女性の大敵である乳がん、現在では女性の11人に1人は乳がんになると言われており、女性のがんの第1位です。
近年、多くの著名人が乳がんであることを公表してから、乳がんを身近に感じている人も多いようです。
「もしかして自分も乳がんかも?」と思って、乳房のセルフチェックをして、乳がん検診や乳腺科を訪れる人は増えてきました。
がん検診や乳腺科の診察で胸の症状を調べてもらって「乳腺症」と伝えられた人も多いのではないでしょうか。
乳腺症って、乳がんではないけれど、どんな病気なのでしょう?
乳がんと乳腺症の見分け方や検査方法についてご説明します。
乳がんと乳腺症
乳がんと乳腺症、どちらにも現れる症状として代表的なものは、乳房のしこりの自覚症状があります。
しこりが良性か悪性なのかは、自己診断はできません。
乳腺科で検査をして鑑別する必要があります。
乳腺症の検査ってどんな検査をするの?
乳腺症の検査は、基本的には乳がん検診の流れで検査を進めていきます。
- 問診
- 視診
- 触診
- 画像診断
- 細胞診・組織診
問診
まずは乳腺科がある病院に行くと、問診票を渡されることが多いです。
生理の状況や、出産・授乳経験の有無、家族にがんにかかった人がいるかどうかなどの質問に答えます。
しこりの症状については、しこりの大きさに変化はあるのか、痛みを伴っているのかどうかなどを聞かれます。
視診
乳房を観察し、乳房に変形がないかどうか、乳頭にただれがないかどうかなどをチェックします。
触診
乳房やリンパ節など触って診察します。首や脇の下のリンパ節が腫れていないかどうかなどもチェックします。
しこりの場所や硬さ、しこりの境目ははっきりしているのか、しこりは動くかどうかなども触診にて検査します。
画像診断
しこりの状態や乳房の状態、乳腺の状態などを調べるために、画像診断をします。
マンモグラフィ
マンモグラフィは、乳房のX線撮影の検査機器です。
より診断しやすい写真を撮るために、乳房をできるだけ引き出して、圧迫板という薄い板で乳房を挟み押し広げて撮影します。
マンモグラフィ撮影時は、乳房を圧迫するため痛みを伴うこともあります。
しかし、圧迫して押し広げることにより、診断しやすい写真を撮影することができます。
また、乳房を圧迫することによって、マンモグラフィ撮影による被曝量も軽減できます。
マンモグラフィ撮影による放射線の被曝量は、自然界の放射線レベルと同じくらいの低さで、心配ないレベルです。
超音波検査(エコー検査)
エコー検査とは、乳房に検査のための超音波を当てて、超音波の反射波を利用して画像を作る検査です。
通常の診断用の超音波では人体に害はありません。
エコー検査は、妊婦さんが胎児の様子を見るのに使う検査機器でもあり、安全性が高いことも特徴です。
特に40歳未満の女性に多く見られる乳腺の密度が濃い状態では、しこりの有無がはっきりと見えづらいこともありますが、エコー検査では乳房内のしこりの有無の診断をすることができます。
しこりの形や境目部分の状態を観察して、しこりが良性なのか悪性なのかを判断することも可能です。
マンモグラフィやエコー検査の画像診断により、しこりの境目がはっきりしていれば良性腫瘍であることが多く、境目が不明瞭である場合は悪性腫瘍を疑います。
また、乳房の一部にカルシウムが沈着して起こる石灰化の症状があります。石灰化が乳房全体にばらばらになって見える場合は良性であることが多いですが、小さな石灰化が1カ所にたくさん集まっている場合は悪性を疑います。
MRI
その他の画像診断として、乳がんであると判明した場合、造影剤を用いてがんの広がり方を確認するためにMRI検査を行う場合があります。
また病変の診断が難しい場合にも、MRI検査が行われることがあります。
トモシンセシス
最新の乳がん検査機器であるトモシンセシスは、マンモグラフィの仲間であり、乳房全体を数十枚の薄い断層像として描出することができます。
トモシンセシスで乳房の検査をすることにより、マンモグラフィが乳腺の重なりでしこりを見落とすという問題をある程度解決出来ます。
特定できなければ細胞診・組織診などの検査へ
画像診断で良性か悪性かの判断がつかない病変や、乳がんを疑った場合には、細胞診や、組織診などの検査を行います。
細胞診も組織診も、マンモグラフィやエコー検査の画像診断で病変を捉えていることができれば、画像を見ながら正確に検査を行うことが可能です。
細胞診
細胞診とは、乳房に細い針を刺して細胞を採取して検査することです。
細胞をとって染色し、顕微鏡で観察して検査します。
針が細いので麻酔は不要です。
細胞診は体への負担が少なく検査をすることができますが、診断を確定するのが難しいことがあります。
細胞診を受けても、最終的には組織診を受けることがあります。
組織診(針生検)
組織診とは、乳房に局所麻酔をして、やや太い針をさして細胞を採取して検査することです。組織をとって染色し、顕微鏡で観察して検査します。
マンモグラフィ検査で石灰化の所見だけがわかったけれども、触ってもしこりがわからず、エコー検査でも病変の部位がはっきりしない場合などは、マンモグラフィを撮影しながら行う組織診(ステレオガイド下組織生検)で診断することが有効です。
針を刺した部分に、血の塊である血腫ができることがあります。
体の負担は、細胞診と比べるとやや多いですが、入院の必要はありません。
細胞診に比べて、より正確な診断をすることができます。
乳腺症か乳がんかは、しっかり検査を受けて判断
乳腺症は、乳がんと間違いやすい症状がいくつかあります。自分で判断することは不可能なので、気になる症状が現れた時は乳腺科でしっかり検査を受けましょう。
乳がん検査を受けることは、乳がんの早期発見・早期治療に繋がります。
乳がんは早期発見により完治を目指せる病気なのです。
画像検査や細胞診、組織診を受けて良性の病気とわかれば、乳がんではなく乳腺症の症状に当てはまるでしょう。
「胸が痛いけれど、乳がんなのかな・・・」
と不安で過ごすよりも、自分の未来や家族のためにきちんと検査を受けて、今の自分の体の状態を知っておきましょう。