乳房の痛みやしこりを感じて乳腺科を訪れる人の中には、「乳腺症です」と言われたことがある人もいるのではないでしょうか?
乳がんと間違えやすいものの一つに、「乳腺症」があります。
乳腺症の大部分は、乳がんとは関係がない良性の病変です。
しかし、乳房の痛みやしこりがあるため、不安に思う人も多いようですね。
そこで、乳がんと乳腺症の違いはどんな点でしょう?
また乳腺症とはどんな症状なのでしょうか?
乳腺症ってどんな症状?
乳腺症は、30~40代の女性に多く見られる乳腺の変化です。
主な症状としては、乳房が固くなる、しこり、痛み、乳頭から分泌液が出るなど。
これらの症状は、良性であることが多いです。
なぜ乳腺症の症状が起きる?
乳腺症の症状は、卵巣から分泌される女性ホルモンが影響している、と言われています。
女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの変動と関わっており、閉経後は卵巣機能が低下するので、乳腺症の症状もだんだんなくなってきます。
乳腺症のしこりの変化
乳腺症によるしこりには、以下のような特徴があります。
乳腺症のしこりの特徴
- 片方または両方の乳房に現れる
- 大きさが不揃い
- 生理前に大きくなることがある
- 生理が終盤になると、しこりもだんだん小さくなる
- しこりに痛みがある
- しこりを押すと強い痛みを感じる
乳腺症のしこりや痛みは、生理の周期と連動するものであればあまり心配する必要はありません。
しかし、生理の周期に関係のないしこりに気づいた場合は、専門の乳腺科で診察を受けましょう。
乳腺症による乳頭分泌液の症状
乳腺症に伴い、乳頭から異常な分泌液が出ることがあります。
乳頭分泌液の症状
- さらっとした水のような漿液性タイプの液体が出る
- 乳汁のような濁った液体が出る
- 血液が混じったような液体が出る
乳頭から、血液が混じったような分泌物が出た場合、乳管過形成や乳頭腫などの乳腺良性疾患であることが多いのですが、乳がんが隠れている可能性もあります。
乳頭から血液が混じった分泌液が出た場合は、乳腺科で詳細な検査を受けましょう。
乳腺症と乳がんの違い
医療機関の検査にて乳腺症と診断された時、基本的には女性ホルモンの影響で症状が出ているので、多くの場合は治療の必要がなく経過観察となります。
あまりにも痛みがひどい場合は、痛み止めなどの薬物治療が行われます。
しかし、乳がんと診断された場合は、すぐに乳がんの治療を始めなければいけません。
また、乳腺症のしこりは痛みを伴うことや、周期的に痛みが来ることがありますが、乳がんのしこりはほぼ痛みを伴わないことが多いです。
ただし「痛みがあるから乳がんではない」ということでもありませんので、乳房に痛みを感じたらすぐに専門の乳腺科を受診しましょう。
乳腺症の検査とは?
乳房に異変を感じて病院へ行くと、まず問診があり、視触診、マンモグラフィ、超音波検査(エコー)が行われます。
その後必要であれば、MRI検査、細胞診、組織診が行われます。
視触診
視触診は、乳房を観察して、乳房やリンパ節の状態を触って調べます。
乳房の変形はないかどうか、乳頭に湿疹や分泌物がないかどうかを診察します。
触診の際に、乳房にしこりがないか、首や脇の下のリンパ節が腫れていないかどうかなども調べます。
しこりがある場合は、しこりの境目がはっきりしているかどうか、しこりが動くかどうかもチェックしています。
乳がんの場合、しこりは固く、境目がはっきりしないことが多いです。
マンモグラフィ
マンモグラフィとは、乳房のX線撮影検査です。
より正確な写真を撮るために、乳房を引き出して圧迫板という薄い板で乳房を挟んで、押し広げた状態にして撮影します。
その際、圧迫による痛みを伴うこともありますが、押し広げた状態にすることで、より診断しやすい写真を撮影することができるのです。
マンモグラフィでは、乳房に腫瘤があるかどうか、石灰化した塊があるかどうかなどをチェックしていきます。
超音波検査(エコー)
乳房に超音波を当てその反射波を利用して画像を作って診断します。
診断用の超音波では人体に害はなく、安心して使用することができます。
妊婦さんが胎児の状態をみる際にも使われる検査機器なので、安心して使うことができます。
また、超音波検査は、乳房内にしこりがあるかどうかの診断をするのに適しています。
特に40歳未満の女性の場合、乳腺が重なり合い密度が濃い状態であることがあります。
乳腺が重なり合った部分は、マンモグラフィでみると白い部分が多くなってしまい、しこりがあるかどうかがわかりにくくなる場合もあります。
しかし、超音波検査では、マンモグラフィで死角になりそうな場所も見やすく、診断することができるのです。
さらに、しこりの形状や、しこりとその周辺の境目部分の性状などを見て、しこりが良性なのか悪性なのかを判断します。
乳がん検査においては、マンモグラフィとエコー検査、どちらかでしか発見できない乳がんもあります。
そのため、精密検査をする場合は、マンモグラフィとエコー検査、両方の検査を行う医療機関が多いようです。
MRI検査
さらに詳しく画像検査をする場合は、MRI検査を行います。
MRI検査では、造影剤という検査用の薬を用いて検査を行います。
乳がんであると判明した場合に、乳がんの広がりを確認するためにMRI検査を行うことが多いのですが、病変の診断が難しい場合、乳がんか乳がんではない別の症状なのかを判断するために実施する場合もあります。
細胞診、組織診
画像検査の後、細胞診、組織診をする場合があります。
細胞診
画像診断で良性か悪性かの区別がつかない病変の場合や、がんの疑いがある場合、乳房に細い針を刺して細胞を採取することです。
組織診
局所麻酔を施し、やや太い針を刺して行う検査(針生検)のことです。
細胞診も組織診も、マンモグラフィやエコー検査で病変を確認できていれば、画像を見ながら正確に細胞診や組織診を行うので、安心して検査を受けることができます。
しこりが見つかったらきちんと検査を!
乳房のしこりが見つかった場合、乳腺症なのか、乳腺の良性腫瘍なのか、悪性の乳がんなのかはきちんと検査する必要があります。
乳がんと一部の良性腫瘍以外は、治療はせずに経過観察で済む場合も多くあります。
乳房にしこりや痛みがあって不安な状態で過ごすよりも、きちんと検査をして今の自分の状態を知ることが大切です。