女性がかかるがんで一番多いのは乳がんです。
最近乳がんの話題を耳にする人も多くなったのではないでしょうか?
乳がんは女性の11人に1人の割合でかかるとされており、乳がんは女性にとって身近な病気なのです。
でも実際に乳がんについて詳しく知っている人は少ないかもしれません。
そこで乳がんや乳腺症などの女性に多い病気と、乳腺の関係についてご説明します。
乳腺とは?
女性の乳房には、子供に与えるための母乳を出す役割があります。
そのため、乳房の内部には、小葉という母乳を分泌するための器官と、母乳の出口である乳頭、小葉と乳頭を繋ぐ乳管があります。
この小葉、乳管、乳頭をまとめて乳腺と言います。
乳腺は、乳頭を中心に脇の下まで放射状に広がっています。
乳腺を支えているのは、線維組織や脂肪などの皮下組織です。
乳房は皮下組織と乳腺から成立しており、その中を血管やリンパ管が走っています。
乳がんとは?
乳房の中の乳管、あるいは小葉の上皮細胞が突然分裂を始めて成長が止まらなくなる悪性腫瘍が乳がんです。
乳がんのほとんどは、乳管に発生する「乳管がん」ですが、小葉に出来る小葉がんもわずかながら見られます。
乳腺に発生したがんは、放置しておけば徐々に大きくなっていきます。
乳腺症とは?
乳がん検診に行って乳腺症と診断された人は多いかもしれません。
ほとんどの乳腺症と、乳腺炎、乳腺線維腺腫は、乳がんとは関係のない良性の病変です。
乳腺症は、30~40代の女性に多く見られる症状で、乳房のしこりや腫れ、痛みの症状があります。
乳腺症は、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の変動によって起こることが多く、閉経後は卵巣機能が低下するので乳腺症の症状も自然に起きにくくなります。
女性ホルモンの変動は、排卵や生理の周期と連動しており、なかでもエストロゲンが過剰に分泌されると体は妊娠の準備を始めます。
エストロゲンは子宮内膜の増殖と乳腺の発達を促すので、乳腺は授乳のために発達して、乳房の張りや痛みを感じるようになります。
女性ホルモンの影響による乳腺の変化は、必ずしも全ての乳腺に均等に起こるわけではありません。
痛みがある場合は乳がんではないことが多い
生理の周期と連動する乳房の痛みやしこりは、乳がんではないことが多いです。
しかし乳腺症が慢性化すると、乳房が固い状態が続くため、もし乳がんのしこりがあっても気づきにくいことがあります。
乳腺症の裏に乳がんが潜んでいる場合もありますので、「乳房に痛みがある、乳腺症だから大丈夫」と放置するのではなく、乳腺科できちんと検査して診断を受けましょう。
乳腺症も乳がんも、しこりの症状は同じです。
しかし触診や視診のみで、しこりを良性か悪性かの判別は難しいもの。
画像検査や、必要な場合は細胞診や組織診の検査をして判断することになります。
高濃度乳腺(デンスブレスト)とは?
デンスブレストとは、日本語では高濃度乳腺と訳されます。
乳腺は周辺の脂肪組織と比べると、X線の透過率が低いので、マンモグラフィをすると白く写ってしまいます。
高濃度乳腺の人は、乳がん検診の際マンモグラフィ検査をしても乳がんが見つかりにくいとされています。
高濃度乳腺とはどのような状態なのでしょうか?
乳腺濃度が高い状態
乳房の内部は、乳腺組織と脂肪が大部分を占めています。
乳腺組織が乳房に多く存在している状態を「高濃度乳腺」と呼びます。
マンモグラフィ検査では全体に白っぽく写ってしまう
乳腺の密度が濃い高濃度乳腺の乳房をマンモグラフィ検査で見ると、乳房に白い部分が多く写ってしまい、しこりがあるかどうかが分かりにくくなってしまうというデメリットがあります。
乳腺濃度は若い人ほど高く、高齢になると乳腺は萎縮してくるので乳腺濃度も低くなります。
また、太っている人は脂肪組織の割合が増えるので、乳腺濃度は低くなります。
乳腺濃度が高い人は、超音波検査(エコー検査)を受けることで、乳腺の重なった部分に隠れているしこりを見つけやすくなります。
デンスブレストの人は乳がんになる確率が高い?
デンスブレストの人は乳がんの発症リスクも高くなると言われています。
乳腺濃度は客観的評価や数値化をすることが可能なので、長く研究されてきました。
乳腺濃度が高ければ高いほど、乳がんの発症リスクが高くなるという研究結果もあります。
自分自身の乳腺濃度を知っておくことは、がんのリスクや自分の体のことを知る上で大切なことです。
アメリカではマンモグラフィ検査を受けた人に、乳腺濃度についての情報を提供するように法整備が進んでいます。
自分で判断せず乳腺科を受診しましょう
乳がんや乳腺症などの病気は、乳腺が大きく関係しています。
乳がんが乳腺に出来る悪性腫瘍であり、乳腺症は乳腺の良性の病変です。
乳腺は、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの変動に影響を受けることで、痛みやしこりなどの症状が現れます。
乳房に異変を感じた場合は、放置したり我慢したりせずに、すぐに乳腺科を受診しましょう。
乳腺症の症状は色々なタイプがあり、乳がんとの区別がつきにくいものもあります。
乳腺症だと自己判断せずに、きちんと乳腺科で検査を受けておきましょう。