地域の集団での乳がん検診を受けて「乳腺症」と書かれていた経験がある人もいるでしょう。
「乳腺症・・・? 乳がんじゃないからいいか」と思うのは間違いです。
乳腺症と乳がんは違う症状ですが、乳腺症の裏に隠れて乳がんがある場合もあるのです。
乳腺症と乳がんの違いは素人では見分けがつきません。
胸に違和感や痛み、しこりを感じた場合はどうすればよいのでしょうか?
乳がんと乳腺症の違いとは?
胸や乳房に痛みがあることやチクチクすることが、乳がんの直接的な症状ではありません。
胸や乳房がチクチクする痛みの時は、乳腺症の症状が出ていることが多いです。
乳腺症の症状は胸の痛みやしこりなどで、女性ホルモンの変動や生理の周期によって起こります。
近年では、北斗晶さんが「乳房にチリチリとした痛みを感じて検査を受けたら、乳がんだった」という告白をされました。
「胸にチリチリとした痛みを感じる」という症状だけみれば乳腺症の症状であるように思いますが、組織を調べて見たら乳がんの症状だったのです。
北斗晶さんの場合、乳腺症から乳がんになったわけではなく、乳腺症と思っていたら乳がんが発見されたという状況だったのです。
北斗晶さんの乳がん告白により、「胸がチリチリとした、もしかして乳がんかも?」と思って、乳腺科で診察を受ける人は多くなりました。
胸のセルフチェックをしながら、自分の体や乳房に関心を持ち、乳腺科で診察を受けて自分の状態をしっかりと把握しておくことが必要です。
乳腺科で詳しく検査をしてもらいましょう
乳腺科に行くと、まず問診、視触診があり、その後乳房の状態を画像診断機器で診断をします。
乳腺科や乳腺外科などの乳がん専門の医療機関では、マンモグラフィ、エコー、トモシンセンス、PEMなどの画像診断を行って、乳房の状態やしこりが良性なのか悪性のものなのかを診断します。
乳腺の病気に関する画像診断機器
- マンモグラフィ
- エコー検査(超音波検査)
- MRI検査
- トモシンセシス
- PEM
マンモグラフィ
マンモグラフィとは、乳房をX線撮影する検査機器です。
より乳房の状態を診断しやすい写真を撮るために、乳房をできるだけ引き出して、圧迫板という薄い板で乳房を挟み、薄く押し広げて撮影します。
乳房を薄く圧迫するため、多少の痛みがある場合があるので「マンモグラフィは痛いよ」という噂を聞いたことがある人も多いかもしれません。
しかし、圧迫板で押し広げることで、かなり正確に診断すること、そして被ばく量を減らすこともできるのです。
マンモグラフィ検査での放射線被ばく量は、自然界に存在する放射線レベルと同じくらいの低さなので、心配することはありません。
ただし、妊娠中や授乳中の人は医師に相談しましょう。
エコー検査(超音波検査)
エコー検査とは、乳房に超音波を当ててその反射波を利用して画像をつくる検査のことです。
通常の乳がん検査等の診断用超音波は、人体に害はありません。
エコー検査は、乳房内にしこりがあるかどうかの診断に役立ちます。
特に40歳未満の女性の場合,マンモグラフィでは乳腺の密度が濃い状態である高濃度乳腺の状態で検査すると、画像診断の際、白い部分が多い状態になってしまい症状の鑑別がしづらい時があります。
しかしエコー検査では、しこりがどのような状態なのかを診断をできます。
また、しこりの形や境目部分の状態などを見分けて、しこりが良性なのか悪性なのかを判断することも可能です。
ただしマンモグラフィだけ、エコー検査だけのどちらかでしか発見できない乳がんやその他の症状もあります。
さらに乳腺症の検査でも乳がんの検査でも、精密検査においてはマンモグラフィとエコー両方の検査を行うことになります。
MRI検査
その他の画像診断として、MRI検査をする場合があります。
MRIは、造影剤という検査用の薬を使って検査を行います。
「乳がんである」と判断された場合は、乳がんの広がり方を見るためにMRI検査を実施することが多いです。
トモシンセシス
トモシンセシスは、マンモグラフィの仲間のような乳がんの最新検査機器です。
トモシンセシスは乳房全体を複数の角度から数十枚の薄い断層像として3D撮影することができます。
従来のマンモグラフィの2D撮影では、乳腺が高密度で重なりあっていることによる症状の見落としなどのデメリットがありましたが、トモシンセシスを使用することにより、そういったデメリットも解決することができます。
PEM
がん検診でPET(陽電子放射断層撮影)検査をする場合があります。
がん細胞は活発に活動しており、正常の細胞よりも多くブドウ糖を取り込んで栄養源としています。
PET検査は、FDGというブドウ糖に似た薬剤を注入します。
がん細胞は、ブドウ糖と同じようにFDGを多く取り込むので、FDGが多く集まっている部位はがん細胞がある箇所だと判別できるのです。
PET検査により乳がんを見つけることできますが、早期乳がんやごく小さいがんの組織や一部の特殊な乳がんは検出できないことがあります。
そこで開発された医療機器が、乳腺専用のPET検査機器であるPEMです。
PEMは、全身用のPET装置より効率よく検出素子を用いることで、感度や解像度を向上させています。
PET検査では5mm~10mmの腫瘍を判別出来ますが、PEMでは2mm程度のごく小さい腫瘍も判別可能になりました。
PEMはマンモグラフィやエコー検査では見つけにくい病変、診断が難しい病変を発見することにも優れています。
PEMでは、乳房をスライス状の断層画像として映し出すことができるので、乳がん再発時の手術範囲や治療方法の選択にも役立ちます。
胸に違和感を覚えたら、すぐに乳腺科へ
北斗さんのように、胸の違和感を覚えたことがきっかけで病院へ行き、乳がんが発見されることもあります。
しこりの自覚症状や「胸がチクチクする」と違和感を覚えるときは「乳腺炎だろう」と思って放置せず、すぐに乳腺科を受診しましょう。
乳がんは、早期発見・早期治療で完治を目指せる病気です。
乳腺科でしっかり診察を受けることで、今の自分の体の状態を知ることができます。
3年後、5年後に健康な暮らしを楽しむためにも、胸にしこりや違和感を覚えたらすぐに乳腺科で診察を受けましょう。