンクリボンバッジを販売しているので、問い合わせて手に入れてみてはいかがでしょうか?
チャームやマスコットをあしらったもの、ラインストーンを使用したものなどたくさん種類がありますが、これを身に着けることで乳がん検診への意識が高まるばかりでなく、周囲の人たちからバッジについて尋ねられたとき、乳がん検診の大切さを知ってもらうことができます。
女性ばかりでなく、恋人やパートナーがいる男性にも乳がん検診の大切さを伝えてあげましょう。
それが大切な人の命を守ることにつながります。
ひとりでもできるピンクリボン活動、ぜひ実践してください。