乳がんで手術を受けることになったら、手術の前後を含めて3日~2週間程度の入院が必要になります。
手術が決定して即入院、というわけではなく手術のスケジュールやベッドの空き状況などにより2週間~2カ月先になるのが一般的です。
「初めての入院なので勝手がわからない」という人もいらっしゃるでしょう。
そこで手術、治療を受けるための手続きはもちろん、少しでも快適に入院生活を送るために用意しておきたいもの、個室と大部屋のメリットとデメリット、入院前・入院中の一般的なスケジュールなど、あらかじめ知っておくようにしましょう。
入院の手続きについて
入院する際に必要な書類など
・保険証(または証明書・医療券など)
・診察券
・限度額認定証(※1)
・署名・捺印済みの入院証書
・入院履歴確認書
・患者情報用紙
・手術同意書
・差額ベッドを希望した場合は差額ベッド入室同意書
・入院時預り金(10万円~20万円)
・印鑑
・その他指示のあったもの
(※1)入院や外来診療・調剤薬局等での医療費の支払額が、国が定める自己負担限度額を超えて高額となる場合、窓口での支払を法定の自己負担限度額までに抑えることができるもので、法定の自己負担限度額は被保険者の所得により異なります。入院申し込み時などに同時に手続きが行われることが多いようです。
(※2)医療機関により異なります。預かり証が発行されますので、退院時に清算となります。
入院に関する書類に不明な点などがあれば、あらかじめ担当医などに確認、納得してから入院手続きに進むようにしましょう。
医療機関や治療内容によって提出する書類が増える場合もあります。
クリアケースなどにまとめて入れておくと便利です。
入院の際に必要な身の回りのもの
基本的には入院説明時に必要なものは教えてもらえます。
・パジャマ(※)
・下着
・カーディガン
・靴下
・スリッパ
・歯ブラシ&歯磨き剤
・ヘアブラシ
・化粧水
・せっけん、ボディーシャンプー
・シャンプー&リンスまたはドライシャンプー(入浴できない期間が長いときなど)
・バスタオル(3~4枚)
・フェイスタオル(3~4枚)
・マグカップ
・ティッシュペーパー(箱)
・ウェットティッシュ
・ビニール袋 数枚(ゴミ用)
・筆記用具
・お箸、スプーン、フォークなど
(※)前開きでゆったりしたデザインのものを。病院で貸し出しものを使用することもできます。
入院には不安や心配がつきものです。
「入院が初めて」という人はなおさら、どこから手を付けていいのか、わからなくなるかもしれません。
そんなときは2週間くらいの旅行へ出かけるイメージをしてみましょう。
アメニティグッズが充実したホテルではなくコテージに宿泊するシチュエーションです。
ベッドや洗面所、シャワーはありますが、必要なものはこちらで用意しなければなりません。
「これがあれば便利」と思いつくものがいろいろあるはずです。
使用するバッグはキャリーバッグを。
手術後は思うように腕が動かせないこともあるので、キャスターがついたバッグが便利です。
個室と大部屋、どちらを選ぶのか
「入院・治療でお金がかかるので節約して大部屋」
「静かに過ごしたいので個室」
どちらを選ぶかによって過ごし方が変わってきますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
個室のメリット
自分の部屋のように過ごせるのでプライバシーが守られ、静かに過ごすことができる
着替えのたびにカーテンを閉めなければならない、スペースが限られているので、まめに片づけをする、といったわずらわしさがないのでのびのびと過ごせるようです。
面会に来た家族や友達とゆっくり過ごすことができ、他の患者さんに気を使わずに済む
子供がお母さんに会えて嬉しくてはしゃいでしまう、というのはよくあることです。
しかし大部屋の場合、具合が悪くて起きられない、夜寝つきが悪いので昼寝をしている、にぎやかな雰囲気を好まない人もいます。
個室ならば家族や友達とお喋りを楽しむ、ゲームをするなど遠慮なく過ごすことができます(病棟によっては子供は病棟内に入れないこともあります)。
読書や趣味を楽しむ、テレビを観るなど、マイペースで過ごせる
大部屋の場合、どうしても周囲の患者さんに気を使うので、“至ってマイペース”というわけにはいきません。
昼間は回診があったり、お見舞いの人が来るなど何かとにぎやかでしょう。
個室なら昼寝をする、お茶を楽しむなど好きなように過ごすことができます。
ゆっくり眠れる
大部屋ならではの問題が「いびき」です。
耳栓を使用すればよいのですが、使い慣れていないと違和感があるかもしれません。
また、同部屋の患者さんの容態が急変した、トイレに起きる、咳が止まらないなど、夜中に物音がするのは当たり前な環境です。
ちょっとした音で目が覚めてしまう、という人は個室のほうが熟睡できるかもしれません。
個室のデメリット
一人でいると不安になる
誰かとお喋りしている間は気が紛れますが、一人きりになるとあれこれ考えて不安になったり、寂しい気持ちになったりするかもしれません。
散歩中や談話室で居合わせた人とお喋りをするようになって気が紛れた、という人もいました。
大部屋に比べて使用料が高い
医療機関によって異なりますが、個室利用料は1日2,000円~12,000円、高額になると数万円という部屋もあります。
大部屋のメリット
気が紛れる
患者さん同士でお喋りをしていると病気への不安を忘れられる、退院したらやりたいことについて話し合うなどコミュニケーションを楽しむ人も多いようです。
なかには退院してからも交流を持つようになった、という人たちも。
人の出入りがあるので安心
医師や看護師、患者さん、お見舞いの人たちなど誰かしら出入りしているので心強い。
調子が悪いとき心配した患者さんが看護師に知らせてくれた、などお互いが助け合えるというメリットも。
差額ベッド代がかからない
入院・治療でお金がかかるので節約の意味でも大部屋は便利です。
大部屋のデメリット
気を使う
病気で入院しているのですから余分な気遣いは無用です。
とはいえ周囲の人たちと全くコミュニケーションをしないわけにはいきません。
なかには苦手なタイプの人がいるかもしれませんが、会話する際は相手のプライバシーにあまり踏み込まないほうがいいでしょう。
他の人の容体が気になってしまう
入院していた患者さんが回復して退院していく一方で元気そうだった人が弱っていくように見える……。
病気なのだから仕方ない、といわれてしまえばそれまでですが、やはり毎日顔を合わせているので他の入院患者さんが気になるのは無理からぬ話です。
散歩に出る、違う場所で過ごしてみるなど気分転換をしましょう。
ゆっくり眠れないことがある
他の患者さんのナースコール、咳や歯ぎしり、イビキ、トイレへ行く音などに起こされてしまう。
こればかりはお互い様です。
気になる場合は耳栓を使用しましょう。
がんと診断されたとき受け取れるお金
これは、あらかじめ医療保険に加入しておく必要がありますが、初めてがん(悪性新生物)・上皮内新生物と診断確定された場合、診断給付金が支払われるものがあります。
保険証券を準備して保険会社に連絡してください。
後日、診断給付金の請求に必要な書類や用紙が郵送されます。
この診断給付金は、がんと診断されたときに支払われるため、特に当座のお金があったほうが良い場合はなるべく早めに請求しましょう。
(ただし、診断書は一通ごとに診断書代がかかりますので、急いでいないのであれば手術後にまとめて一通で出してもらう方法もあります)
請求手続きを済ませると保険会社へ請求書が着いてから約1週間程度で、指定した銀行口座に診断給付金が振り込まれます。
診断給付金は入院や治療を目的としたものではないため、自由に使用することができます。
病院に通うためのタクシー代や治療費に充てるばかりでなく生活費にまわしても構いません。
これまではがんは治らない、怖い病気というイメージがありましたが、手術後も以前と変わらぬ日常生活を送っている乳がんサバイバーの方がたくさんいらっしゃいます。
家事や仕事はもちろん趣味を楽しむ、新しいことにチャレンジするなど、皆さんイキイキと輝いています。
「乳がんを克服できたことが自信につながった」
「乳がんになったからこそ知り合えた人たちがいる」
乳がんの手術・治療というと困難、忍耐というイメージがありますが、これからの時代は“チャレンジ、新しい発見”かもしれません。