用語集

乳がん治療用語集:抗がん剤などの薬物療法と放射線治療について

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薬物療法

抗がん剤治療

乳がん治療のうち薬物療法とは?

非浸潤がんのように、乳がんが乳管内にとどまっている場合は,ほとんどが手術や放射線療法などの局所治療だけで治癒します。
しかし、浸潤がんの場合、発見された時点で、がん細胞が血液やリンパの流れにのって他の臓器に転移している可能性があるのです。
これを、乳がんの「微小転移」といいます。抗がん剤は、このような微小転移のがん細胞を叩くために行います。

ただ、抗がん剤は全身の正常細胞にも影響を与えるため、吐き気や脱毛、白血球減少などの副作用を起こす可能性があります。
副作用は個人差があり、薬剤によっても違います。そのため、抗がん剤治療は、目的と副作用のバランスを考慮しながら行われます。

抗がん剤治療は

  • 術前化学療法
  • 術後化学療法
  • 遠隔転移に対する化学療法

の3つのケースで行われます。

術前化学療法

手術の前に、抗がん剤による治療を先行して行う治療法です。
80%以上の人が、しこりやリンパ節転移が小さくなっていくのを実感でき、治療効果を確認しやすい治療です。
また、がん細胞が病理学的に完全に消失してしまう人も10%ほどいます。このため、乳房温存率を高めることが期待できます。
単にしこりを小さくするだけでなく、リンパ節や全身に転移している可能性のあるがん細胞を死滅させ、予後の改善をはかることが期待できます。

術後化学療法

手術後、どこかに潜んでいる可能性のある微小転移を根絶させるために行います。
他の臓器に転移したり、再発したりすると、残念ながらがん細胞の完全な根絶は困難と考えられます。
こういった場合に、抗がん剤で進行を抑えて延命効果を得たり、症状を和らげたりします。

遠隔転移に対する化学療法

がん細胞が、元あった場所から血管やリンパ管を介して遠隔臓器に運ばれ、そこで新しい病巣をつくることを「遠隔転移」といいます。
遠隔転移が認められた場合は、目に見えないがん細胞が他にも潜んでいる可能性があるため、全身への効果が期待できる薬物療法を行うのが基本です。通常、手術は行いません。

遠隔転移のある乳がんでは、がんを完全に治すことはできないため、がんの進行を抑えたり症状を和らげたりしてQOL(生活の質)を保ちながら、がんと上手に付き合いながら長く生きることを目標として、薬物療法を行います。

ホルモン療法

乳がんには、女性ホルモンの影響によって、がん細胞の増殖が活発になる性質のものがあります。
ホルモン療法は、体内の女性ホルモン(エストロゲン)の働きを妨げたり、つくられないようにしたりして、がん細胞の増殖を抑える治療法です。

エストロゲンは、閉経の前と後とではつくられる部位やメカニズムが異なります。
閉経前、エストロゲンは卵巣でつくられていますが、閉経後は副腎皮質から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンが、アロマターゼという酵素の働きでエストロゲンにつくりかえられるようになります。
そのため、閉経前の患者さんと閉経後の患者さんとでは、使用するホルモン療法剤が異なります。
閉経前の場合は、抗エストロゲン剤を使います。一方、閉経後の場合はアロマターゼの働きを妨げるアロマターゼ阻害薬を用います。

なお「閉経」の確認は、以下の項目が参考となります。

  • 60歳以上である
  • 45歳以上で、過去1年以上月経がない
  • 両側の卵巣を摘出している
  • 血液中のエストロゲンや卵胞刺激ホルモン濃度

分子標的治療

「分子標的治療」とは、その名の通り、がん細胞のもつ特徴的な物質のみを「狙い撃ち」する治療法です。
乳がんではトラスツズマブ(ハーセプチン)という治療薬が代表的です。
一般的に、抗がん剤は正常な細胞まで傷つけてしまいますが、分子標的治療では、がん細胞のみを効果的に攻撃することができるのです。

がん細胞は正常な細胞と異なり、際限なく増殖を続けていきます。
この仕組みの研究が進むにつれ、増殖するのに必要な物質がいくつか特定されてきたため、このような治療が可能になりました。

トラスツズマブは点滴薬として投与。副作用は比較的少なくてすみます。乳がん治療で多く用いられるトラスツズマブは、点滴薬として投与されます。
術後の再発予防を目的とする場合は3週間に1回、1年間の投与を行います。

気になる副作用ですが、抗がん剤ほどではないものの、分子標的治療薬でも出ることがあります。
トラスツズマブの場合は、初回の投与を開始した直後に、発熱や頭痛、咳、めまい、吐き気などの一過性の症状がみられることがあります。

この治療を初めて受ける人の40%ほどが副作用を訴えますが、重篤な症状になることはほとんどありません。また、次回以降に起こることも稀です。
分子標的治療は、抗がん剤と比べると、副作用が軽く済み、かつ大きな効果が得られる、とても有用な治療法です。
ただし、すべてのタイプの乳がんに効果があるわけではなく、それらの標的薬が効果があるかどうかは、乳がんの組織の病理検査を行うことなどによって判断します。

放射線治療

放射線治療は、細胞の中の遺伝子に作用してがん細胞を死滅させる治療法です。

放射線は、人間の身体を通過することができます。
身体の中の細胞を通過するとき、細胞が増殖するために必要な情報が書いてある部分(遺伝子)にダメージを与えます。すると、細胞は増殖することができなくなって死滅するというわけです。

放射線治療放射線は、がん細胞だけでなく、正常な細胞も通過します。しかし、がん細胞は正常な細胞よりも放射線によるダメージを受けやすく、また、正常細胞はダメージを受けにくいことに加え、ダメージを受けても回復しやすいという特徴があります。
そのため、放射線治療はがん組織を効率よく攻撃することができるのです。ただし、原則として過去に治療したところに再び照射することはできません。

多くの場合、副作用は軽度です。頭に照射しない限りは髪も抜けませんし、吐き気などもありません。
照射した後、そのまま会社に行って仕事ができるほどなので、外来での治療が可能です。
ただし、皮膚には影響が出ることがあります。治療中、2週間くらいすると、日焼けのような状態になってきます。
これは、紫外線による日焼けと基本的には同じものです。
普段から日焼けに弱い人は、放射線科医に軟膏を処方してもらうとよいでしょう。

放射線治療最新機器

サイバーナイフ

サイバーナイフ

サイバーナイフは、最先端の画像解析技術・産業ロボット技術を応用した高精度の定位放射線治療装置です。

体にメスを入れることなく、がんなどの病巣だけを多方面から狙って放射線を集中的に照射します。
最大で1200方向から照射ビームを選択することが可能で、これまでは不可能だった頭蓋底、脊髄、体幹部をはじめ広範な部位に発生した腫瘍に幅広く対応することができます。

もし治療中に患者さんが動いてしまっても、標的の移動が1cm以内であれば自動的に照射点を補正したり、それ以上の場合は照射を中断するなどの安全対策がなされています。

トモセラピー

トモセラピー

トモセラピーは、CT(コンピュータ断層撮影装置)とリニアック(放射線治療装置)を一体化させた装置です。
正確に病巣部の照射部位と形をとらえ、ピンポイントで放射線を集中照射する放射線治療システムです。
放射線照射装置が体の周りをらせん状に回転し、コンピューター制御寝台が前後に移動するので、周囲360度、前後51カ所の方向からの照射ができます。

この装置は、IMRT(強度変調放射線治療)と呼ばれる最新の照射方法により、がんの形、部位などに合わせて照射量や強度を変化させることができます。
そのため、複雑な病巣や、複数の腫瘍に一度で対応でき、腫瘍以外の正常な組織に与えるダメージを大きく減らせるというメリットがあります。

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