検診

マンモグラフィ&エコー~進化し続ける最新乳がん検査機器とは

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日本と欧米の乳がん検診

欧米で乳がん検診が始まったのは1940年代、やがて70年代に入ると触診にマンモグラフィを併せることで、より発見率が高まることが認められました。

乳がん検診 マンモグラフィ
日本で乳がん検診が開始されたのは1965年頃でしたが、まだ一部の地域に限られており、視触診による検診が始まったのは1975年のこと。
マンモグラフィが全国の自治体に導入されたのは2000年になってからなので、欧米より約30年の遅れがあったといえます。

日本の乳がん検診が全国に導入されたのは1987年、第二次老人保健法で「30歳以上に問診・視触診検診を逐年で行う」というものでした。
問診は胸のかゆみやシコリ、違和感などの症状があるかどうか、視触診では胸のシコリやひきつれなどがないかを確認、左右の胸やワキの下を指で触れて検査を行います。
視触診で乳がんが発見されることはありましたが、やはり限界がありました。

厚生労働省による対策型乳がん検診の検診項目などについて、検討会中間報告書には次のように記載されています。

検診方法

  • マンモグラフィによる検診を原則とする。
  • 視触診については推奨しない。仮に視触診を実施する場合は、マンモグラフィと併用する。
  • 超音波検査については、死亡率減少効果や検診の実施体制等について、引き続き検証していく必要がある。
  • 対象年齢は40歳以上
  • 検診間隔は2年に1度
    (平成27年9月29日付)

マンモグラフィと超音波検査、どちらがよい?

マンモグラフィは乳房専用のX線撮影装置で、乳がんの早期発見に有効な画像診断のひとつです。

乳がん 検診 マンモグラフィ

マンモグラフィ検査ではセルフチェックや視触診ではわかりにくい小さなシコリや、乳がんの初期症状である微細な石灰化を見つけることができます。

ただし日本女性に多いとされるデンスブレスト(高濃度乳腺)の場合、画像全体が白く写ってしまうため、乳がんがあっても見つけにくい傾向があります。
よく「雪原で白いうさぎを探すようなもの」と例えられるのですが、デンスブレストの場合、どのようにすればよいでしょうか?

デンスブレストであると判断された場合はマンモグラフィだけではなく、超音波検査を併用して受けましょう。

乳がん 検診 エコー 超音波

超音波検査は乳房にゼリーをぬり、プローブと呼ばれる専用の器具をあて、内部からの反射波(エコー)を画像にするもので、マンモグラフィで見えにくいデンスブレストであっても腫瘤をはっきり映し出すことができます。

「それならマンモグラフィではなく超音波検査だけでよいのでは?」
と思われるかもしれませんが、それぞれの機器には次のようなメリットとデメリットがあります。

マンモグラフィ

メリット…超早期の乳がんのサイン(石灰化)を見つけやすい。検査の水準が一定に管理されている。
デメリット…微量だが放射線被ばくがある。乳腺濃度の高い乳房では異常を見つけにくい。

エコー

メリット…放射線被ばくはない。疑わしい部分を重点的に観察できる。高濃度乳腺であってもシコリを見つけやすい。
デメリット…良性のシコリも拾いやすい。石灰化は見つけられないことも多い。検査の技術水準に差がある。

東北大が2007~11年、全国の40代女性約7万6千人を対象に大規模調査を実施しました。
マンモグラフィのみ受ける単独群と、超音波を併用する群の2つに分け、がん発見率などを比べたところ、単独群でがんが見つかったのは117人で発見率は0.33%、併用群では同184人で0.5%と約1.5倍。

がんを見逃さない感度は単独群で77%だったのに対し、併用群は91%で併用した場合、大きさが2センチ以下で転移がない初期のがんの発見割合が高まったと報告されています。

また、がんの疑いがあるため要精査と判断された人は単独群で8.8%、併用群では12.6%。
これらの数値からマンモグラフィと超音波を併用することで、乳がんの早期発見率が高くなることがわかります。

痛くないマンモグラフィ

「マンモグラフィが乳がんの早期発見に有効なことはわかっているけれど、やはり板で胸をはさむのが痛くて……」

マンモグラフィ=痛い、が乳がん検診へ行かない理由のひとつになっているのは無理からぬ話です。
では“痛くないマンモグラフィがある”としたらどうでしょうか?

トモシンセシス(3Dマンモグラフィ)

これまでのマンモグラフィではX線を一方向からのみ当て、乳房を平面的(2D)に画像化していましたがトモシンセシスは乳房を多方向から撮影し、収集した複数のデータを立体的(3D)に再構成します。

乳がん 検査 トモシンセシス

トモシンセシスはTomography(断層)とSynthesis(合成)を合わせた言葉で、X線管球がマイナス25度~+25度の範囲を移動する間に25回の撮影を行い、収集された情報は1mmスライスごとに表示させることができます。
これによって乳腺が重なっている部分でも明瞭に識別することができ、より確実に病変を描写できるようになりました。

また、従来のマンモグラフィに比べて圧力が約40%に軽減されたことで痛みも軽減されています。
日本人女性に多いデンスブレストにより発見しにくかった病変も、スライスすることでスピキュラ(ギザギザの形状の乳がん)や小さなシコリ、石灰化、乳がんによる乳腺のひきつれなどもより見やすくなりました。

乳房専用PEM装置

PEMとは乳腺専用の検査に用いるPET装置のことをいいます。

PETとはPositron Emission Tomography(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ)の略称で日本語では陽電子放射断層撮影装置。
がん細胞は正常細胞に比べ活発に増殖するため、多くのブドウ糖を必要とし、細胞内に取り込もうとします。
この特性を生かして、弱い放射線を出す物質を加えたブドウ糖(FDG)を注射、PETカメラで撮影してがん細胞の有無を検査します。

通常のPET検査でも乳がんの検査は可能ですが、小さいがん組織や特殊な組織型のがんの場合は発見が難しいものがありました。
そこで乳腺などごく限られた部位に生じる乳がんの特性に注目、PET検査で使用するものよりさらに感度の高いセンサーを搭載した乳房専用PEM装置が誕生したのです。

乳がん 検査 PEM

乳房専用のPET装置には、マンモグラフィのように乳房を挟んで撮影する対向型と、うつぶせの状態でリング状の検出器の中に乳房を下垂させて撮影するリング型があります。

PEMで使用するガンマ腺は人体を突き抜けていく性質があるため、機械に乳房を強く挟む必要がなく、乳房を乗せて軽く挟む程度なので痛みはありません。
リング型はうつ伏せになり直径18.5㎝のホールに乳房を入れて撮影するもので、乳房を圧迫せず検査を受けることができます。

マンモグラフィでの発見が難しいデンスブレストでも乳房専用PEM装置であれば、的確にがんを見つけられるというメリットがあるほか、豊胸手術などでインプラントが入っている場合も安心して検査を受けることができます。

近い将来、実用可能な乳がん検査機器

日立製作所が新たに開発した検査機器は水に浸した乳房に超音波を当てることで、痛みを伴わずに乳がん検査ができるというものです。
受診者は診察台の上にうつ伏せになり、乳房を台に開いた穴に入れます。
検査容器には水が入っており、そこへ360度の方向から超音波を照射、音波の速度などから腫瘍の有無を診断します。

スキャンは約1分で完了、腫瘍の粗さや硬さの分析が可能。
従来のマンモグラフィのような圧迫感がなく、デンスブレストでも解析ができ、超音波検査より検査の精度が高まり、腫瘍が良性か悪性かの判断が容易になるといいます。
北海道大病院と共同研究を進め、2020年頃に人体への実用化を目指す予定とのこと。
2020年まであとわずか、実用化されたなら乳がん検診に大きな革新をもたらすことになるでしょう。

乳がん 検査 検診 安心

日本で乳がん検診が始まって約半世紀。
視触診という原始的な方法からX線、超音波を使用した、より精度の高い検査方法へと進歩してきましたが、まだまだ乳がんの罹患率、死亡者数は減少していません。
検査機器、医療機器のめまぐるしい発展は希望が持てるものですが、やはり大切なのは早期発見への積極的な対応です。

「便利な機械に頼ればいい」「さまざまな病気に対する新薬がどんどん開発されているから大丈夫」
と医療機関任せにするのではなく、セルフチェックを続けてください。
鏡の前で着替えているとき、入浴中、乳房に変化がないか調べましょう。

乳房に変形やシコリは? 乳頭からの分泌物はありませんか?
乳がんの60%以上はセルフチェックで発見されているということも、覚えておいてください。

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