乳がんの基

発見しやすい乳がん・発見しにくい乳がん その違いは?

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乳がんは早期のステージで発見し、適切な治療を受けることにより、高い確率で命を守ることができます。

しかし、乳がんにはさまざまなタイプがあり、見つかりやすい場所にある乳がんもあれば、見つかりにくい場所にある乳がんもあります。
また、見つけやすいタイプもあれば、見つけにくいタイプもあります。
そのため、定期的に乳がん検診を受診していても、発見されたときには残念ながら早期のステージではなかったというケースもあるのです。

2015年5月にタレントの北斗晶さんが乳がんになったことを告白しましたが、北斗さんは毎年マンモグラフィとエコーの乳がん検診を受診していたにもかかわらず、リンパ節転移のある進行乳がんとして発見されました。
北斗さんの場合は、乳首の真下にがんがあったのですが、ここに発生するがんは、マンモグラフィやエコーでも見つけにくいことが多いのです。

また、そもそもしこりをつくらないタイプの乳がんや、乳房の中にはがんが見つからないのに、ワキのリンパ節に転移を起こして腫れてくることで見つかるタイプの乳がん、乳房全体が腫れたようになってしこりとして写らないタイプの乳がんもあります。

定期的に検診を受けていても、襲ってくるのが乳がんです。“見つけにくい”タイプの乳がんがあるといっても、検診を受けないという選択肢はありません。定期的に乳がん検診を受診しましょう。

乳がん 発見

画像からではがんを見つけにくい乳腺のタイプ「高濃度乳腺(デンスプレスト)」

乳がん検査には主に乳房専用のレントゲン装置マンモグラフィ、しこりを映像で映し出すエコー(超音波)があります。
どれも乳がんの発見に大いに役立っていますが、すべてが万能というわけではありません。
アジア人の乳房に多く見られるデンスブレスト(dense breast)。
これは乳腺濃度が高い乳房のことで、マンモグラフィ検査では乳腺の白色と、がんの白色の区別が付きにくく、しこりを見つけにくいことがあります。

2016年6月、読売新聞が主要な自治体にアンケート調査を行ったところ、約7割の自治体で、デンスブレストなどの理由により、マンモグラフィでは異常の有無の判断が困難であった場合でも受診者にその旨を伝えておらず、検診結果に“異常なし”とだけ記載していることがわかりました。

乳がん 高濃度乳腺 デンスブレスト エコー

乳腺濃度は脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度の4つに分類されますが、不均一高濃度と高濃度がデンスブレストです。

デンスブレストは、マンモグラフィでの画像分析がしにくいため、エコー検査を併用した検診をおすすめすしたり、乳房の大きさや総合的に診てその方にあった検診項目をおすすめしたりします。

マンモグラフィ検査だけを受けて安心していたら早期発見のチャンスを逃すことになりかねません。

ただし、石灰化などの病変はエコー検査で見つけることが難しいため、デンスブレストであってもマンモグラフィをしなくていい、ということではありません。

米国の24州では、マンモグラフィを受けた女性がデンスブレストであった場合、医師から告知することが義務付けられています。
マンモグラフィを受診した場合は、自分の乳腺のタイプを医師に聞いてみましょう。

検診と検診の間に出てくる「中間期乳がん」

中間期乳がんとは、検診と検診の間に発見される乳がんです。検診の際、医師による触診と各種機器を用いた検査と画像診断を行いますが、どんなに注意して診ても見えないケースがあります。
北斗晶さんはきちんと毎年乳がん検診を受診していたのにもかかわらず、ご自身で異変を感じて病院へ行きがんと診断されましたので、中間期乳がんでした。

見落としではないか?とのご意見があることが報道でも紹介されていましたが、これは見落としではなく、検診の限界なのです。
中間期乳癌として発見されるものは、増大のスピードが速いものや、画像で見えにくいものであったなどの可能性があります。

つまり、中間期乳がんとして見つかるがんには、エコーやマンモグラフィに写りにくいタイプのがんや、トリプルネガティブ乳がん(後述)など、悪性度の高い乳がんが多く含まれます。

トリプルネガティブ乳がん

エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体という2種類の女性ホルモンとHER2(human epidermal growth factor receptor type2=ヒト上皮細胞増殖因子の受容体と類似の構造を持つがん遺伝子)の3つ(トリプル)が反応性なし(ネガティブ)を示す乳がんのことをいいます。

乳がん トリプルネイティブ乳がん 抗がん剤トリプルネガティブはホルモン治療もハーセプチン(がんの細胞表面のHER2と呼ばれるたんぱく質だけに作用して、がん細胞の増殖を阻害する薬)による治療も効かない、抗がん剤しか効果が期待できない乳がんです。

このようにいわれるとトリプルネガティブ乳がんは、とても厄介で性格の悪いがんという印象を持たれがちですが、実際はホルモン療法とハーセプチンが効くタイプを除いた雑多なくくりです。

このくくりには、どんな抗がん剤も効かない悪性度の高い乳がんも含まれますが、逆に言うと、抗がん剤治療が大変有効である乳がんも含まれます。

もしトリプルネガティブと診断されても、入口だけで判断しないでください。今後は更に研究が進み、細かく分類されていくかもしれません。

乳がん検診を受けよう

現在、日本の女性の6割は検診を受けていません。

「乳がんと診断されたら怖い」
「忙しくて行く時間がない」
「(マンモグラフィは痛いといわれているなど)検診内容に不安がある」
「症状が無いから大丈夫」

さまざまな理由が挙げられますが、自覚症状が出てから「こんなことならもっと早く検診を受けていればよかった」と後悔している人が少なくありません。
検診は自覚症状がないうちに見つけるためのものです。

「乳がんと診断されたら怖い」

誰もが不安で、できることなら検診へ行きたくないと思うのは無理からぬ話です。
しかし、先に述べたように“もっと早く受けていれば….”という状況に見舞われるほうが何倍も大変です。
検診を受けて「異常なし」という結果が出たなら乳がんかもしれない、という不安につきまとわれることがなくなります。
1人では勇気が出ない、という人は姉妹や友達と一緒に受診するという方法も。
ぜひ、乳がん検診を習慣にしてください。

「忙しくて行く時間がない」

育児や仕事で検診へ行く時間がなかなかつくれない、という話をよく耳にします。
しかし乳がんが進行してしまったら、それだけ治療にかかる時間が増え、身体的経済的負担も大きくなります。
早い時期から「〇月△日は乳がん検診へ行く」と周囲に伝えて協力してもらうようにしましょう。

「(マンモグラフィは痛いといわれているなど)検診内容に不安がある」

より正確な画像解析のために、やむをえず胸をギュッとつぶすような形になってしまうのですが、どうしても我慢できないという人は痛みの少ない3Dマンモグラフィやエコーでの検査もあります。

「症状が無いから大丈夫」

検診は自覚症状のない人が受けるものです。
自覚症状がある場合は検診ではなく病院(乳腺科)を受診しましょう。

乳がん 検診 診察

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